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 1日の授業を終え、寮の部屋に戻ると、そこには燕尾服を着た10人の『ホムンクルス』がいた。

それも、この国の中で最上級の礼の姿勢を取っている。


「おかえりなさいませ。」

「必要最低限の教育が終わりました。」


 先頭に立つ、特徴としては他と変わりない男女が、そう言って頭を下げる。

それに合わせて、他の8人も頭を下げた。


「早いな。素晴らしい。ゴブリンでこれなんだから、もっと上位の魔物ならどんな風になるのか。」

「それは分かりません。しかし、強さと引き換えに、我々の様な知性を得るのはほぼ不可能だと思います。」

「何?」


 意外な事だが、2人の『ホムンクルス』は俺が知っている事よりも多くを知っている。

どこから得た知識なのか、いったいどういう経緯でそんな事を知ったのかは知らないが、少なくともこの8人に対して2人で教育を行い、たった1日で完了させるという神技を披露した所から、疑う必要は無いだろう。


「我々はゴブリンという比較的人間に近い性質の魔物の『核』から生まれました。それ故に、これほどの知性を持っています。しかし、ドラゴンやスライムなど、人からかけ離れれば離れるほど、野生に近く、知性の無い者となるでしょう。」

「そうなると、強さを持っていても、意志疎通や完全な支配に置くことは、マスターでも難しく、場合によっては暴走の危険も御座います。」


 淡々と、言葉に感情を感じないのに、その本音はひしひしと伝わってくる。

これが眷属としての感覚なのか。もしくは、別の何かなのかは、俺にはまだ分からない。


「お前達、俺に捨てられるのが怖いのか?」

「「......ッ!!」」


 俺の言葉に肩を震わせて反応する2人に、すこし微笑ましいものを感じた。

ちょっとくらい、自分の意見を言っても、怒る訳無いのに。


「大丈夫だ。俺はお前達を捨てない。ただ、ずっと傍に置く事もできない。旅に出てもらうつもりだ。」


 元よりそのつもり。

むしろ、優秀な『ホムンクルス』が二人もいるのだから、不安が無くなった。


「今から一人一人に武器を渡す。それに沿った名前もだ。」

「有りがたき幸せ。」

「謹んでお受けします。」


 カタカタと震えていた身体はいつの間にか安らぎ、解れる。

それほど、名前とは大事なモノなのだろう。


「まずは8人から。」


 ◇ ◆ ◇


『ソルド』【剣術】

『シルド』【盾術】

『ジャバル』【槍術】

『アクス』【斧術】

『ハンマー』【鎚術】

『ウィプス』【鞭術】

『アシン』【暗術】

『スタッフ』【杖術】


 ◇ ◆ ◇


 安直だが、そっちの方が良いだろう。

大事なのは、名前を付けたという事実と、あとは識別できるようになったことだ。


「で、二人にだが、これを渡しておく。」


 そう言うと、俺は二人に手袋を渡した。

片手ずつ、あの武器屋で買った籠手に少し細工をしたものだ。


「二人なら、きっと武器無しでも十分に強くなれるだろう。だが、やはり何も贈らないのは忍びないからな。その籠手に名前を書いておいた。」

「ライト」

「レフト」


 最後まで安直だったが、それでも嬉しいらしい。

無表情な二人が、初めて笑みを零した。


「じゃあ、少しの間だが、お別れだ。」

「はい、では行って参ります。」

「マスターが高等部に上がる頃には成果を上げて戻って参ります。」


 丁寧に挨拶をして、窓から出て行く『ホムンクルス』達を見て、次に会うまでにはワープとか変装とかの魔法を覚えておこうと思った俺だった。

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