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異最効率論〜才能が全ての世界で努力する〜  作者: 草間保浩


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「あ、本体から連絡ですね。ヘレナ女医、妹さんの体に異常が出たのはいつごろで?」

「ああ、それなら忘れない、数年前のある日。とある男に当時お熱だった妹が、号泣して帰ってきた。なんでも、他にも女がいたらしく、目の前でキスをしていたとか。」

「げぇ、そんな話があったんですか。」

「ああ、その男はちゃんと社会的制裁を加えさせてもらったが、その事と何か関係が?」

「いえ、何も無ければ良いのですが、どうやらステータスに、精神の安定さを欠いた出来事が原因っぽい感じの事が書かれていたらしいので、確認を」


 どうやら、妹は恋人の浮気を発見し、相当なショックを受けたのだろう。

つまり、精神病の一つというよりは、そういう体質。

 ベルさんは本来、安定した精神状態なら、こんな珍獣変化はしなかったのだろう。

 しかし、彼氏の浮気と自分の体に起きる変化という二つのストレスから、この様な状況に。


 そう考えると辻褄があう。


 なら、一番の薬は、ストレスの解消だろう。

とはいえ、事情が事情なだけに、やりたい事をやらせてストレスを無くすというのは、かなり難しいのではないだろうか。


 檻に近付き、中をハッキリと覗く


『ヤメテ、見ナイデ』

「すみませんが、治療の為にご協力ください。事情は聞きましたが、今、ベルさんがしたいことはありますか?」

『シタイ事?』

「ええ、元恋人を殺したいとかでなければ、多少融通できます。」

『甘イ物ガ食ベタイ。』

「ではパンケーキでどうでしょう。市販の材料を使って作ったそれなりにボリュームのあるヘルシーな一品です。」


 『ボックス』から取り出したケーキに、ハチミツとバターを乗せ、手頃な大きさに切り分ける。

檻に付いてしまわないように手を入れ、そこから『サイコキネシス』で近付ける。


『アー』


 声と共に、パンケーキに向かって、一本の肉塊が伸びる。

赤い筋の塊の先に、ギラギラと伸びる白い牙。

 想像を越える見た目に、一瞬動きが止まる。


『ア、今、見タ?』

「ええ、驚きました。」

『ア、ア、ガ、GYAAAAA!!!!』


 咆哮が轟き、地下全体が揺れる。

ヤバい、ミスった。

 そう思った時には既に遅く、俺の右腕は弾き飛ばされ、檻との間でベキベキにへし折られていた。


「落ち着いてください。」

「嘘吐キィィィイイイイイ!!!!!!」


 右腕が引っ掛かって上手く檻から手を戻せないでいると、今度は檻の中のベルが暴れ始め、徐々に体に変化を起こしていた。


「これは......なんだ?」


 移り変わり続ける姿。

肉の塊の様な姿から、ライオンの様な四足歩行型の何かに変形し、そこから爬虫類的な鱗を持った何かに変身し、遂には鳥の様な羽のある何かに変態した。

 

『AAAAAAAAAA!!!!』

「一旦落ち着いてください。『サイコキネシス』」


 体全体を覆い、動けなくするも、常時変わり続ける体に、質量保存の法則を丸無視したこの動きは、簡単に捕えることができず、かつ、次にどのような変形をするのかも分からない。


 そんな中、型を取る様に固定しなければならない『サイコキネシス』では、どうしても無理があった。


「深呼吸が大事ですよー。大丈夫です、驚いただけで、別に気持ち悪いなんて思ってませんよ。」

『GYAAA!!嘘OOOOOOOOOOOOO!!!』


 聞かないか。

対策を考えてはいたのだが、どれも効果なし。

 今の所麻酔なんて見つけて無いので、強制的に睡眠を取らせることはできない。


「仕方ない。すこし痛みますよ。」


 そう言って、『サイコキネシス』を解除、『魔力剣』を大きく回転させ、ベルに大きな傷を付ける。

しかし、傷を付けた傍から治るという、驚異的な再生能力を持っており、尋常ではない魔力を感じ、それが傷口に当てられていると察する。


「なら、そうですね。『倍加』」


『並行』が加わった倍加による、100の『魔力剣』が、空中で旋回し、ベルの全身の肉と魔力を削ぎ落していく。

 最初は、アメーバのようにくっつき増え塞がっていたベルの体も、それが徐々に勢いを失い、弱々しい悲鳴を上げるだけだった。


『AAA......ナンデェ』

「魔力と血液を過剰に消費させるだけです。」


 一面が血の海となり、ベルが完全に沈黙したのを確認すると、そのまま腕を強引にひっこ抜き、檻の鍵を開けて中に入る。


 治りきっていない部分の怪我を『魔力糸』で縫合し、自分の腕に目をやる。

骨が見えているため、分類は一応複雑骨折だろうが、指の方はどうやら脱臼だけで済んでいるらしい。

 赤く腫れ上がって入るがある程度自力で曲げられる。


 まあ、問題は無いだろうと『サイコキネシス』で骨の位置を戻し、固定する。



 ある程度治療が済み、ベルを見ると大きな肉の塊だったものが、人の姿を形成しているのに気付き、経過を観察する。


 現れたのは、ハクとは違う艶の無い白髪。

恐らくはストレスによっての結果で、元の色は金か茶色か、毛先に若干残っている色だったのだと予想。


 年齢は10代前半か?

イメージよりも若い、というよりは幼く見える。

 少なくとも、浮気するような恋人がいる年齢には見えない。


「はぁ、ハクに申し訳ない」


 もちろんのこと、服など着ているわけもなし、病的に白い肌が惜しげなく晒されており、傷は一つも残っていない。


 そんな少女ベルの体を持ち上げ、『分身』に運ばせたベッドに横たわらせる。


 ポーションを飲ませても良いのだが、この感覚。

ベルの体内では、異常なまでの魔力の活性が行われており、今なお衰える事無く増え続けている。

 数字に起こすなら、一秒100くらいだろう。


 何故、こんなことがあるのかは分からない。

【称号】によるものなのか、それとも体質の延長線なのか。

 一つ言えるのは、常時魔力がここまで増えているということは、すぐにまた暴走することになるということだ。


「対策か、そういうマジックアイテム的なのはまだ見たことが無いんだよな。魔力が常時減るか......」


 何か良い方法は無いものかと、思考を巡らせ、遂にはベルが起き上るまで、何も思い付かなかった。

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