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 ヘレナ女医に案内され、ついて行った先には、それなりの大きさを持ちながらも、外装は蔦や苔に覆われ、やや薄暗い印象を受ける、元は白かったであろう灰色の建物があった。


「これは、ある意味予想以上だったな。」

「お恥ずかしい。ここの職員は私を除いて全部で20名。内5人が【治癒】属性使いで、他15名は【水】属性や他の属性が使える。」


 院内に入って行ったヘレナ女医に、職員らしき数名が挨拶をする。

慕われてはいるのだろうが、職員達に対するヘレナ女医の態度は、初対面の時の俺に対するモノと同じだった。


「お疲れ様です。今日はどこへ行っていらしたんですか?」

「なに、我らが医学界に革命をもたらす天才をお呼びした。くれぐれも失礼の無いよう、注意しろ。」

「は、はあ、となると、余程の【治癒】属性使いと思われますが、その方はどこに?」

「目の前にいる。彼はノア・オドトン。死者の蘇生すら可能な稀代の医者だ。」


 ヘレナ女医のヨイショに、顔を引き攣らせる。

ここまでハードルを上げられるのは、本意ではない。

 それと、俺は医者を名乗ってはいない。


「彼って、子供じゃないですか!今日はどこでなにを聞かされてきたんですか?」

「闘技大会で出会って、彼の技術に感銘を受けた。そのため、これから彼に指導を受けることになる。」

「は、はぁ!?何を言っているんです!え?君、院長に何をしたの!?」


 看護師が俺に掴みかかってくるが、どう答えれば良いのか分からない。

困ったことに、ヘレナ女医がこんな感じの人間だということまでは予想していなかったからだ。


 ぶっちゃけて言うと、ポンコツ。

まさか、何の前置きも無く、従業員に対して「一番上が子供になったからヨロシク」なんて言ってしまうとは思ってもいなかった。


「とりあえず、【治癒】魔法を使わない医療を広めに来た。それだけです。」

「いやいや無い無い!!【治癒】魔法を使わずに治るのはちょっとしたかすり傷くらい!そんなの常識だから!」

「その常識を根底から覆すつもりで来たんです。病気の対策は追々、俺がやりますので、治療に関しては、【治癒】魔法に頼らずに治せるよう、指導をしますので」


 はぁ?と呆れた様な顔をしている看護師を置き去りに、そのままザッと病院内を見て回る。

外傷で治せないのは、完全にその部位が無くなっている欠損患者と、治しても元に戻ってしまうという患者だけだ。

 

 前者に関しては、義足や義手などの対策を練るとして、後者に関しては、原因を調べる必要があるだろう。


「と、そんな事よりも掃除だ。この病院は明らかに不衛生すぎる。ここにあるありったけの掃除用具と【水】属性の者、手が空いている者を呼んで来てください。」


 水道が無い分【水】属性を使える人を水道代わりにしてしまうが、俺の【無】属性で空気中の水分を掻き集めるのは、どうしても効率が悪いので、仕方無く頼ってしまおう。


「あ、一応これが名簿、君に必要だと思って、患者のリストと職員のリストを用意しておいた。」

「ありがとうございます。おお、使える属性まで書いているんで......ん?」


 渡された二つのリストには、それぞれ患者の名前と怪我、病気の詳細。看護師や医者の名前と年齢、属性が書かれていた。


「この、ワイト、というのは?歳は若いし、属性に何も書かれていませんが。」

「事情が事情でね。【無】属性という事を理由に、家を追い出されたらしい。よくあることだが、この病院では、そういった子を引き取っては、多少の教育をして自律させる。人を助けるという創設者の意志を汲み取った施設だから、国からの支援もあるし、十分不自由無く過ごさせられる。」

「そんな子が、看護師にいるのは何故?」

「その子の意思だよ。手伝い程度で、給料はいらないから、何か雑用を押し付けてほしいと。」


 随分と真面目な子だ。年齢は10歳?俺の二つ上か。

難儀な話だ。まさか子供の属性を見ただけで捨てるなんて。

 とはいえ、こんな世界なら、仕方無い話なんだろうと思う。


 これに憤りを覚えて、孤児を掻き集めて育てても、急場しのぎにしかならない。

やはり、【無】属性への偏見を、根本から解消する必要がある。


「その子に会わせてほしい。ヘレナ女医とその子の二人で勉強してもらいます。」

「分かった。」


 そう言い、職員達を集めるために、ヘレナ女医はその場を離れる。

俺はそれを見送り、院内の各部屋を見て回ることにした。


◇◆◇


「おおっ、これはすごい。あのずっと続いた痛みが無くなったよ!」


 これで三人目。俺はリストを見ながら、今の状況でも簡単に治せるような患者の元へと赴いて、治療を行っていた。

 麻酔なんて便利なモノは無かったので、動脈の部分を抑えて一時的に出血を少なくし、その状態で『魔力剣』の小型版『魔力メス』を使って切って原因を取り出し、『魔力糸』で内側から0.1ミリ間隔で細かく縫って傷を閉じ、上から『癒善草』ポーションを垂らして傷を塞いだ。


 一人目は腕の変形。

これは、折れた腕をそのまま正しい位置に戻さずに【治癒】魔法で無理矢理接合した結果、腕が変な方向に曲がってしまったという症例のため、一旦腕を切開、骨を丁寧に削って正常な状態に戻してから、切開部分を縫合、『癒善草』ポーションで傷口を塞ぎ、手を固定できるように、ゴブリンの骨を綺麗な棒状にカットしたものを添え技に、スライムのジェルとゴブリンの皮のクッションを腕に巻き付けて、三ヶ月の安静を言い渡し、一日一本飲むようにと『癒善草』ポーションを渡した。

 飲まない可能性を考慮し、一度一本だけを服用させ、味を確かめさせた後に、家に帰した。


 二人目は傷口の化膿。

どうやら、魔犬に噛まれた箇所を【治癒】魔法で塞いだ結果、中に牙が残っており、そこから雑菌が繁殖、膿となっていた。

 これは膿と牙を除去した後、『癒善草』ポーションを水代わりに肉ごと洗い、大きく抉れてしまった部分は、幸い血管や神経には触れていなかったので、そのまま縫合した。


 三人目はこれまた異物が体内に残っていたらしい。

足の中、ちょうど骨と骨の間に、金属片が入っていたらしく、歩く度に痛む足に悩まされていたらしい。

 これも、多少手荒にはなったが、骨は傷付けずに、誤って切ってしまった血管はちゃんとつなぎ直した。

 傷口を残さないうえ、特に必要は無いが『癒善草』ポーションを数本渡したので、許してほしい。


と、こんな感じで治療をし終えたところで、ヘレナ女医が職員を集め終えたらしい。

 ロビーに20人程の人間が集まっていた。


 しかし、なにか様子がおかしい?

ヘレナ女医が誰かと言い争っていた。


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