わかりたくもない
「ミイラ? それにこの身長は」
「子供、ここの生徒よりも幼い、小学生くらい。死因は…あまり考えたくないな」
「えっと、つまりその子の怨念が学園の惨事を引き起こしたってことですか」
「違う」
そうだったらわかりやすすぎる。
「…よく考えたら、おかしいですよね。なんでこの子は学園の屋上なんかにいたんですか? 外から入れるような場所じゃないです」
裏内宇羅。先刻の教室内での杭打ちとの戦いにあってさえ、どこか超然としていた彼女。
彼女はこの時、怯えていた。
「そうです、ありえないです。大体なんですかこれ! 廃墟でもないのに、誰にも気付かれないなんておかしいです」
まるで縋るように
庚游理、自らの心臓の言葉を否定する幽霊屋敷。
「数百の人間が生活してて、点検だってあるだろうし、それにそもそも貯水槽の中で溺死体でも泣くこともあろうにミイラ化なんて」
「そう仕向けたんだろ」
ミイラの中心。胴体に深々と刺さった杭を指さしながらそういった。
杭。
刺した者から水分を奪う杭。
普通の学校には決して存在するはずのない呪具。呪う道具
幽霊屋敷が武器にできるのは、自分の中にあるものだけ。
「水を飲んで飲んでも体内に水が入らない状態にする。その過程が大事で、ミイラ化は副産物」
私は語る。なるべく感情を押し殺して。
「後は人払い。水道の水から変なにおいがする、なんてことがあっても違和感を感じさせないようにする」
他にも色々と必要な手順はあるだろうが、
必要なことをすればできるということだ。
「簡単でしょう。祟りなんて不条理と不可解を引き起こして、人工的に幽霊屋敷を生む方法としては」
狗神
犬を首だけ出して生き埋めにして放置、飢え死にさせる。
肝心なのはその目前に食料を置いておくことだそうだ。
目の前にある食べ物を見ながら飢えていく犬、
死の間際斬り落とされた首は、飛んで食料に喰らいつくという。
「狗神」化外を生み、用いる呪術。
乾森学園。
いぬいもり。
《《犬の意の杜》》。
初めからこの目的で作られたとしたら・・・
「数百の生きた人間が生きているのに、それよりも幼い自分がこんなところでゆっくり死んでいく」
そんな理不尽な目に遭ったら
「怨むでしょ」
その言葉を合図にしたように
屍が咆哮した。
「アァァァー!」
絶叫。
それに共鳴するように校舎が、幽霊屋敷が揺れる、蠢く。
さっきの杭打ちなど比較にならないほどの悪意、憎悪、怨み。
これが心臓。
これが幽霊屋敷「乾森学園」の根幹。
「誰が、何のためにこんなことをしたんですか」
「わからない」
学園の設立者とかが関わってるのがよくあるパターンだけど、怨霊にはそんな区別は意味がないから。
何より乾森学園は存在自体が消されている。
まして、その動機なんて。
「わかりたくもない」




