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クラスの全員には魔力量の増加を、マリナ教師には魔力の操作を、それぞれ指導した。
そして三日後。
「やった!アレクサンダー君が100に到達したよ!」
「ふっ、ノアの教え方が良かったからだろう。家庭教師でもここまでスパルタじゃなかった......」
冷や汗をかきながらそう言うアレクサンダー君。
流石に魔法に関して右に出る者はいない。
そのため、少し高いハードルを用意した。
「よし、アレクサンダー君。割とペースの速い君のために、他の皆が100に到達するまでの間、1000を目指すという目標を掲げよう。がんばりなさい。」
「ノアッ!?貴様、さては嫌がらせをしているな!?」
「いやいや、アレクサンダー君くらいなら十分できる目標です。」
因みに言うと、ハクも100は超えている。
しかし、それはあくまで【称号】の嵩増しに過ぎず、素の魔力の100を目指してもらっている。
「喰らえ!!『魔力弾』!!」
アレクサンダー君から放たれた『魔力弾』は、教室の端から端まで飛び、俺の顔を捉えた。
が、直撃は未遂に終わり、激しい破裂音を残してどこかへ消えた。
「マリナ教師、これが【無】属性魔法の『クリア』です。対象の魔力よりも更に多い魔力で魔法を覆うことで、布に覆われて消える火の様に綺麗サッパリ消せるのです。」
「こ、これも、【無】属性魔法なの......?なんでもアリじゃない......」
軽く絶望しているマリナ教師だが、もっとすごい魔法を考えていると言ったらどんな表情をするだろう。
少しだけ嗜虐心を煽られたものの、目の前のクラスに集中する。
「ノァ!喰らえ!『デュランダル』!」
黄金の刀身を煌めかせながら、一本の魔剣が一直線に飛んで来る。
あれはヤバい。
咄嗟に魔力を編み込み、ネットのようにして受け止めようとするものの、その刀身に触れた瞬間魔力が霧散する。
しかも、その威力は留まるところを知らず、加速を続けている。
「ハクッ!止めろ!」
「え?」
「――――」
音はしなかった、魔法の練習中、ハクや一部の人間だけは【固有】属性の練習をさせていたのがあだになったのか、ハクの俺への信頼が空回りしたのか、飛んで来た『デュランダル』は俺の右腕を肩から切断すると、黒板へ深々と突き刺さり、隣の教室から悲鳴が聞こえた。
「え、あ、ノァ...?ご、ごめ、ごめん......!」
「俺は大丈夫だから、この剣を仕舞え!」
「あ、わか、った。」
戸惑う様子のハクに強く命令し、俺は肩からの出血を止める。
編み込んだ魔力でチューブの様な物を作り、斬り飛ばされた右腕の血管と肩の血管を繋げる。
動脈と静脈に気をつけながら、ゆっくりと近付ける。
「一旦練習は中止、マリナ教師は隣のクラスに説明に行って。ハクは深呼吸をして落ち付け。他の生徒は目を閉じて見るな。」
『癒善草』ポーションで傷口を漱ぎ、断面をできるだけ綺麗に繋ぎ、魔力の糸で縫いつける。
神経に魔力を通すのは激痛を越えて拷問の様だったが、声をあげずにつなげる。
感覚、微妙。
やや麻痺している様に感じるのは、血の循環が不完全なのか、血を流し過ぎたからなのか。
力は入るが触覚がすこしぴりぴりしている。
「アレクサンダー君、すまないが、保健室へ連れて行ってほしい。」
「お、おう、しかし切断された腕を繋げるとは、なんでもありだな。」
場を和ませようとしてくれたアレクサンダー君には申し訳ないが、なんでもありなのではない。
血が出過ぎたし、すこし精神的にショックを受けた。
まさか、魔剣『ごとき』を受け止め損ねるとは......後でハクやマリナ教師に謝らないと......
アレクサンダー君の肩に手をまわしたと同時に、俺の意識は暗転した。




