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 火を扱っていたらフラワさんにみつかって叱られた。

火を出していたのはハクビだが、それを教えたのは俺なので甘んじて受け入れた。


「とにかく、ひとがちかくにいたり、いえのなかでまほうをつかったりしちゃだめだよ。」

「むー」


 むくれているハクビはなにか他には無いのかと目で訴えてくる。

こうなってしまえば、俺の無属性魔法を見せるしかないか。


「『サイコキネシス』」


 近くに転がっていた小石を三つ、宙に浮かべる。

う、魔力が足りない。


 一瞬で魔力が無くなってしまった。

やはり消耗が激しいのか。


「えー!すごい!いまのどうやったの!」

「むぞくせいまほうっていうんだ。まだれんしゅうしないと。」


 喜んでくれるハクビには申し訳ないが、俺としてはこの結果に満足していない。

本を呼んでいる内にでも練習すれば良かったか。

 んんん。

 常に魔力を消費するように心がけて、回復と消費を繰り返そう。

きっとそのうち、もっと使えるようになる筈だ。


「ノアちゃん。お父さんが帰って来たわよ。」

「あ、はーい。じゃあねハクビちゃん。」

「......ハク」

「え?」


 帰る時間が来てしまったようで、ハクビにさよならをする。

すると、ハクビは俯いてしまい、小さな声で何かを訴えて来た。


「ハクってよべー!もうともだちなんだろ!」

「あ、うん!じゃあねハク!」

「またあそぼーなー!」


 ハクは大きく手を振りながら、庭から俺の事を見送ってくれた。


◇ ◆ ◇

HP:10/10→4/13

筋力:3→5

魔力:4→6

敏捷:1→3

忍耐:2→6×1.2

知力:9→12


【受け身士】忍耐が1.2倍になる


◇ ◆ ◇


 敏捷と幸運以外の数値が上がっている。

何より、称号による1.2倍が美味しかった。

 これだけの恩恵を得られる称号を、何故積極的に得ようとしないのだろうか。

つくづく疑問である。


「おお!良い子にしていたかノア!」

「いえ、ハクにまほうをおしえて、フラワさんにおこられました。」


 ちなみに、俺の滑舌の悪さは「で」や「せん」の音に集中しているようで、それ以外は比較的簡単に喋れたりする。あとは「です」とかだ。


「なに!?ちゃんとごめんなさいはしたか!」

「はい、ハクといっしょにおこられました。」

「そうか。人に迷惑を掛けてはいけないぞ?」

「がんばります。」


 帰路は残り僅かな体力や、魔力を消費しながら帰り、基礎能力の成長を目標にした。


◇◆◇


「あら、おかえりなさい。」

「おう!ただいま!」


 家に帰ると、母は料理を机の上に並べ終え、妹に母乳を与えていた。

こうして見ると赤ん坊というのは非常に無表情で、特に一つの事に集中していると表情すら変えない物だ。

 俺もこんなのだったのだろうか。


「ノアは本当にアスタが大好きねー」

「はい」


 母が茶化すが、俺は真面目に答える。

見た事の無い姉もそうだが、俺はどうやら姉妹を溺愛しているようで、妹の様子が心配で心配で仕方が無い。

 前世では一人っ子だったせいなのか。それとも妹が可愛過ぎるのか。

恐らくはどちらともだろうと思う反面、それをどう表現すれば良いものかと悩んでいたりする。


「そうだ。『サイコキネシス』」


 俺は近場にあった木製の玩具を魔法を使って持ち上げ、妹の顔の周りを旋廻させた。


「あ~?」

「あらまあ、もう魔法が使えるなんて、ノアちゃんはすごいわぁ。」


 アスタはその玩具を手で掴むと、不思議そうな顔で見つめる。

魔法を知らないという表情はそれだけで愛らしく、庇護欲をそそられる。


「あ~?お~!あ~?」


 握った玩具を離すと、それは宙に浮く。

手の届く範囲から動かさなければ、そのままの位置から動かず、落ちない玩具に驚いたり疑問を抱いたりするアスタの顔は見ていて飽きない。


 ただ、魔力が尽きるのはすぐだった。


「うっ。アスタ、すみましぇん(せん)。まりょくがもう......」


 動かなくなった玩具を見て、すこし落ち込むアスタ。

ああ、そんながっかりしないでくれ。そのうち一日中全部の玩具を浮かせても大丈夫なようになるから。


「あう~。」


 そんな俺の意思を汲み取ったのか、アスタは俺の頭をポンポンと叩いて慰めてくれた。

うぅ、天使。


「ほら、遊んでないで晩飯を食おう。せっかく母さんが作ってくれたんだから。」

「はい。そうれしゅ(です)ね。あたたかいうちにたべましょう。」


 こうして、初めて強くなった日は無事に終わった。

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