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 唐突な話になるが、この俺、ノア・オドトンには二人の姉妹がいる。

一人は妹のアスタ・オドトン、去年生まれて現在一歳。まだ歯も生え揃っていない時期だ。

 母が付きっきりになり、記憶を取り戻す前の俺はそれに対してかなりの嫉妬を抱いていた。


が、今では可愛い妹となり、時折あやしたり抱っこして一緒に遊んでいる。


 そしてもう一人、こちらが大切だ。

こちらは姉のイキシア・オドトン、都市の学校に通っている九つ上の姉だ。

 ここで矛盾が生じる。父は我が家の家計の問題で、俺を学校には通わせられないと言っていたが、その姉は何故学校に行けているのか。父は贔屓などしていない。ただ、払わなくて(・・・・・)良い事情ができたからだ。


 この姉、イキシアは、いわゆる天才という存在で、五つの時点で五つもの魔法を自由に操っていた。

しかも、その内二つは固有属性である。

 その内容までは両親の会話から把握まではできなかったが、幼くして聡明かつ秀才で、特待の学費完全免除で学校に通っているそうだ。

 

 イキシアが八歳の時に学校に入学、現在は五年生となり、来年卒業、そこで上等部に上がるらしいのだが、父いわく、イキシアは入学以来一度しか家に帰ってきていないそうだ。


 どうやら、イキシアがいなくなった途端生まれた()を見て、疎外感を感じてしまったのだろう。

家にもう自分の居場所がなくなったと勘違いをして、帰るに帰れないのではないかと、父は言っていた。



 さて、そこで今の俺の状況を説明しよう。

必死になってハクビから繰り出される木の棒の猛攻を防ぎ続けている。


 どうやら、イキシアの一度の帰郷の際に、ハクビと遊び、剣術を教えたそうだが、それをハクビは偉く気に行ってしまい、遊び相手を探していたのだと言う。

 母親のフラワ・デイジーさんだと怪我をさせてしまうらしく、駄目との事なのだが。


 だからと言って子供()相手はどうかと思う!


 しかも、なまじ攻撃を防ぎきっているせいで、ハクビのテンションはMAXだ。


まるで親の仇かの如く叩いてくる。

 どこからか『面!胴!籠手!』と聞こえてきそうだ。

 面しか打ってはこないのだが。


『称号を獲得。【受け身士】忍耐が1.2倍になります。』


 ん?おお?おおおお!

図らずして、初めてこの世界で称号を手に入れた。


 この方法は随分と良いようだな。



こうして俺は、ハクビが体力切れで倒れるまで捌き切ってみせた。


◇◆◇


「ううー、つかれたー。でもたのしかった!」

「たのしかったねー」

「あしたもやろー!」

「いいよー」


 まだまだ日は高い位置にあるが、ハクビの体力は底をついたようである。

恐らくは最大10の俺よりも多いのだろう。


 やられっぱなしとはいえ、当たっておらず、十分に捌き切った俺の体力はほぼ消耗していなかったものの、半分を切っていた。


「ふう。じゃあつぎはぼくのかんがえたあそびしよー」

「いいよー!」


 まだ息が荒いというのに、乗り気である。

相当遊び相手に飢えていたのだろう。


「まほうをつかってみよう」

「まほー?」


 そう、修行である。

魔法については魔力だとかなんだとかの話は神を通してしか知らないが、ある程度のルールは聞いた。


 まず初めに、魔法は自分の属性の物しか扱えず、他の物はほぼ不可能だと言う。

このときほぼと付け足したのは、神や精霊からの加護を含めないからである。


 次に、魔力は筋力同様、使えば使うだけ多くなる。

消費し過ぎた時には気分が悪くなる程に脱力感が襲うらしいが。


 そして最後に、無属性魔法はある意味最強となる可能性を秘めているとのこと。

これは神との対話で知った無属性魔法の用途についての話だ。


 無属性魔法の基本は『操作』である。

その対象は物理的なものから精神的なものまで様々なのだが、娯楽やサブカルチャーに疎いこの世界の住人がそんな柔軟な発想ができるわけもなく、魔力の消費が異様なだけの無能魔法と成り下がってしまった。


 となれば、俺がなにをするのかは容易に分かる。


「まずはおなかにちからをいれて、しんこきゅうー」

「すーはーすーはー」

「つぎに、てからほのおをだすようそうぞうして」

「ほのおー!」


 ボンッ!と一瞬だけ炎が出て消えた。

その事に驚きと興奮を隠せないハクビは俺の肩を掴んでガシガシし始めた。


「すごいすごい!なにあれー!」

「あれがまほうだよ。つぎはみずをだしてみて。」

「わかったー!......あれ?」


 ハクビの手からは何も出ない。

それに対してムッとしたハクビは手首をトントンし始める。


「でない!」

「じゃあつぎはかぜだねー」

「でたよー!」


 はや

切り替えの早さも習得の早さも並みではない。

しかし、属性が二つにこれだけの習得の早さ、もしかしたらハクビも都市の学校に行ってしまうかもしれない。


「つちはー」

「でない!」

「みたいだねー」


 基本属性である火、水、風、土のうち、火と風が出る様だ。

俺が出来ない事を平然とやってのける。

 まさしくシビれるし憧れるな。


「あはは!すごいすごい!」


 そうしてしばらくの間、ハクビは両手から炎や風を出して遊んでいた。

危ないなぁ。


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