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イムを捕獲し、砂漠を行く俺達一行。
途中にミミズが襲い掛かって来ても、キクスが倒してくれるので、俺はひたすら、魔力を身体から垂れ流して移動していた。
時折、違和感の様な物を感じるが、それはイムが、ちょっとした抵抗とばかりに、俺達を迷わせようとしている物で、イムを気絶させれば問題無く解除できた。
ただ、何故かその際、キクスはあまりそれを感知できていない様子だった。
『離すのじゃ!こんなことをしていたら、災いが起こるぞ!』
『良いじゃァねェの。災いなんて面白そうだ。』
『面白いわけあるかい!この馬鹿!』
二人の精霊は、楽しそうに話しており、仲は順調そうだ。
「しかし、邪神かぁ。精霊にまで伝達してるなら、その義神教ってのも気になるところだが、聞いた話じゃ、そこまで規模は大きくないんだろ?」
『一国分程度にしか浸透してないけれど、小さな村落なら、三つに一つは義神教を信仰してるらしいわ。』
「じゃあ、やっぱり小さい方か。」
世界的に信仰されているのは、あの包帯男を信仰している『全能教』
その次が、一部の種類の人間に刺さり、広がり続けている『人間教』
まあ、一つ目は神を信仰していて、二つ目は人間を信仰している。
くらいの差だ。
正直、人間教は明らかな過激宗教なので、関わりたくない。
聞く話だけなら、どの宗教も過激な派閥があるらしいし、そもそも宗教に関わりたくないな。
うん。
「とりあえず、俺は包帯男とか、パルエラの方が信じられるから信じる。」
『まあ、嬉しい。』
『ぬぬぬぬ!邪神に絆された邪教徒!妾を離すのじゃ!』
なわけ。
というか、普通に考えて、後出しキャラのお前なんかを信じるわけないし、信頼の差は、天と地。
たぬきときつねくらい違う。
よくあるのが、実は良い人、神だと思っていたのが、悪者で、それを他人から教えて貰うとかだけど、そういうストーリーを見るたびに思っていたのが。
何故初対面の相手に教えられた事を鵜呑みにして、そんな簡単に、仲間だと思っていたやつを裏切れるのか。
もうこれ、一種の精神異常だと思うからね。ホント
「まあ、義神教とか、宗教系とぶつかるのは避けたい。どんな宗教にも、狂信者や過激派、武闘派はいるし、そういう場合は大抵が厄介なくらい強いから。」
「強いのか。ノアが闘わないなら、俺が闘う。」
キクスはやる気十分なようだが、俺は平和主義なので、関わり合いから持たないようにする。
『もしも、【狂信者】とか【宗教家】って称号があったら?』
「......無いだろうから、やっぱり入らない。」
『えっ?』
「俺は十分に二人の神に感謝して、信仰もしてる。表立って祈りを捧げないだけで、多分、二人に頼まれたら、国の簒奪くらいなら、全力で取り組むと思う。それなのに、神も知らない奴らが、俺でも満たせない条件を突破して、【狂信者】になれるとは思わない。」
『......そこまで言って貰えて、嬉しいわ。』
それを境に、少し恥ずかしくなってしまって、遺跡へ到着するまで、あまり会話がはずまなかった。
やっぱり、慣れないことはするべきじゃない。
◇◆◇
パルエラ案内により、遺跡まで到着できたは良いものの、結局、あれからイムの抵抗は見る見る過激になっていき、今では一人キャンプファイヤー。
檻が完全にかまど状態になっている。
日は落ちて、そろそろ本格的な暗さになっている以上、これは便利なので、なにも言わない。
魔力で持っているため、火傷の危険は無いものの、熱気は凄まじいため、もう少し弱めてほしいものだ。
「かと言って、熱気防御の為に完封したら、多分不完全燃焼とかで、逆に危なそうだし。バックドラフト的な。」
今は、とりあえず遺跡に入る前の調整を行っており、バッグの中身やら、なんやらを整理していた。
とはいえ、魔力を全回復するとか、ステータスをチェックするとか、その程度。
様子見をしても、意味は特に無いため、事細かには観察しないが、
遺跡の全体図は、凡そ四角形。
どうやら、マキが居た場所以上の大きさを誇り、明らかに何かしらの法則性がありそうな文字が大量に書かれている。
更には、その建築材料は、土や岩の様に見えるだけの鉄や銅などとはまるで違う物質でできており、少しぶっ壊してみようかと殴りつけても、ヒビの一つも入らなかった。
というわけで、俺はもうこの遺跡の材料については考えるのを辞めている。
なんせ、故郷の森にもあったのだから、既に調べていたのだ。
とか言った物の、当時よりも遥かに強くなったはずの魔力でも傷が付かないのは少しショックだったので、ワクワクで覆うため、少し足早に遺跡内に入っていった。




