〖別離〗そして覚醒
3話目!!Twitterの方もあります。言い忘れてました。
ちょいとばかし長くなりました。レイノ君ついに覚醒です♪
2時間ほど歩いただろうか。やっと本日望む山〖氷河山脈〗に着いた。
ここから山登りが2時間ほどだとギルドのおばさ、、、お姉さんに聞いた。
「いや〜流石に疲れるよねぇ、こっからまた登るんだもんねぇ」
「まぁこれでアネモネとって帰ってきたら晴れて俺らもDランクパーティーだぜ!」
さすがパーティーの元気印アレンさん。みんなを上手く励ます。
まぁ俺は前日も魔術の練習で少々頭がフラフラしているのだが、それでもこれくらいの山ならば登れるだろう。
体力には多少自信があるのだ。
と、のぼり始めて30分程、リデルさんの足が止まった。
「大丈夫ですか?」
「たはは、さすがに後衛の私だとちょっと辛くなってきたかな、レイノ君こそ大丈夫なの?」
「僕は連日の魔術使用で多少の体力は着いたので行けますよ。」
「やっぱり男の子だねぇ、お姉さん羨ましいよ。」
「まぁたそんな戯言言ってないでサッと休憩しな!」
ありがとうアレンさん俺もそう思ってたよ。ウンウン
数分後また、俺たち御一行は中腹をめざした。
途中で休憩を2度ほど挟んで登った。そこでついにあの〖七色のアネモネ〗を見つけた。しかし、何故か話と違う色合いのような気が、、、気の所為だろう。
「やった!あそこだ!」
4人はいつアイススライムが出てきてもいいように、緊張した面持ちで迎えた。しかし待てども待てどもスライムは出てこない。
「何だ?スライムのやつ俺らを怖がって出てきやがらねえのか。」
「なにか不自然だけどまぁ出てこないに越したことはないわね。」
不思議に思ったリッカさんが、アネモネに近づいて無造作に抜いた。
ぶちちっという音と共にアネモネが引き抜かれたが特になんの変化もなかった。
なんだかあっさりと任務が終わってしまったことに幾ばくかの虚脱感を覚えながらも早く帰ろうとしたその瞬間。
ガグウォンと音がしたと思うと俺たちはアネモネの生えていた場所の下に落下した。
10メートル程だろうか、落下したもののさすが冒険者。全員が受身を取れていたので怪我はないだろう。
なんなんだこの部屋は、全面が氷に囲まれて1本だけ道がつきでていた。
「これなんなのかな?」
「不思議ね、こんな場所今まで報告では1度もなかったはずよ。」
「てことは俺らが一番乗りってことか。こりゃいいや。」
ただし俺達は気づいていた。あのアネモネは〖七色のアネモネ〗じゃなくて罠だと、、、
全員の声は少し震えている。心做しか全員の体温もすぅーっと下がるようにも思えた。
「とっ、、とりあえず出口を探しましょう。」
「と言っても1本しかねぇがな、」
こうして俺たちは氷の道を通って次の部屋に向かった。
が、
次の部屋にはただの[絶望]が横たわっていた。
「〖デ、、デスアイスグリズリー〗このモンスターは一体だけでもSSランクパーティーがやっと対処出来るくらいの奴よ。一晩で村が7つ潰されたという噂まであるわ。そんなの、、、勝てっこない、、、」
「いや、でもこいつ寝てるぞ。」
確かにピクリとも動く気配はない。ただ奴の純白の毛皮の腹部が赤黒く変色していた。つまり、、、
「こいつは死んでる。」
「でも、なんで。」
「そいつを殺したヤツがいるってことさ。」
俺たち4人のものでは無い。いやこの世のものとも思えないようなおぞましい声が部屋に響いた。
「だっ、、、誰だよ。」
気丈にもアレンさんが口を開いた。
その瞬間〖声の主〗はアレンさんの腹に風穴を開けながら言った。
「名乗る時はまず自分からだろ。」
この分だとアレンさんは、、、即死、、、
「あーあ〜、殺すのはゼファケスだけだったけどなぁ、まぁいっか、みんな死ねば話は早いねぇ。」
俺以外のメンバー、リッカさん、リデルさん、アレンさんが無惨な肉片と成り果てた。
瞬きをしている暇もなかった。頭が真っ白になっていく。なんなんだろう。視界がグラグラとする。
またあの〖声の主〗が喋りかけてきた。〖声の主〗は頭に光の輪っかのようなものが浮いていて全身が純白の絹でおおわれている。
「君ィ〜、なんで殺されるかわかる?」
静かに首を横に振る。
「ん〜そうかそうか。じゃそのまま死んでね♡」
刹那、俺の体がばらばらになった感覚があった。
痛い痛い辛い苦しいア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛、、、、、、、、、、、
「ふぅこれであの氷魔帝が出てくることはしばらくはないか、まぁ当分の間だけどな。」
そう言ってバサりと翼を広げて〖声の主〗いや、〖天使〗は去っていった。
数分後、あれ?なんで俺の意識がまだあるんだ?体も動く。立てた。指も動く。あれ?さっきまでのは夢?なのか?ならいい。夢だ夢だと自分に言い聞かせるようにしながら隣の部屋に向かった。
そうしてリデルさん達のいた部屋に戻ると
ただの肉片が転がっていた。ぐちゃぐちゃにちった肉片。壁の全面にとびちった血。全てが視界から残酷な現実としての情報が飛び込んでくる。
「え?なんで?これ?え?夢じゃ、、、無いのか?」
その時猛烈な嘔吐感がこみ上げてきて、はいた。
胃の中が空っぽになったと思えるほどに吐いた。
先程まであった一縷の希望は粉々に消え、残ったのは残酷なまでの現実。そして後悔。
自分だけが残ったという後悔に胸がひしゃげるかと思えた。
「じゃ、、、じゃあ俺はなんで生きてるんだ?さっきバラバラの八つ裂きにされたはず、、、」
その答えを探しに先程の部屋に戻ると鮮烈な青色の薔薇が1輪咲いていた。
「これ、、、なのか?」
触ってみると絶大な魔力が流れ込んできたのがわかった。ビリビリと強い魔力で指が痺れるほどだ。
これが俺が生き残った理由だと思った。これの放つ魔力が俺の回復力を爆発的に引き上げバラバラになった体が繋ぎ合わさったみたいだ。
「ハハッこれで、生き残っちまったのか、俺みたいな能無しのクズが生き残って、、、リデルさんやアレンさんが死んだ、、、ハハッははははははっ」
笑いはいつの間にか涙に変わりいつの間にか怒りへと昇華された。
あの天使を殺す。
そうして仲間の無念を晴らす。
そう決めた。
あの絶大な魔力を取り込もうと〖青薔薇〗に触れると、頭の中に声が流れて来た。
──君はこの〖青薔薇〗の力を受け取るか?もしこの力を受け取ると君の人生、未来が変わる、間違いなく変わる。その先にあるものはただの後悔かもしれない。孤独に満ちた生涯を過ごすかもしれない。それでも今君は力を望むか?──
これがあの〖青薔薇〗の声だとわかった。
「俺はお前の力が呪いだろうと受け入れてやるよ。」
高らかに宣言した。
その瞬間左胸に焼け付くような痛みが走ったと思うとそこに薔薇の文様が刻まれていた。自分の体がバチバチと痛みを覚える。大きすぎる魔力にまだ体が耐えられていないのだろう。
─これで今君の中に私、〖青薔薇〗が完全に内包された。魔術師よ、君の名は?─
「俺の名は、レイノ、ただのレイノだ。」
─ふふっいい名だ。ではレイノ、今君が外に出たとしても君のその魔術ではあの天使を殺すことは愚か、まだゴブリンにも勝てん。そこで君には今から〖氷月の深界〗で修行をしてもらおう。─
その声が聞こえた時、もう俺は別の場所にいた。
「ここが、氷月の深界…。」
─君にはここで2年間修行をしてもらう。そして強くなれ、誰よりも、あの天使の比ではない程に強くなれ─
こうして俺の地獄、そんな言葉では生ぬるいほどの修行が始まった。
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