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一本突きを回避し、直突きをかます。
大したダメージには見えずとも、内臓に響く打ち方をしているため、ルルロラルの体内は、混乱の最中だろう。
チラリとHPを見てみると、ルルロラルは450のダメージを受けていた。
とはいえ、10000のうちの450など、ものの数に入らない。
これを何回も続ければ、たしかに勝てるかもしれないが、それも現実的じゃない。
「破技『薔薇散美』」
槍を突きだす手に、なぞる様な柔らかな手が伸び、その手が通過した跡を、真っ赤な線が彩る。
貫手や手刀と呼ばれる、手を握らない拳は、打撃の様な衝撃を伝えるものではなく。鋭さ、ナイフの様な鋭利な手を用いてダメージを与える。
らせん状に描いた傷は、ルルロラルが腕を動かす度に痛みを与えるだろう。
腱が切れ、握る力が弱まったルルロラルの右腕は、そのまま槍を落としてしまい、咄嗟に盾を突きだす。
「『シ・ブロック・レ』」
「連技『銅鑼餓者』」
光を纏い、構えた盾の前に、幾層もの光の盾が現れる。
それは、厚みだけでなく、数も多く、ルルロラルの周囲を囲んでガードしている。
しかし、特に厚いのは、その盾に重なっている光で、一番ガードが堅いのもそこだろう。
掌底打ちという、発頸とも呼ばれる拳の打ち方がある。
それは、てのひら全体と指で一定の衝撃波を作り、相手の体内にインパクトを伝えるもの。
それを応用したのが銅鑼餓者。
ある日、とある僧が誤って神社の鐘の中に入り、三日三晩、飲まず食わずで死に掛けていた際に編み出した技だ。
金具が外れ地面と綺麗に接着している金を、か弱い僧が持ち上げられるはずもなく、また打ち砕けるはずもなし。
そんななか、この技を編み出して外の人間を呼んだという話らしい。
それ以来、鐘餓者と呼ばれていたこの技は、模範演武の際に銅鑼を叩くための『銅鑼餓者』になったという。
そんな、分厚い青銅製の鐘をならす程の衝撃を、ルルロラルの盾に当てる。
当然のように、手には硬質の感触。
帰ってくるのは、金属よりも硬いという謎の直感。
しかし―――
「ぐっ!!?がばっ!!」
手のひらが生んだ衝撃は、無事ルルロラル、延いては盾の内部に侵入したらしい。
ついに大きな塊の血を吐いたルルロラルは、呼吸困難を起こしながら、俺を睨み付ける。
「連技『大娑輪』」
前かがみになったルルロラルの頭部を後ろから殴り、そのまま足を払い、数度回転させる。
そのまま、ルルロラルは地面さんと熱烈なキスをすることになるが、それをさらに押し付けるように頭を踏む。
HPは健在。
余裕で半分以上残ってはいるが、ルルロラルの意識は刈り取られた。
「う、嘘......」
ハクが顔面蒼白のままそう呟く。
恐らく、あれが本当にハクの最高の切り札だったのだろう。
俺は、ハクに近付く。
「ひっ」
それと同じく、ハクは俺から距離を取ろうと、後ずさる。
しかし、そんな後退は許さないとばかりに、俺は一気にハクに接近し、足払いをして抱きかかえる。
「凄いじゃないか!いつの間にあんな強い天使を召喚できるようになった!」
「はぇ......?」
「あのイカレたステータスも、使ってきた魔法も、人生初だった!よくこんなに強くなったな!偉いぞ!」
自分でも引くくらいに、べた褒めの言葉が溢れ出る。
さっき責め立てた以上の、10倍近い褒めを浴びせる。
「あの天使と一緒に、二人で襲いかかってきたら、多分俺は負けてた!頑張ったんだな!」
「ぅ、その、うん。」
「流石だ!天才!最高!神童美少女!」
「う、うん、えへへ」
もぞもぞしながらニヤけるハクの頭に、頬を擦り合わせて笑い合う。
闘技場内という、周りの目のある中で、思い切りじゃれ合うが、そんな事等一切気にしない。
『これは、決着ッ?ハク選手の召喚した天使が完封されましたがッ、ハク選手はわりとノーダメではッ?』
『馬鹿を言うんじゃありません。前半戦の時にはハク選手が余裕でボロボロにされていたでしょう。時間経過で回復したと言っても、あれほどのダメージで、かつ魔力を全て注いだ召喚獣が負けたんですから、ハク選手は負けで良いでしょう。』
『では、勝負ありィッ!!!!』
『『うおおおおおおおおお!!!!』』
試合終了の合図と、観客席の歓声をBGMに、俺はハクを抱えたまま場内から出た。
「やっぱルルロラルから手ほどきを受けてたのか?」
「う、うん。ルルロラルはスピードで、あと二人、力と魔力が強い天使がいるんだっ。」
3人同時に来なかったのは、手抜きではなく、魔力不足だということだろう。
さて、ハクが3人同時に召喚できる頃には、俺はどれだけ強くなれるだろうか。
今からが楽しみだ。




