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かくして、場内まで辿りついた俺は、既に残魔力量50%を切っており。
それなりに平衡感覚が失われた状態での登場となった。
それもこれも、落下物12個。転倒9回。校内トラブル22回という異常な不運に見舞われたせいでもある。
ほぼ満身創痍な状況で、俺はへらへらと笑っているグレイ・ノットマンと対峙する。
「おー、オレの試合で対戦相手が来たのなんて、君が初めてだ。」
「そうか。」
「だが、俺のステータスを見たらすぐに個室に帰りたくなること間違いなしだぜ。」
ニヤニヤしながら俺に近付き、自分のステータスをひけらかすように見せびらかす。
◇ ◆ ◇
『プレイヤーシステム』
グレイ・ノットマン
HP:999
筋力:999
魔力:999
敏捷:999
忍耐:999
知力:999
幸運:999
適性魔法属性:【火】【水】【風】【土】【光】【闇】
固有属性:【創造】
◇ ◆ ◇
「どーよこのカンストステータス、パなくね!?」
「この『プレイヤーシステム』ってのはなんだ?」
「あーこれ?これがオレのチートなんだけど、なんで見えんの?」
「俺も転生者だからか。」
「あー、そういう感じのキャラ設定なのかー。めんどいなー。」
この男がどういうチート能力なのかは大体予想が付いた。
恐らく、主人公になれるような感じのチート。
つまりは、ご都合主義の塊になれるチートなのだろう。
実際の所999はカンスト数字ではないのだが、同年代に4桁なんて化物染みたやつはいないし、妥当な反応だろう。虫唾が走る。
しかも、この【創造】という【固有】属性と、その頭のおかしい言動を見るに、物質を想像するのではなく、【固有】属性を見て【創造】することでコピーする様な【固有】属性だと思われる。
ああ、気色悪い。
口の中に直接『ボックス』の出入り口を作って、常時『癒善草』ポーションを入れていないと、目眩と吐き気で失神してしまいそうになる。
仮にこれが演技で、俺の弱点を突く策略なら、俺は心からこいつを尊敬してやっただろう。
「へー、お前もなかなかステータス高いじゃん、一番高いのは忍耐の350か。」
「......?」
忍耐が一番高い?
いや、確かに忍耐は高いが、350?基礎しか見えて無いのか?【称号】による倍増率は見えて無いのか。
「ってか、属性無いじゃん!チートも無いし、【固有】属性も無いとか、雑魚過ぎワロス。やっぱ転生者って設定でも、NPCじゃこんなもんかなー。」
こいつ、俺をNPCだと思ってるのか?
というよりも、これを完全にゲームだと思い込んでいる節があるな。
『これより、試合を始めます。両者位置に着いてください。』
解説の言葉が掛かり、俺は相手から距離を取ろうとする。
と、その瞬間グレイが俺に向かって跳び蹴りをかましてきた。
「っおらぁ!」
ヤンキー蹴りとでもいうのか、まるで足の裏で張り手をしているような、そんな粗末な蹴りが俺の腹を蹴る。
しかし、ほぼ全回復している俺は、その程度じゃ倒れない。
『ふ、フライングだァッ!!グレイ選手、まさかの反則ッ!』
『これは予想外ですね。まさか彼がこんな汚い手を使うなんて。』
観客席からはブーイングと歓声の二つが聞こえる。
両方を聞き分けて見ると、歓声は3年からで、ブーイングはその他のクラスから出ているようだ。
「はいおわりー。」
などと、後ろを向いて勝ち名乗りをしているグレイを見て、その後に実況と解説を見る。
二人ともこの状況に困惑しているらしく、目で俺の安否を確認してくる。
特にダメージは無かったし、無言で頷く。
『試合続行!ノア選手は今の反則を容認するそうですッ!』
あれ?そう言う意図だったの?
......まあ、いいか。
「はぁ~?だる。ザコNPCとか相手にする気ないんだけど。」
こいつ、初対面の時から大分態度が豹変したな。
というよりは、いつもが猫を被ってただけか?
「『魔力拳』」
少し様子見と警戒をしながら、煉り込んだ魔力を拳に纏わせる。
「なんだそれ。ジャ○ャンケンかよ。ゴ○の真似したって念○力は使えないぞー。」
「......」
驚いた。一般人でも見えるくらい濃厚な魔力の塊なのに、こいつはそれが見えないのか。
チート持ちとはいっても、本人のスペックがそこまで高くないとかなのか?
「『火球』!」
グレイは俺に魔法を見せつけるように放ち、後を警戒するわけでもなく、また場外へと歩き出そうとしていた。
ちょっと大きい程度の『火球』を掻き消し、追撃を警戒していると。
「あれ?オレまたなんかやっちゃいました?」
なんの冗談か、グレイはヘラヘラ笑いのまま振り返り、顔を顰めた。
「は?空気読めよ。ここは俺の魔法で一発負けしたお前が、『まさか、上級魔法!?』って驚いて、俺が『え?ただの下級魔法ですよ?』って言うパターンだっただろ。」
何言ってんだこいつ?
「何言ってんだコイツ?」
ポロッと口から出た言葉が癪に障ったのか、ズカズカと大股で近付き、前傾の姿勢で顔を俺に寄せると、グレイは唾を飛ばしながら捲し立てる。
「あ?てめえモブだろうが。お前みたいなやつはオレの引き立て役ってのが世界のルールなんだよ。プレイヤーはオレ、お前はNPC。クソみたいな根性論で頑張ってないで倒れてりゃ良いんだよ、ああん!?」
顎を突き出し、相手を至近距離で睨みつけ、敵意むき出しで怒鳴りつける。
これは罠か?と思ってしまいそうな程に無防備で、背筋が凍る思いだった。
が、今は試合中。
「せいっ」
「ぐぼっ!?」
前に突き出した顎をひっかける感覚でスカイアッパーを決めると、グレイはそのまま何も言わずに倒れてしまった。
脳震盪で、恐らく深い深い夢の中にいざなわれたグレイはその場で昏倒し、立ち上がることは無かった。
『あっ、敗北を確認、『プレイヤーシステム』が移譲されましただって。』
『おっ、良かったじゃねぇか、いけ好かないヤツが使ってた中古のチートが手に入ったぞ。』
パルエラとマキの言葉を聞いた俺は、少し絶望してしまった。




