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「頼む、この通り。」


 現在俺はアレクサンダー君に頭を下げてお願いをしている。

一クラスメイトとして、また模擬戦をしてほしいと。


 思えば、魔法を使う相手と戦ったのは初めてだった。

イキシアは怪我をさせるかもしれないという理由で、俺に魔法を使う事は無かったし、ハクは剣が大好きだ。

 戦った魔物はゴブリンやスライムなどの魔法を使わない様なタイプばかりだったし、ギルマスやその他の知り合いとは戦ったことすら無い。


 つまり、魔法との闘いについて、俺は一切の経験が無いのだ。


盲点だった。

 自分の魔力が100を越えた辺りから、慢心していたのだろう。

 だから、たかが目潰しの『ライト』や、小さな『火球』に負けそうな状況ができてしまったのだろう。


 目を閉じたまま、視界を奪われた時の訓練もしていた。

しかし、結果を見るに明らか、全身を魔力の鎧で覆う様なみっともない、恥も外聞も捨て去った様な事をしなければいけなくなった。


 『火球』で相手の位置を測った気になっていて、自分から防御を突き破ってしまう様なミス。

痛恨のミスとはこういったことを言うのだろう。


 ステータスや【称号】に目を奪われ、一番大切な戦闘力に目を向けていなかった。


「俺は負けたんだが、それは理解しているようだな。」

「あんなのは偶然だ。勝利のうちに入らない。」

「それは普通負けた側の台詞だろうに。」


 アレクサンダー君の言う通り、俺は実質負けたのだ。

拘束されて腕に噛み付く様な、怒りで髪を掴んでしまった様な、そんな恥かしい所を見せた。


 穴があったら入りたい。


「とはいえ、友の頼みだ。頻度は控えめにしてもらうが、できるだけ戦おうぞ。」

「え、友?」

「え?」


 友?トモダチ?え、え?


「い、一緒に戦い苦戦し合った仲ならもう友だろう?だよな?」

「え、ああ、はい。ええ、うん、そう、だね?」

「あ、それと、魔法との戦い方なら、今度我が家へと来ないか?近衛騎士団の鍛錬や模擬戦の機会を設けよう。」

「本当か!?頼む!!」


 思いもよらなかった提案に、驚きつつも食い付く。

こんな機会は滅多にない。まさしく、模擬戦での苦しみを緩和してくれるような一言だった


「あ、ハクは一緒でも構わないか?」

「ああ、あの白いアイツか。構わないだろう。楽しみにしていてくれ。」


 俺達は上機嫌で教室へ戻って行った。


◇◆◇


「凄い腰の入った裏拳だったな!やっぱ身体とか鍛えてんの?」

「それよりもあのバリア、なんて魔法なんだ!?」

「にしてもあのアレクサンダー殿下とよくやり合えたな!!」


 何故か男子に人気が出た。


 なるほど、あんな惨めな俺をからかわないなんて、なんて良いクラスメイトだったんだ。

今まで勘違いしていた俺が恥かしい。


「ノァって見栄っ張りだけど、弱ってるとああいう風になるんだ。あのノァは見てて楽しいけど、なんか違うんだよなー。」

「そうなの?割と感情的になりやすいのね。」

「でもなんだか可愛らしいですね。」

「ギャップを感じますわ。」


 8歳(ガキ)が何を言っているのか。

勿論ハクは良い。それだけ長く一緒にいるから、言って良い事は言って良い。

 だが、他のヤツ。てめーらは駄目だ。


「はーい、席に座ってー。次は詠唱の授業よー。」


 昼食を食べて眠たそうなマリナ教師が教室に登場し、皆が席に戻る。

俺は反省点を頭で復習しながら、イメージトレーニングに励んだ。



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