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閑話:とある王后殿下の軌跡

……わたし、アイリーンは【要らない子】。だった。

“出来損ないの穀潰し”。

お母さんが亡くなった5歳の時、継母達が来てから、ずっと、ずっと、そう言われてきた。

わたしの生まれた…と、思うこの家、アルカディア王国の高位貴族の1つ、ラミネス侯爵家。

わたしはこの家で使用人の様に扱われていた。


わたしのお母さんは侯爵様の前妻だった、はず。

2人は政略結婚で、お互いに愛は無かった、んだとおもう。

侯爵様は婿入りした人、それは確か。

だからお母さんがラミネス侯爵家の正当な血筋のはず、だった。

だけど、お母さんが亡くなってからの侯爵様は直ぐに愛人だった、お母さんの義妹である継母を呼び寄せた。

その継母には既に娘が居た。

その連れ子である義妹を、侯爵様は我が子として可愛がり、前妻の娘であったわたしは、あっという間に使用人に落ちていった。


それでも、周りの人達は優しくしてくれた。

同僚となったわたしを、可愛がってくれた。

だから、いけなかったのかな?

ある日、使用人は全て入れ替わった。


それからのわたしは、新しい使用人達からもゴミの様に扱われた。

義妹からもバカにされ、蔑まれ、義姉であるお母さんが大嫌いだったらしい継母からは事ある毎に鞭で打たれ、本当は継母と結婚したかった侯爵様からも邪魔者扱いされ…………


それでも、それでも、ローナだけは、ずっとわたしのそばにいてくれた。


彼女は、かつてわたしが見つけて、保護して、お母さんが付けてくれた専属メイドの狐獣人の女の子。

隠密活動が得意だったローナは、継母や義妹、侯爵様にすら存在が知られていない。

だから唯一残ったわたしの大切な味方。


そんなある日、義妹に聖女の力が発現したと知らせが入った。

教えてくれたのは、もちろんローナ。

私よりも幼いはずのローナは、何故かわたしよりも物知りで、色々と教えてくれた。

お后教育?と言うのはよく分からなかったけれど、勉強は嫌いじゃなかったから苦しくても楽しかった。

そしてローナは口癖の様に言っていた。


『…何時か、アイリーンお嬢様には王子様が現れます。その時まで耐えるのです。ローナがお守りしますから、どうか、どうか、最後まで希望を失わないで下さい。』















ーわたしは耐えました、

気高く、誇りを失わなず、腐らず、努力を続けました。

唯一の味方、ローナを信じて、ローナの支えで、居るかどうかも分からない『王子様』に縋って。

そんなある日、そこに男の子も加わる様になりました。


ローナが言うには彼は王子様では無いそうでしたが。

………それが、今はわたしの大切な弟である、リトでした。

後で知ったのですが彼は継母の妹の子、わたしからは遠い血筋の甥だったそうです。

だから、では無いでしょうか。

彼はラミネス侯爵家とは関係の無い孤児でした。


そんなリトとは、体裁ていさいの為にわたしが孤児院への慰問を任されていた中で出逢いました。

(ただしその慰問も表向きには義妹がした事にされていましたが。

義妹本人は『あんな下々のモノがいる汚い所に行きたくない』と駄々を捏ねていました。)



「…!お嬢様、彼はきっと貴女の大切な味方となります。」


「まぁ…!ローナが言うのならそうなのでしょうね…。」


「…?お姉さん、ダレ…?」



それから、こっそりと親交を持つようになった彼にも、わたしが頻繁に会えない代わりにローナが教育を施し、やがて、わたしが14歳、彼が10歳になった時、彼は孤児院を出ていきました。

ネクロマンサーの冒険者として。


それから直ぐにリトは大活躍をし、わたしにも護衛の英霊をつけてくれるまでになりました。

わたしが聖女として目覚めたのは、その時、なんです。



『ーあら〜♡貴女も聖女なんですねぇ〜♡』


「えっ…?ジャンヌ様、あなたも、とは??」


『アイリーンちゃん♡貴女も私と同じ聖女なのですよぉ〜♡』


「えっ…?えぇーっ!?」



それから直ぐに、それを知ったリトが私こそが真の聖女だと、王家に伝えたそうです。

その頃にはリトは王族に対して謁見可能なSランク冒険者になっていました。

わたしが16歳、リトが12歳の時です。


それから、リシャルド陛下…当時はまだ王太子であったシャルに見初められ、リトの助けもあって、数ヶ月間の親交の中、あっという間にラミネス侯爵家からわたしは連れ出されたのです。



「アン、私は貴女と直接会うずっと前から貴女を知っていました。

あの侯爵家の義妹の代わりに慰問に訪れた孤児院で、楽しそうに微笑み、子供達に読み聞かせをしたり、おやつを食べて喜ぶ姿を。見ていました。」


「えっ?あぅぅ…お恥ずかしい………


(見てるこっちが恥ずかしいよ!兄さん!義姉さん!!)


「ふふっ♪そんな貴女だから私は婚約者として貴女を受け入れられたのですよ。

…だから、どうか結婚して頂けますか?

アイリーン・ラミネス嬢。」


「……………はい。お受けします、リシャルド王太子殿下…!」


「っ…!

良かった…!コレで貴女を正々堂々と我が城に連れ出せます!!

…ローナ、後は頼みます。

私は一刻も早くこんな家からアンの居るべき場所へ連れていきますから。」


「承知。任せて王子。」


「えっ、これ不敬にならないの?と言うかいきなり結婚って王族がそんな事出来るの??僕がおかしいの??

と言うか口から砂糖吐きそう…」


「…右に同じ、リト、気にしたら負け。

国王陛下は書類上で10年程前から2人を婚約者にして、結婚可能な成人である16歳になるのを待っていた。

今からは書類上の夫婦にしておいて王城へ連れ去る大義名分を確保する。

結婚式は1年後。」


「先見の目が鋭過ぎる国王陛下怖い!?」


「…実はローナの千里眼のお陰。ぶぃ。」


「ローナって何者!?」


「きぎょーひみつ。もくひ。」



………後から知ったのですが、そもそも、ローナ自体、王家の影として、ラミネス侯爵家を怪しいと思っていた先王様が遣わした者だったそうです。

そのローナが先王様へ報告し、更に聖女の素質があると告げ、先王様は影を信頼しているので秘密裏に息子の妻…未来の嫁として迎え入れる為にローナを通じてお后教育を施したのです………


そう、どうやらわたしは、ローナと出逢ったあの時から、シャルの妻となる定めだった様なのです。


シャルは、それだけでなく君自身に惚れたんだと言ってくれますし、それは疑いようがありません。

わたしは、幸せを手に入れました。

安らげる場所、頼もしい夫、可愛い弟………


わたしの幸せは、それだけでは終わりませんでした。



「は、初めまして!国王陛下様、王后殿下様…!

このたび、勇者に選定されましたレンと申します…!!」


「あらあらまぁまぁ♪そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。

口調も普段通りで大丈夫です。」


「こらこら王后、それは私のセリフだろう?」


「あらあら♪ごめんなさいね陛下♡」


「まったく…そうゆう訳だ、勇者レン。

勇者である貴殿は我等に敬語は不要。

好きに振る舞え。」


「えっと…はい。ですが最低限の礼儀は通させていただきます。」


「硬いですよレン君!」


「お、王后様…?」


「決めました!今からあなたはわたしの息子です!」


「うんちょっと落ち着こうかアン!?」


「えっ?えっ??」


「姉さん、王族としてそれはどうなの?」


「良いではないですかリト!かたいことは言いっこなしです♪」


「ははは、アンには敵わないね。」


「兄さんに1番止めて欲しかったけどね!?

ったく、勇者様。君の旅には僕、ネクロマンサーのリトが同行するから、分からない事があればどんどん頼ってね?」


「あっ……その…それじゃあリトさん、リトさんこそボクに気軽に接して欲しいな…?

仲間、なんでしょ?」


「…分かったよレン。改めてよろしく。」


「うん!色々教えてね?リトさん!」


「あらあら♪さっそく弟と打ち解けてくれてわたしは嬉しいわ♪」


「えっ!?リトさんも王族なの!?」


「親戚ってだけで基本的には平民だから緊張しなくていいよ、レン。

あとは、まぁ、姉さんもあんなだし、兄さんも気さくだからプライベートでの付き合いなら遠慮しなくていいぞ。

………姉さんは特に気にしないだろうし。」


「そうですよレン♪わたしの事は本当のお母さんだと思って下さい♡」


「…ど、努力します…?」




それから、魔界との争いが起こり、レンが旅立つまでの約1年間の修行の間に、レンは可愛い息子になってくれたのです。

天使の様なレンがわたし達の息子……



わたしは今、幸せです。

愛する夫、可愛い娘、頼りになる弟………

何より、出会ってから今だって、わたしの味方でいてくれるローナがいるのですから。



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