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『我ら第一神位。』
そう名乗った七人組は、1人1人が丁寧に自己紹介をして、二つ名のようなものまで名乗った。
しかし、そんなものはノアの耳に届くことはなく、ノアの視界には少し曇った空と、地平線しか見えなかった。
「あああああああああああああっっ!!!!!!」
ふと、こみ上げてきた怒りを全力で吐き出し、地面が震える。
「ふざけんなぁ!!!いきなりインフレしすぎだろぉ!!!もっと段階踏んで来いよ!!!くそがぁああああ!!!!」
喉がブチ切れんばかりに叫び、状況の悪さを嘆く。
絶望的な現状に対する文句は、濁流のようにあふれてくる。
「騎位とかいうやつらが来た時点でもう国で対処できないんだよ!!それを王位なんて出てきて!!!もう死にかけの俺に神位だぁあ!!!??ナメるのも大概にしやがれえええ!!!」
満身創痍のボロ雑巾。魔力も体力も一桁のボロ。
そんなノアに対する過剰戦力の塊。
「くそぼけぇ!!『至極天・混沌螺旋砲』!!!」
両手を突き出し、残りの魔力を最大限圧縮した最高火力の魔法を放つ。
地面も大気も根こそぎ消滅させるほどの魔法を行使し、確実にノアの魔力は0になった。
しかし、
「うぉおおお!!?」
「おっ、ロックの腕を奪ったか。すごいな。」
「だが、全魔力を使い切ったようだ。」
「燃費が悪い魔法だ。いや、属性魔法を持っていないんだったか。」
「肉弾戦の方が得意なら、身体強化に魔力を温存するべきだったな。」
「まあ、戦力がちょっと減っちゃったから大きい顔はできないんだけどな。」
全部の魔力を使った成果は、1人の腕を吹っ飛ばしただけ。
その事実にめまいがする。
「じゃあ、そろそろ行くぞ。」
「腕は絶対もらうからな。」
「それダサいぞ。」
七人が同時に仕掛けてくる。
そのうえ、連携が完璧でかつ隙が全くない。
「うぼっ!!がはっ!!」
ものの十秒でボロボロになったノアは、仰向けになって地面に転がる。
欠損は無いが、それでも再起不能なだけのダメージを受けた。
「……」
荒げるだけの呼吸もできないほどの瀕死。
全身が木っ端微塵になった時よりも深刻な状態。
「情けない」
王位達の攻撃が止まり、声が聞こえる。
それは、過去の中でたった一度、完全な『死』を受けた相手。
ただの移動の着地に巻き込まれて圧死させられた。ノアにとって力の憧憬そのもの。
「……あの時の」
「黙れ」
たった一言で言葉が出なくなる。
魔法や特殊な能力などではない。ただの圧力で口が動かなくなった。
「お前の可能性に賭けて。大切な部下を呼び寄せてまで鍛えようとしたのに、てめぇは準備運動第二で挫けやがった。その怠惰。無能。万死に値する。」
倒れたままのノアを見下ろしながら、逆立つ髪を揺らす男はそう言う。
「てめぇはカスだ。なんの価値も無いゴミ。だからできることもある。」
「……?」
「2回目をやる。ここでバッドエンドを迎えたお前の全部をリセットして、次の周を与える。価値ある者や神には使えないものだ。」
2回目、バッドエンド、リセット。
言葉の反芻がノアの中で渦巻く。
ノア・オドトンとしての生をもう一度?これまで築いてきた人生の全てを失って、もう一度最初から。
地獄の旅路が想像できる。
きっと、仲間たちとは会えないだろう。ホムンクルスたちは同じように生まれないだろうし、ハクも、全てがノアの手から消える。
けど、そうしなければただここで死ぬだけだ。
「それは、過去に戻るのか?それとも」
「過去に戻る。環境は一切変わらない。お前の呪いも、一旦こっちで預かっておく。」
「話が長くなったな。あのクソボケに気づかれる前にちゃっちゃと済ませるぞ。」
そう言うと、男は、悪魔は、ノアの胸に手を押し当てる。
「【器】はここに、【力】はそこに、輪廻を拒否する異なる循環を。」
つぶやく声とともに、ノアの意識はどんどんと遠くなる。
「頼むから。お前が終わらせろ。期待してる。」
▽▼▽
夢半ばでしたけど、ノーマルエンドって感じでしたね。
飽きたとか投げ出したわけじゃありませんよ。
そのうち、続きを書きますから。




