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十分に回転させ、体の水分が半分ほどになったハクを、そのままジャイアントスイングで投げる。
勢いが無かったのか、体が重かったのか、そこまで遠くには飛ばず、ハクは地面に跡を残しながら滑る。
「手心を加えた罰だ。次は俺を殺す気で来い。」
【魔剣】属性について、俺は多くを知らない。
訓練には付き合ったが、ある日を境に俺と訓練をしなくなったため、そこから先を持っているのなら、警戒しておくしかない。
もしくは【天国】や【模倣】といった、完全未知数の魔法を使うかもしれない。
「げほっ、がっ、ご、ごうざ」
「まさか降参するつもりじゃないよな?」
不愉快な言葉が聞こえた瞬間に、ハクの両頬を手で掴み、口を動かなくさせる。
絶対に、なにがあっても『降参』なんて口にさせない。
結果的に負ける事があっても、自分から負けにいくなんてことは絶対に認めない。
しょうがなしと、ハクの口の中に『ボックス』を開き、ポーションを飲ませて多少の回復をさせる。
嗚咽と充血は収まっただろう状態で、怯えた目を向けるハクは、生まれたての小鹿の様に足を振るわせ、立ち上がると同時に魔法を撃つ。
「『魔力弾』!」
目測100程の魔力を煉っている『魔力弾』は、なんのためか、眠っちまいそうなノロい動きで俺へ迫る。
なるほど、牽制か。
「『魔力弾』」
俺もそれと同じ程の魔力を使い、一周り小さいものの、ハクのものよりは早い弾を撃つ。
互いの魔力が打ち消され合い霧散するも、ハクに次の動きは見えず、ただただ青い顔をこちらに向けるだけだった。
「......ぁ」
「全力だよな?」
「......ぅ、う」
「全力じゃないよな?ハクがそんな実力な訳ないよな?」
首を傾け、下を向くハクの顔を覗きこむ。
「......う、あ」
「ハクはやればできる子だろ?ほら、俺を殺す気で」
涙を流すハクに薄く微笑み、流れるように胸元を殴る。
「ぅ、ぅうう、ああああああああ!!!!!!」
絶叫し、召喚した没魔剣を振り回す姿は、酷くいたましい。
しかし、手加減はハクのためにならないと思っているからこそ、俺は容赦なく、その没魔剣をへし折る。
「あ、ああああああ!!『天使召喚』!!」
「おお!!」
少ない魔力が黄金色に輝き、天を衝く。
雲を隔てた空高くから、人型の何かが降り立つ。
それは、一見すればミロのヴィーナスのような美女のようで、例えるのなら、両腕のあるミケランジェロの彫刻。
完成された美しさの様なものを持っている存在だった。
それが召喚魔法なのか、あるいは別の物かは置いといて、俺はソレに向けて、強化版『鑑定』を使う。
しかし、『鑑定』に映ったのは、目を疑う文字だった。
『ルルロラル 界天使
HP:10000/10000
筋力:5000×2
魔力:100000×3
敏捷:7000×3
忍耐:4000×2
知力:5000×4
幸運:1000×1.5
加護:【全能神の遣い】【天神の加護】【界神の加護】【国神の加護】』
息を飲む。
大量に羅列された『0』の文字。
圧倒的な数字のステータス欄に、俺は反応を忘れる。
『これは、ハク選手のデータにある【天国】属性かァ!!異様な雰囲気の女性......男性?え?どっち?と、とりあえず、急展開だァ!ハク選手の召喚したこの方に、ノア選手勝てるのかァ!?』
『今まで使っていた記録の無い魔法です。これは切り札ととって良いのか、それとも窮地においやられ覚醒したのか、はたまた魔力暴走の一種なのか、気になるところですね。』
実況と解説が話している中、『魔力鎧』に全力で魔力を込める。
ここまでは想定内。
あんなDQN丸出しの攻めを行ったのも、ここまでを望んでいたからだ。
正直、ハクの潜在能力の全ては、【魔剣】よりも【天国】に吸われていると言っても過言ではない。
その証拠に、ハクは今、ほぼ全ての魔力を消費してこの召喚を行っている。
つまり、コスパの良い【魔剣】よりも、【天国】の方が強い事になるからだ。
となると、一桁二桁ほどは、差があるのも仕方ないと思っている。
「汝、ノァ・オドトンよ。貴様は我が主、ハクビに対して、不当な虐待、卑劣なる暴行を加えた。よって、死刑に処す。」
その天使ルルロラルは、両手に光り輝く槍と盾を召喚すると、槍の穂先を俺へ向けた。
「『ラ・バースト・レ』」
穂先から放たれる極大の光線に、咄嗟に身をかわすものの、頬を掠り耳が取れた。
痛みは走るが、手で耳を抑えることはせず、真っ直ぐにルルロラルを見据える。
「『ラ・スピル』」
瞬間移動の様な速さで肉薄し、俺に槍を突きだすルルロラル。
通常であればただハチの巣になってお陀仏。
明らかに常軌を逸した攻撃を繰り出すルルロラルに、成す術は無い。
しかしながら、さきほどから俺は、ルルロラルの攻撃について、逐一解説を挟んでいる。
これがどういうことか。
「ぬッ!!?」
「動技『一実千衆』」
やろうと思えば、スピードで負けているわけじゃない。
ルルロラルの敏捷は21000。俺の敏捷は2194。
ゆうに十倍近い差がある。
しかし、俺には、十倍だろうが二十倍だろうが、一時的になら加速できる移動技術はあるし、動体視力や思考速度については敏捷の数字はアテにならない。
となれば、反応速度と回避の問題。
極論を言うと
『当たらなければダメージ0』




