第9話:ネクロマンサーと妹、家族会議をする
さて、とりあえず一旦落ち着いて全員真面目モードに戻ったので宰相であるバンバルディア家現当主である【ギルバード=バンバルディア】宰相閣下始め、三大公爵家3人、そして謁見室に呼ばれたメリュ様達も交えての話になった。
……この国では有象無象の者を混じえるより少数精鋭で政治を回すスタイルなんだよね。
ただし、それぞれ三家の下に更に議会があるのだけれど。
基本的にほぼ機能していない。
つまり、そう言うこと。
三大公爵家以外は政治的に役に立たない有象無象なのさ。
残りの2人は…魔法師団長の【エリザベス
=ウルフェン】、騎士団長の【ルカ=ハーレスト】だ。
(ルカさん、相変わらずパッと見は美女だよなぁ…男性なんだけど…)
「むっ、お兄ちゃんの視線が不穏だ。」
「…心配しないで?
僕はレーネしか恋愛対象として見てないから。」
そもそもルカさんは男性な上に嫁さんも居る。
僕は男色家では無いし既婚者に興味も無い。
と言うか恋愛対象として見れるのは女体化したレーネだけだ。
レンだった時はLikeだったのがレーネになりLoveに変わっただけであり、
『好きになった相手が男だったんならボクが女の子になっちゃえば良くない?
ボクの恋愛対象はお兄ちゃんだけだし!ついでに女の子から追われなくなるし!』
と言うぶっ飛んだ発想をレーネがノリノリで提案して僕もノリノリでソレを受け入れたから成立してる至極特殊な恋人関係だからね、僕達は。
ちなみに今度は男共からモテモテになってしまう事は理解してるかな?レーネ。
してないね、うん。レーネは女性恐怖症なだけだし。
(母親と妹分は除く)
ちなみにメリュ様とリリカさんの事は平気なのは2人が魔族だから、だとか。
なお、レーネに手を出したら相手が死ぬ。
レーネを女の子にしてしまった以上、それ位の防衛措置は当然するさ。
具体的にはある英霊が自らレン専属になり僕の制御から離れたって事。
英霊が自ら主として認めるなんてかなりの異例だからそれでも良かったのに、レーネは努力と根性で適正の無い死霊術を学び、英霊召喚枠を1つ、確保したからね……
レーネ自身がその英霊の事を気に入っていたし。
本当にレーネは凄いや……
とにかく、レーネに手を出したら“ソレ”に暗殺されるよ?
常時顕現で“ソレ”は何時だってレーネのそばに居るのだから…………
『くふふっ…♪』
「………。」
まぁ、その対象には僕も含まれてるんだけどね?
『ますたぁをかなしませたらもとますたぁでもころすの。』
すぐ蘇生するけど痛いのには変わりないからホント止めてくれないかな?
あ、話が逸れた………
と言うかもう既に話し合いが始まってる。
ーと言う事があり、我々バンバルディア公爵家の大切な娘であるレイナ、ウルフェン公爵家の御子息であるユウリはレインハルト様並びにエリカ様の御助力によりラミネス侯爵家の陰謀を阻止出来ました。
王弟殿下リト様のご配慮、誠に感謝致します。」
…先日送った“楔”は役に立ったみたいだね?
ちなみに、こうゆう場には生前で慣れているらしく、レインハルトも臆せず参加している。
『ははは、まさか子孫の時代でも【ラミネス家】がやらかしてるとはね。
しかも、私達の時代ではラミネス家の爵位は男爵だった上に一族郎党処刑されたはず、何故そうなったのかな?』
「我が先祖レインハルト様、今代のラミネス家はレインハルト様の時代のラミネス家とは血の繋がりがございません。」
『…?
じゃあなんなんだい?
現代でも劇として残る程悪名高いラミネス家の名を使うバカは。しかも爵位が遥かに上の侯爵になってるなんて。
更に僕達の時代にあった事やそれが元になった劇の様にまたもやバンバルディアやウルフェンにちょっかいをかけるなんて頭の悪い事をしてるよね?
流石に亡くなった息子にはちょっかいをかけては無かった様だけど。』
「そもそもレンは僕と一緒に旅に出ていたからね。」
『…物理的に回避した訳か。』
「そうなるね。
まぁ、レンに手を出してたら僕がそのラミネス家をぶっ潰してたけど。」
『……いや、間接的とは言えキミ、手を出したよね?
私を召喚して。』
「ははは、でもやったのはレインハルトでしょ?」
『まぁ、そうだけどさ。
話が逸れたが、今代のラミネス家はなんなんだい?』
「レインハルト様、今のラミネス家はラミエス公国の貴族です。」
『…あー…もしかしなくても公国の神官一族…?
アルカディア王国で同名の家が起こした事件に不服そうだった。』
「そうです。」
『…なんでソレが我が国の侯爵家になって暴れてるのかな??』
「それは数十年前にラミエス公国の高位神官が入り込み、じわじわと爵位を上げていったからですね。」
『なるほど、しかもそんなラミネス家を廃嫡しようものならラミエス公国と戦争になりかねないから最終的に渋々侯爵家とした、と。』
あー、うん。
もしかしなくてもレインハルトは僕が状況を理解出来る様に知ってて確認したんだろうね…………
つまり神威を笠に着たクズ神官が無理やりアルカディア王国の侯爵になった、と。
そしてその娘がやらかした、と。
ラミエス公国、か。
あそこのギルドにも伝手はあるんだけど、確かにきな臭いね。
…ラミエス公国出身の英霊も1人…いや、1組居るには居るんだけど…………。
そも、僕自身半分はラミエス公国の神官一族であるラミネス家の血筋だ。
だからこそ死霊術の適性が高くてEXランク死霊術師にまでなれたのだけれど。
尤も、神官一族であるラミネス家からしたら僕はイレギュラーな存在だけどね。
アルカディア王国の王族への脅迫材料として生み出された事への意趣返しも込めて死霊術士(死霊術師の基礎職)になったけど結果的に勇者を妹に出来たし沢山の英霊達に出逢えたから本当に正解だった。
それに、今代ではラミネス家直系であり神性も高いにも関わらず虐げられ、そんな自分を愛してくれた王族大好き勢で政務も厭わない王后殿下で真なる聖女の姉さんも居る。
指図め、劇で言う所の主人公…レインハルトとエリカは今代ではレイナとユウリ、かな?
僕達は後方支援と行こうじゃないか!
『何だか楽しそうだね?』
「そりゃあね。」
当事者であるレインハルトやエリカから直接聞いた事もある、劇になる程の騒動。
その再演とも言える事象に僕が当事者として関わるのも中々に乙なモノだと思う。
そう考える僕はかなり変わっていると思うけれど、ラミネス家には僕としても因縁があるから存分に復讐してやろうと思ってるんだ。
と言うか兄さんと姉さんに被害が出てる時点で大分僕もムカついてる訳だし。
特に姉さんを虐げていたのが許せない。
『なるほど、妻とその両親の為、か。』
「当然でしょ?
レインハルトだってその為に色々やったんだし。」
『まぁね。』
レインハルトの時は当代の魔王夫妻やフェンリル帝国の当代皇帝夫妻まで巻き込んだ大騒動になったらしいからね。
その時の四天王達も味方陣営として大暴れしたとか。
そんな話をレインハルトから聞いていたから、
メリュ様を味方として認識するのが早かったんだけど。
と言うかその魔王夫妻こそがメリュ様の両親だと思う、魔族の寿命とかを考えたら。
と言うか………
「あ、そう言えば今ここに魔王様居るんだった。」
《は?》
おぉぅ………レーネ、メリュ様、リリカさん以外の全員の声が重なった………
そして一瞬の硬直の後ー
「ッ!!」
「っ!」
「流石騎士団長に魔法師団長、立ち直り早いね。」
いち早く盾を換装(武具召喚)しつつ兄さん達の側へ一瞬で移動したルカさんは兄さん達を護る様に盾を構え、
エリザベスさんは打ち合わせをしていたのかその場に居た全員に防御魔法を無詠唱でかける。
見事な連携だね!流石王国の盾!!
そんなルカさんの後ろから兄さんの声が飛んでくる。
「どうゆう事だリト!?いや……まさか偽者かっ!?」
「いや、僕は本者だよ兄さん。」
「だが今!魔王が居るなどと…!」
「うん、そこに居る魔法少女っぽい子が魔王のメリュ様。
隣の女騎士さんは護衛のリリカさん」
僕がそう紹介すると呆れ顔を向けてくるメリュ様とリリカさん。
「……リト殿。もう少し穏便に紹介は出来なかったのかぇ?」
「事前に国王陛下へ話を通しておいて下さいよリト様!?」
「うーん…?
手紙には救難を求めて新しい魔王様が城に来る旨を書いたはずだけど、ローナ?」
「…んっ。国王陛下には伝えた。」
「…だ、そうだけど兄さん?」
「…………あ。そうだった。」
ズコーッ!!
兄さんの気の抜けた様な返事にずっこけるルカさんとエリザベスさん。
わぁ、見事なこけっぷり。
と言うかルカさん、玉座の前が階段だからずっこけた拍子にそのまま階段を盾で滑り落ちてくる。ソリ滑りかな?
いや騎士団長情けないよ〜?
なまじ美人なだけに滑稽だね?
そのルカさんは何とか立ち上がり兄さんに苦言を呈す。
(見た目がすごく満身創痍)
エリザベスさんもよろよろと立ち上がり兄さんを睨み付けた。
いや、兄さんが悪いとは言え部下としてその対応……まぁ、ルカさんやエリザベスさんは兄や姉みたいなものだしなぁ……それに悪いのは兄さんだから甘んじて受け入れてね?
「…陛下、我々への報告を怠らないで下さい。」
「貴方未だに色ボケですの!?
可愛い息子…もとい娘が帰ってくるからと舞い上がってましたの!?」
「…すまない。」
「こほん!こほん!!
とにかく、わらわ達は敵ではなく親善大使としてここに来たのじゃ!
お主らと敵対するつもりは微塵も無いのじゃ!!」
「あらぁ〜♪
可愛い魔王様ねぇ〜?こっちにいらっしゃいな♪」
「ほぇ?」
「ぎゅ〜っ♪」
「のじゃぁぁっ!?」
またなんか気の抜ける様な姉さんの言葉……
と言うかメリュ様素直だね??
サラッと姉さんに捕まって抱きしめられて頬ずりされるメリュ様。
………いや姉さんあんた今王后殿下としてそこに居るんでしょ!?
なんで玉座から降りてきてんの!?
親善大使とは言え…いや、だからこそメリュ様をそんな扱いしちゃダメでしょう!?
と言うか!魔王様だから!!メリュ様は見た目は幼いけど魔王様だからね!?
「ちょっ!?や、やめるのじゃ王后殿下どの!?」
「アイリーンよ、メリュ様♪」
「えっ?あ、よしなに頼む、アイリーン殿!
…いや、放してほしいのじゃが…!?」
「うふふ♪本当に可愛いわぁ〜♪
よろしくねメリュちゃん♪
うふふ♪なでなで♪」
「ふぁ…お母様ぁ〜♪」
「魔王様の扱いぃぃぃっ!?て言うかメリュ様が落ちたぁぁぁっ!?」
「え、あの……?メリュ様??」
うん!リリカさんも他国の王后に手を上げる訳には行かないからオロオロしちゃってるね!!
はぁ…………
「アイリーン、止めなさい。」
「姉さんストップ。」
おっ、流石に兄さんも止めに入ったか。
なら後は兄さんに任せよう。
「相手はお客様であり将来の同盟相手になりうる者、あまり品位のない行為は控えなさい。」
「あら〜?…こほん…はい、国王陛下。」
「はぇ…?」
流石に国王モードの兄さんに窘められたからか王后モードの仮面を付け直した姉さんはメリュ様をそっと下ろした。
なんかメリュ様が寂しそうな顔をしてるんだけど?
なんか姉さんが捨てられた子犬みたいな顔で兄さんを見てるんだけど??
「あなた…
「ぐっ…ぬ……こほん。
魔王メリュ様、どうも妻は貴女様を気に入ったらしい。良ければ妻のわがままに付き合って欲しい。」
「…よしなに。」
「メリュちゃぁぁん♡」
「〜っ♪」
「あぁ…メリュ様があんな年相応な甘え顔を………
「はっ!?兄さんはちゃんと姉さんを止めろよ!?」
「リト、すまないが無理だ。逆に話が進まなくなる。…重ね重ねすまないねリリカ殿。」
「あ…いえ、メリュ様が素直に甘えられる相手は希少なので私としては嬉しい限りです。」
「そう言ってくれると助かる。さて、それではメリュ様はあの様子だし、リリカ殿と話を詰めようと思うが構わないかな?」
「はい。私とて従者の端くれ、話を隊長や神官長の元へ持ち帰る位は出来ます。」
「よろしい、ではー
それからはおふざけ抜きで真面目に話し合いが進み、『コキュートスまでレインハルトが常時顕現して付いて行くこと』を条件に親書をコキュートスへ運ぶ話になった。
リリカさんは1つ肩の荷が下りた、と言った様子で安心した顔をしていた。
それから、姉さんに甘えるメリュ様を姉の様な目で微笑みながら見つめ、姉さんと交流していた。
四天王直属の副隊長でメリュ様の従者兼護衛とは言え、他国の王后殿下と親しげに話すリリカさんも、中々の胆力かなぁ。




