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 『魔力銃』はあえて固定化した銃身とクソ長い柄の形状にした。

銃身はそれなりに長く1メートル。

 イムの加護で熱を操り、銃身を極限まで熱し、柄の中で冷やしている弾丸の底を爆発、銃身の中に充満する魔力で推進力を増す。

 操作性が著しく下がるが、それを失っても問題無いくらいの威力を得られる。

また、柄は50センチ、その中には長さ5センチ太さ直径1センチの弾丸が直列に47発、最後尾には圧縮したバネが、先頭には柄と銃身を遮る蓋がある。


「ばぁんばぁん」


 計50丁の『魔力銃』が、その先をエヴァに向ける。

射出される弾丸はとても『ばぁんばぁん』なんて生ぬるい物じゃない。

発砲音という未知の音に、周囲の人間は顔を顰める。

 

 

「『岩盤盾』」


真っ黒で光沢のある盾が出現した。

今までのただの石の塊じゃない。

 明らかに研磨された、鍛えられた武具の類。

滑らかな表面に弾丸は大きく逸れ、当たっても弾かれる。

 しかし、それも耐久が無限と言うわけじゃない。

むしろ、最も突き出た部分に当たれば、衝撃によってヒビも入るだろう。


「『螺旋槍盾』」


 形状の不利を悟ってか、今度は先端の尖った受け流しやすそうな盾ができる。

今度は銀色で、表面にワックスの様なコーティングをしている様に見える。

 んん、アレは風だな。

『層』の様に風を盾に纏わせて弾丸の軌道を逸らすというわけだ。


 工夫の結晶か。


「それも欲しいな、『魔力爆弾』『魔力網』」


 『編み』ほどぎゅうぎゅうにはせず、細長い糸で編んで作った網で魔力の球体を掴んで投げる。

それは放物線に弧を描いてエヴァの元に落ちた瞬間に爆発する。

 エヴァが見せてくれたモノの模倣だが、原理はちと違う。

俺のは無理矢理に圧縮した暴発性の高い魔力を、そのまま解放するわけで、火が付いたり、何かをばら撒く事もしない。

 ただ、衝撃波が響くだけ。


「なっ!?」

「『魔力爆弾』は魔力そのものを撒き散らすから、魔法はその姿を崩してしまう。計画通りだな。」

「......『小分身』」


 エヴァを中心に、俺の『分身』と似て非なる小さなエヴァが複数。目算10体現れる。

サイズを縮小したという小さなではなく、幼いという意味での小さな。


『『獄炎球』』

「『獄炎砲』」


 10発の『獄炎球』という、直径1メートル程の大きな火の玉が、エヴァ本体の射出した『獄炎砲』という、【火】属性の『魔力砲』に吸い込まれる。


 そして完成する、人一人を丸のみできるくらい大きな火柱。


「『極炎魔砲』」


 思考停止。

一秒で全てを考える。

 『結界』はダメだ。蒸される。

『魔力砲』......相殺できない。魔力量の差で押される。

『避ける』。無理。余波だけでも十分な火力になる。

『クリア』も、燃料が魔力なだけだから。消化はできないし、突き破られる可能性が高すぎる。


六角形の『魔力盾』を大量に展開して、前方部分だけをハニカム構造で形成する。

 それを数層に重ねて中に空気の層を作り熱を遮断。

イムの加護での補助も付け加える。

 これで......


「―――ッ!!?」

「ナメられたモノね。」


 その瞬間、俺は幻想を見た。

荒れ狂う世界を、爆発する混沌を


「魔法の極致は、ただ煉った魔力に【属性】を付与して投げ飛ばすだけじゃない。もっと先が、その先が、その更に先がある。貴方は私に勝てないけど、素晴らしい道を指し示してくれた。その感謝を込めて、全力で、貴方の未来を潰す。」


 炎が晴れたそこには、まさしく『混沌』があった。

俺の使う『混沌』とは違う、天と地と海が綺麗に整えられていない場所。


 女王が俺にぶち当てた『宇宙』なんかじゃ目じゃない、

ファンタジー的な『異世界』とは違う『異界』


 一回の瞬きだけで、俺はその場所にいた。


◇◆◇


 体が燃える、崩れる、何かが入ってくる。

気が狂う。自律神経も内分泌腺もイかれる。

 三半規管が爆発する。前頭葉がひっくり返る。


 吐瀉物が撒き散らされる。

血が吹き出る。

 汗が涙が涎が飛び出る。


 動く事もままならない。

意識がどこにあるのかも分からない。


『これぞ魔法の極致、【火】の【神極】属性、【火神】属性』


◇◆◇


 地面に這いつくばる俺をエヴァが見下ろす。

体そのものに異常が無いのは、エヴァが終始【治癒】で治してくれたからだろう。

 だが、今はすこぶる快調なこの体でも、動く気力が無い。


「【基本】→【特殊】→【強化】→【変化】→【創造】→【神】という順番で、魔法は進化し続ける。だけど、【無】属性魔法にはその見地が無い。その事実を持っているからこそ、帝国には【無能】差別がのさばっている。」

「......」

「今見せたのは、【火】の【強化】属性を複数重ねた【変化】属性で、それを囮に【火】の【神】属性で貴方を異界へ落した。私は全ての属性の異界を作れるけれど、【無】属性でそれを行った者はいない。それが【無】属性の限界なの。」


 エヴァは涙を流し、鼻声になりながらそう言う。


「貴方に、色々な事を教えてあげたい。けど、私が教えた生徒の中で、【無】属性の子だけは【変化】にも到達できなかった。」

「......」

「勿論、【強化】まで使えれば、冒険者ならSSまで行けるくらいの過剰な魔法だけど、私を見て育ったあの子はそう思わなかった。」

「......」

「うっ、ううぅ!!」


 意識が遠のく。

目が溶ける。


「君には途方も無い【武術】の才能がある。リカルドを倒して見せられたくらいの、強い力が。だから、悲観しないで、」

「......ナメるな。」

「え?」

「俺を買い被るな。俺に武術の才能なんてあるかよ。魔法と武術とどっこいどっこいだけど、武術の方が長く続けてたから慣れてるだけだ。」

「なんで、」

「あン?もしかして、クソ興味の無い思い出話をしたのは、俺が諦めると思ったからか?ふざけんな。お前が初めてだと思うな。自分よりもクソ強い敵なんて今までいくらでも会ってんだ。ナメんな。そういうのは自分の力に酔いしれた天才君に言ってやれ。」


地面に這いつくばったまま、手に魔力を掻き集める。


「『架空』」


 見た目はただの『魔竜砲』。

先端がドラゴンの顔というだけで、飛びも破壊もせず、なんなら俺もドラゴン形態じゃない。


「これは、ドラゴン?」

「まだ名前が決まって無いんだが、系統名の『架空』だけで良いかなって。俺ネーミングセンスねぇんだ。」

「そ、そうなの。でも、どんなに魔法のレパートリーを増やしても、【変化】には届かない。器用貧乏で終わる――」

「だから、俺をナメんなって言ってんだよ。なんでもてめェらの基準で測るな。俺には才能が無いが、だからって諦めるつもりは毛頭ない。むしろ、てめェの【神】とやらを越えた先の力を得てやるからな。」

「――――ッ、そう、なら、もう手加減はしない。『真なる虚』」

「その宣言がナメてんだよ、『架空デコイ』にも気付かないくらいのな。邪技『蘆苔』」


 駆け抜ける電流と共に、エヴァは意識を失う。

しかし、倒れはせずに、腕から魔法にならなかった魔力が放出される。


 それに叩き潰された俺は、出来あがったでかいクレーターの真ん中で気絶した。




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