表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/310

53

 大会自体は、一試合目の熱を残したまま、淡々と進み続けた。

ヴィル君は2年生の女子と当たったが、なんなく撃破、その後仲良く話していたのを目撃したので、話しかけずにその場を去った。


 また、Aブロックが終わり、Bブロックに移って、数試合した後に、俺の試合が始まることになった。


相手は、アレクサンダー君の時と同じ、3年の男子で、ロドリゲス先輩と違ってそこまで大きくは無いものの

、どこか余裕そうなニヤニヤ顔をした軽装の少年だった。


『おっとォ!本日2回目ッ!1年対3年の戦いィ!!まさかまさかッ!この戦いも魅せてくれるのかァ!!』

『プロフィールによりますと、1年、ノア君は非常に謎の多い人物と言えます。属性を持たない【無】属性でありながら、受験時の魔力量測定の際には1000を越える魔力を持っていたということで、不正を疑われていたそうです。もしも彼がここで勝たなければ、あるいは不正を露呈させたということになるかもしれませんね。』

『本人曰く、【無】属性魔法を使えるとのことですが、どうなんでしょう。それ以上に剣を使って戦った方がまだ勝率はありそうです。アレクサンダー様の様な快勝は無いと思いますね。』


 前評判から、明らかに不評だった。

それもその筈、この一カ月と少しの間、ずっと一緒に訓練して【無】属性魔法の有用さを知っているのは、俺達Sクラスの面々だけだ。

 【無】属性なんて実在しない。使い道が無い。使えない。役立たず。【無能】


 そんな常識を打ち破る為に俺はここに立っている。

マリナ教師に対しての怒りを抱いて、少しばかり効率を捨てた行動。

 しかし、俺が俺として勝つために、

 だからこそ、最善手の効率的な方法を用いる必要がある。


「【無能】が過ぎたイカサマをしてSクラスに入ったって聞いたがよ~。まさか闘技大会に出るほど面の皮が厚いらしいな~。まさか、上級生にまでイカサマが通じるとでも思ってるのか~?」


 間延びした、聞くに堪えない煩わしい声に、記憶の反芻が起きる。

軽い頭痛は無視して、緊張感なんて端から持っていない。


 俺は、持っていた剣をその場に刺し、相手の選手を見た。


『おっとォ!ノア選手、まさかの挑発ッ!魔法無しッ!武器無しッ!分かっているのかァ!?相手はあの3年Sクラスの問題児、ハイドル・ローレンスだぞッ!』

『意図が伝わりませんね、相手が手加減をしてくれるように見えているのなら、三流どころじゃないでしょう。それとも彼には、強い自分と弱いハイドル君の様な、“ありえない光景”が見えているのかもしれません。』


 聞こえるブーイングの嵐。

罵詈雑言や誹謗中傷。実況と解説は半笑いで話し始め、ニヤニヤしていたハイドルの表情は冷めきっていた。

 審判がしきりに「剣を持ちなさい」と忠告してくるが、それを無視する。


「ぶっ殺してやるぁああああ!!」


 剣を大きく振り上げ、なんとも大雑把な型を見せびらかすように動くハイドル。

すまないが、お前には俺の、俺達の為の布石になってもらう。


「『サイコキネシス』」


 剣を振る。一挙一動が雑で仕方ない。

重心はバラバラで、力は半端に入って、握りも甘く、視線も定まっておらず。

 そんな相手を、全身から動けなくするくらいは余裕だった。


「......ッ!?」

「これじゃあ地味だし、ちょっと遊び相手になってもらう。良いだろ?センパイ」


 端から見れば、圧倒的戦力差があるはずの二人が、止まっているように見える。

それは、ハイドルが俺に対して、ビビらせるために止まっていると思うような光景。


『おっとハイドル選手ッ!一年相手に余裕の構えッ!相手に先手を譲るのかッ!?それともただの悪ふざけかッ!?』


 周囲からのブーイングが、少しだけハイドルに向く。

調子に乗って、【無能】を進出させるようなヘマをするなよと。

 

「センパイ、楽しみましょうや。」

「......ッ!!......ッ!!!!!」


 何かを言おうとしても、声帯の動きを無理矢理止めているため言葉にならない。

そして、僅かに聞こえる荒い息も、観客の声にかき消される。


「『魔力拳』」


 普段であれば、優れた目を持つ魔法使いや、直感の優れた者にしか見えない魔力の塊、【無】属性魔法は、その出力や濃度、煉り方で可視化する事が可能。


 その目安は200%。およそ通常使用の二倍の濃度に煉って初めて少しだけ見える。

それは、遠めに見たガラス程度。当然、威力も耐久も二倍になる。


 そして、『魔力拳』の基本消費魔力量は50程度。

ここで、1000の魔力を注いで、煉って、固めたら。


 威力20倍『魔力拳』。




 周囲の声が止む。

『魔力拳』は無色透明から明らかな実体を見せ始め、徐々に白か黒かも分からない混沌とした色を見せて来る。

 そして、20倍の濃度になったときに見せたのは、禍々しい白黒の腕。


 圧縮レベルは普段使いの籠手程度。つまりそこまで大きくは無い。


 しかし、これを見ている観衆は見てしまった。

魔力の圧縮系。存在感のレベルの先。


「~~~ッ!!!!」


 それを直前で見てしまったハイドルは、涙を流し、股間を小水で濡らし、全身の力が抜け、かなり老けこんだ様な顔になる。


『これは、まさか【禁術】ですか!?今すぐ中止を!......どういうことですか!!』


 マイク越しに聞こえる動揺の声。

しかし、俺は止まらない。


「『魔力盾』、守ってやれ。」


 ボソッと小さく詠唱し、ハイドルの腹部に通常サイズの『魔力盾』を展開する。

直撃を避け、少しだけ威力を抑えるためだ。


「【無】属性魔法ッ!『魔力拳』!」


 大きく、周囲に聞こえる様に宣言する。


 そして、俺は大きく振りかぶり、『魔力盾』を殴った。


「~~~ッ!!!!!!」


 悲鳴にならない悲鳴を上げ、バコッなのかメコッなのかも分からない音を立て、爆発にも聞こえる轟音に包まれて、ハイドルは壁にめり込んで気絶した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ