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「ま、まさか変身できるようになるなんて、驚きだわ。それとも元からできたことなのかしら。」

「人に化ける事自体は前々からできたが、本物よりもデカかったり、見た目がお粗末だったりで、実用化が難しかった。」

「なら、あなたはどうやって私そっくりになっているの?」


 『層』の応用でエヴァそっくりになった。

今まで以上の変身再現度で、口の動きから、呼吸の際の胸の動き、髪のサラサラ、服の質感も、全て再現している。


「『層』の応用で、薄く筋肉を再現、そこから0.00幾つもの単位で脂肪や皮膚や服を再現した。」

「凄いわね。え、それってどこまで再現しているの?もしかしてその服の中って。」

「そこまでは再現してない。服の中身は毛穴すら無い完全な肌色のマネキン状態だ。」


 が、それでも柔らかさはあるため、あまり自分で自分の体に興奮する様な奇特な趣味に目覚めないよう、素早く『変身』を解く。

 

「『層』っていうのは良いな。『分身』の弱点である見た目の変更不可が克服できた。」

「え、えぇ......なんだか思っていたのとは違ったけれど、良かったのならまあ。」

「てことで『魔力砲』!」


 『層』という概念が、日本人気質で型にハマった俺を一つ砕いた。

形を変えるだけでここまでのパフォーマンスができるようになる。

思えば、体術の基本『回転』による『螺旋』やその延長の『混沌』。

 異世界モノじゃありきたりな『編み』だけじゃない。

 俺は俺の為の新しい属性を手に入れた様なものなんだ。

火や水を【無】属性で再現するように、いくつもの形を作れば良い。

 掘削機をイメージした『螺旋』、絡まったコードの『混沌』と、ミサンガの『編み』にクロワッサンの『層』。

 よく考えれば、様々な物からインスピレーションはいくらでも受け止められた。


「そ、それはなに?筒?」

「これはネオアームストロングサイクリュッ......もういいや、カスタムした『魔力砲』だ。今までのモノと違い砲を作りそこから射出することによってその数を増やす事に成功した。銃口の大きさ的に『螺旋魔力砲』も撃てるが『混沌螺旋砲』は不可。技術系統の『層』と同義化すれば『砲』って所だ。」

「いや、そうではなくて、どれは何をする物なの?」

「魔力を放出してぶっ飛ばすモノ。」


 俺の手から一人立ちした『魔力砲』がエヴァを狙う。

一応ただの『魔力砲』なので貫通性能は低い訳だが、魔力は十分に込めたので、戦車の大砲くらいの威力はあると思う。


「『岩壁』!危ないわね!なにその攻撃!魔力を当てたの!?」

「そうだな。魔力を『装鉱』と仮定して、【属性】を『装備品』とした場合、お前ら魔法使いは『装備品』の武器を使って攻撃するのに対して、俺は『装鉱』をブン投げたり掴んで殴ったりで戦っていると言った所だ。」

「力技にも程があるわ!」

「だから投げ方を工夫してるんだよ。ナックルだったり変化球だったりストレートみたいな感じで、野球知らんけど。」


 粘土遊びみたいなもんだ。

人型にすれば分身になって動かせるし、思いっきりぶつければ痛い。

 それをもっと広げるのは、俺の想像力だ。


「一旦、全力で戦おうぜ。なんとなく掴めそうなビジョンがいっぱいあるんだ。」

「え、ええ、良いわよ。」

「『魔力弾()』」


 今まではただの球体だった『魔力弾』を、ライフル弾の様な先の尖った縦長にする。

それに僅かな回転を加え、弾丸の尻を爆発させる。


 一瞬の加速によって弾丸は真っ直ぐ飛ぶものの、約半分が軌道を逸れて思った通りの場所に行かなかった。


「チッ、一発じゃ完成しないか。銃身(バレル)か?軌道を最適化する部品を用意するべき?だが無駄な装飾は必要ない。マスケット式の見た目で十分か?どうせ発射は自動だし。」

「そ、それってまさか、『銃』?おじい様が開発をしようとして、ついぞ完成しなかった幻の。」

「知るか。今思考錯誤の最中なんだ。『精霊戦士』」

「せい、れい」


 マキを代わりに戦わせる間に、インスピレーションを形にしていく。


『一時的に選手交代なんだが、とりあえずノアセレクションの魔法をぶっ放しておくぜェ。』

「......!?」

『オレはノアとはちょっと違う。ノアはお前に情がある。一言二言喋れば本気が出せなくなるアホと違って、オレは本気で魔法を使うぜェ。殺気の質が違ェんだよ!!』


 両手を合わせて魔力を煉る。

そして作られる二体の分身。

『精霊戦士』が3体。全てマキ。


「霊技『鬼殺し』」

「『魔力砲』」

「『魔力弾』」


 殺傷力を高めた弾幕と直線攻撃、近接技によるバランスの良い布陣。

安置の存在しないシューティングゲームを回避したと思えば、死角から蹴りが飛んで来る。

 全体を大きな水の膜で覆い、それを風で竜巻の様に回す為、『魔力弾』そのものは受け流されるが、質量が桁違いの『魔力砲』は岩や土による防壁で逸らすか受け止めるしかないため、その隙が蹴りを呼ぶ。


 コンビネーション自体は、数で優勢を保っているだけのお粗末な物だが、エヴァがスイッチを切り替える前に突撃したため、意識が戦闘により添えていないのだ。


 胡坐をかいてイメージを形に、自身の周りに無数の魔力の塊を控えさせている俺には、それを互角の戦いだと思っている。

 正確なステータスは分からないが、きっとエヴァの【固有】属性はハク並みの超強力種。

マキにどうにかできるレベルではないと思っている。

 つまり、体勢を立て直したらすぐに逆転される。


「『結界』『魔力弾』」


 弾性を極限まで高め、反発力の上がった結界に、大量の『魔力弾』。

大量の蜂に群がられるよりも圧倒的に危険なエリアが生まれる。

 

「くっ、『ブロック』」


 小さな破片にも見える石を精密に扱い、『魔力弾』を弾こうとするも、直接操作の『魔力弾』はそう簡単に捕えられない。


「霊技『千戸蹴り』」


 衝撃波を飛ばす蹴りを、結界に当て、中に振動を生む。

それに当てられたエヴァは、目や鼻、耳から異常な量の血を流すが、倒れはしない。

 おそらく、自分にかなり高密度のバリアと回復系の魔法をかけている。


「頑丈な女だなァ。」

「もういい、大体完成した。」

「ちぇっ」


 自動操縦だが、地味に制御不能なのが玉に瑕だ。

マキの情緒はイマイチ掴めない。

 

「ごほっ、やっと?早く見せてほしいわ。」

「『魔力銃』」


 柄がやたらと長いマスケット銃の様な魔力の塊が生成される。

その先からはマシンガンの様な小指の先の様な先端が尖った弾丸が連射される。


「楽しもうぜぇ」

「ええ、楽しみましょう。」


 俺達は満面の笑みで見合った。

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