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西の砂漠に到着後、即徒歩に変更。
水分は十分に摂りつつ、ランニングがてら魔力を大量消費して進む。
「西の砂漠には十二ヶ所の遺跡があり、そのうちの一つに精霊が眠っているらしい。」
『全能神が勧めた以上、ノアに合った精霊だと思うが、詳細は聞いてないのか?』
「聞いてない。遺跡内がダンジョンになっているくらいの情報で、様々な魔物が徘徊しているらしい。ということくらいしか載って無い。」
『GIGIIIIIIIII!!!!!』
突然の轟音と共に、大きなミミズが地中から飛び出す。
『鑑定』をするようなヒマは無い。
たった一人の小さな餌に向かって、ミミズが大きな口を開けて襲い掛かる。
肉の袋の中に、細々と散りばめられた尖った歯。
おそらく、あの中に入った時、少しずつ体に傷をつけられて血液や水分を抜かれ、最終的には消化されるのだろう。
が、体内を敵に晒すという愚は、見過ごし難い。
「『魔力弾』」
一発の『魔力弾』にある程度魔力を込め、遠隔操作でラジコンの様に操る。
弧を描き、内と外の区別が無くなった頃、ミミズは地に落ちる。
「これで65体目。ミミズだけで65体だぞ?この地域にはミミズしかいないのか?と思ったが、狼とかゴブリンもどきとか、いたな。」
大きな体を持つ魔物は、皮膚の部分だけをはぎ取って重要部分を取り除いて、そして『ボックス』へ突っ込む。
でなければ、容量が持たない。
肉の部分なんて要らないし、圧縮してもそこまで小さくならない。
とはいえ、限界までは入れているし、500残していれば、勝手に回復するから問題は無い。
今の戦闘に使ったのも300で、あと数分でもう一回は戦闘ができる。
「ギリギリだな。あと1000は欲しい。4000近い魔力の消失はそれなりにキツい。」
今夜あたりに、これらの素材を全て使って、一体の『ホムンクルス』にしたい。
が、核の多さに比例して魔力の入る量が増え、さらに注ぐ魔力の量で性能に大きな差が出るのは『ゴブリンズ』で検証済み。
となると、今の魔力では足りない。
仮に今まで溜めた『ストック』でも足りない。
総『ストック』は10000弱。
だが、それでは足りない。
ポーションはいくらでもあるが、それでも胃には限界がある。
考えるだけで吐きそうな想定を立て、『ボックス』の維持で死ぬほど精神を削っている。
なのに、それなのに、
「へはっ」
ニヤケてしまうほど今夜が楽しみ♪
◇◆◇
そして夜なう。
ここ数日の事で気付いたのは、この西の砂漠に生息している魔物は、基本日中にしか行動せず、過度に近付いたり、攻撃したりしないかぎり、起きて襲ってくることは無い。
つまり、どんな実験だろうと自由にやれるということ。
ということで『ボックス』から、今まで集めた魔物の素材や核を全て取り出し、1ヶ所に集める。
前回と同様のやり方でも良いのだが、それよりも試したいのは、煉った魔力で合成するとどうなるのか。
魔力の効率が良くなるだけなのか、それともそれ以上の効果が発揮できるのか。
更には、前回無かった『鑑定』や『並行』も併せて使ってみて、8割以上が前回と違う状態ではあるけど、2割は元の実験を10割引き継いでるから、これが吉と出るか凶と出るかで、今後の思考錯誤にも幅が広がるわけで、
「♪♪♪」
鼻歌交じりどころではない。
熱唱しながら作業を行う。
維持に回していた4000のうち、3500までは解放されたので、それを合成に回し、残っている500を、効率の良い魔力回復に当てている。
お陰で、以前とは比べ物にならない量の素材を、以前よりも更に速く合成する事ができた。
◇ ◆ ◇
『???の卵』
HP:0
筋力:0
魔力:0
敏捷:0
忍耐:0
知力:0
幸運:0
称号:【可能性の結晶】
◇ ◆ ◇
『鑑定』の結果はこんな感じ。
特別な所は見受けられず、全て0。
種族が判明していないだけで、ここまできたら死体と同じだ。
「うーん、これに魔力を注ぐ、たしか、タイムリミットは1時間くらいだったっけ。」
そこまで余裕が無い事を悟り、最初に『ストック』の分は全て注いだ。
どうやら、それでもまだ空きがあるらしく、自分の内包量も注ぎ続けるものの、底が見えない。
多種族の核が混ざり合っているというだけで、まさかこんなに持って行かれるなんて思って無かった。
少なくとも、ドラゴンとかユニコーン的な魔物は入れておらず、ゴブリンとかスライムとか狼とかミミズとか。
そんな男の子の材料みたいな内容で、こんな大容量の卵ができるなんて想定外だった。
もしかすると、レア度に関係無く、個数で決まる感じなのか?
それとも、それにレア度を加算する。つまり、俺の全魔力でも足りないって事なのか?
今は検証が足りないな。
そんなことよりも、今は目の前の卵に集中しないと。
『分身』を2体作り、一人は俺にポーションを飲ませ、もう一人は頭からポーションをぶっかけるという作業をしてもらった。
ただ飲むよりも、2倍近い回復を見せるものの、やはり消費と回復が釣り合わず、やや消費が勝っていた。
「核は全部放り込んだから、食えないし、食いたくもない。じゃあどうするか。」
「答えは簡単、ちょっと休めばいい。」
「ナ○トもやってたみたいに、一人が魔力の回復に専念して、もう一人が注ぐ、そんな感じならどうだろう。」
ということで2体追加。
完全自律型のそいつらに回復を頼み、ポーションを浴びせている2体も完全自律に移行、4人揃って瞑想を行って貰う。
それから、一人頭ストック魔力1000の分身たちと代わる代わる回復と注入を繰り返し、1時間。
注いだ魔力の量は驚愕の『54700』。
これだけ注いでやっと底に辿りついた。
「「「「「つ、疲れた。」」」」」
極限の集中力とともに、大量の魔力を消費しては回復したため、俺達は鉛の様な全身の重さに耐えきれず、その場に座り込む。
光り輝く卵を見詰め、残り少ない魔力を使って『鑑定』をする。
◇ ◆ ◇
『魔人の卵』
HP:60000
筋力:75000
魔力:40000
敏捷:77000
忍耐:30000
知力:53
幸運:600
称号:【合成獣】【人型の魔物】
◇ ◆ ◇
へえ。
ハクの召喚した天使のルルロラルを見ていなかったら、目を2、3回擦って、見直すとこまでやるだろうけど、まあ、そこまで驚かなかった。
というよりも、【称号】にある【人型の魔物】や、名前の『魔人』について、気になり過ぎてしかたない。
つまり、『ゴブリンズ』も人型だったのに、そんな【称号】が無かったということは、この卵から生まれる『ホムンクルス』は、完全な人型。
肌や髪や、小さな特徴までもが人間と同じ状態の魔物が生まれる可能性大!
卵から人間が生まれるという、天変地異レベルの珍事が、目の前で起ころうとしているのだが、俺は依然、期待に心震えていた。




