悪意
3年3組は3階建て校舎の最上階に位置する教室である。
だからその上には何もない。
あるのは。
「貯水槽、ですか」
「とりあえず怪しいのはそこね」
屋上に出て、校舎の全景がようやく見ることができた。
学園の外には普通の街並みが広がってる。まあ背景映像みたいなもんらしいけど。
「さっきの教室。天井から水が漏れてた」
「水? 血じゃなくて、ですか」
「最初の教室も廊下も、床や壁は血で染まってたけど、天井はきれいだった。だからなんとなくあの教室もそうなのかなと」
なんとなく。
たまたま厄を引き当てる。
そんな体質。
―触れるだけで大ごとになるー
「それに倒れた時、服に血が着いたの。つまり床の血が乾いてなかったってこと」
まあ、こんな大量の血糊がしたたり落ちる水程度で溶けるのか、とかツッコミどころは多々あるけど。
「祟りは何かを伝えるもの、なんでしょ」
だったら
「3年3組の真上にある貯水槽なんていかにも、な代物がある。そこにこそ、この幽霊屋敷の心臓があるって考えるべきでしょう」
「えっと、その決めゼリフっぽい空気の所、恐縮ですが、我が心臓」
「何。ちょっと待ってって。えっと貯水槽には梯子かなんかないの?」
「あんな修羅場でそんなことを考える余裕があったんですか」
「なかったよ」
「なかったですか」
「正直に言うと今の説明は後付け」
お、梯子あった、いや「中」を見るのって、蓋を開けるんだよな。
・・・鍵がかかってたらどうしよう。
「ただ、私がこうして関わったのなら、333名を喰らった悪意」
鍵はかかってなかった。
それどころか、まるで内側から押し上げられたように
アッサリと蓋が開いた。
「程度で終わらないっていうことははっきりしていたから、ここにたどり着けた」
「そうでしょう、乾森学園の心臓さん」
そこには
悪意の塊があった。




