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ティナは保健室に眠らせ、そのまま授業の続きをする事になった。
予定としては大幅に変更があったことになるだろうが、今回の事で結構収穫もあった。
そこで、クラスの全員で模擬戦大会をすることにした。
「【固有】属性組と【無】属性組の団体戦にしてみようか。各自のチームで出る順番を決めて、その順番同士が戦う。勝ちぬきじゃないから、一人一回ずつな。」
「ノア君も参加ってことで、大将役ね!最後に回すからそれまでに戻ってきて!」
「ああ」
どうやら保健室でサボるという事はばれていたため、気を遣われてしまった。
それはそれで良かったのだが、訓練場から出る時、後ろでボソッと『大将はハクちゃん』と聞こえてしまった。
魔力をできるだけ回復しながら、コンディションを整えるしかないか......
◇◆◇
保健室へ着くと、ティナは目を覚まし、部屋の外の木を見ていた。
別にそこまで重傷じゃないから、自分の死期を悟らずとも良いだろうに。
「君は、ノア君。すまない。今日は色々な事が有り過ぎて、何から謝罪すればいいのか......」
「一つ一つで大丈夫ですよ。俺を【無能】と呼んだのも、実はそこまで傷付いていません。」
「なら、なぜあそこまで私を追い詰めたのだ?あれも策略のうちだったのだろう?」
「マリナ教師のためでしょうか?Sクラスの中で【無能】差別に敏感なのはマリナ教師ですし、皆マリナ教師が大好きですから。」
「そうか。それは申し訳ない事をした。あとでちゃんと謝らないとな。」
そう言って、ティナは俺に充血した目を向け、涙の跡を隠さず見せた。
「その前に、正しく謝りたい。ノア君、君を侮ったこと、【無能】と貶めたことを謝罪する。そして、指導についてもらって、ありがとう。」
ベッドの上で頭を下げる姿は、やはり近衛騎士、様になる。
「ところで、ノア君の名字はオドトンというのだろうか?」
「え?はい、そうですよ。ノア・オドトンです。」
「姉の名は、イキシア・オドトンか?」
「ええ、自慢の姉であなたと同じ近衛騎士団団長ですね。」
それを聞くと、ティナは少し顔を顰め、さらに頭を下げた。
「イキシア殿に昔、君を馬鹿にする様な事を言った事がある。その時は鬼の様に怒り、周りが手を付けられないような状況にまでなった。それ以来、イキシア殿は私と会わなくなった。どうか君の方から、謝意を伝えてほしい。」
「え、嫌ですよ?」
「え!?」
意外だったのか、バッと顔をあげて俺を見つめるティナに、俺もまた驚いた顔を見せる。
「俺、次にあの姉に会ったら、絶対ブッ倒してやるって決めてるんですよ。」
「え......あの冷静なイキシア殿が怒髪を衝く程、愛して止まない弟殿なのに、もしかしてイキシア殿と仲が悪いとか?」
「いえいえ、俺も姉は大好きですよ。しかしながら、それでもやって良い事と悪い事があるわけで、ある一件について、俺もかなり怒る要素があるんですよ。」
思い返すは受験の日。
姉の偽りのステータスを信じてしまい、周囲に悪目立ちをしたあの日。
せめて次に会う頃には一発殴って見せると誓った。
「ということで、姉との仲介は無理なので、自分で言ってください。大丈夫です。言えば聞く姉なので。あと、できれば仲良くしてください。姉は人付き合いが苦手ですので。」
「あ、ああ、善処する。彼女の方が避けなければ良いのだが。」
「お願いしますね。」
姉の友達候補を見つけた俺は、そのまま保健室を後にして、訓練場へと戻ることにした。
そこで行われていた模擬戦大会は、中盤まで進行し、俺とハクの戦いまで、あとすこしと言った所だった。




