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 エヴァと言う名の女性に、医務室らしき薬品の臭いが充満する部屋に連れて来られた俺は、ベッドの上に寝かせられる。

んん?薬品?


「あなた、マグナイト学園の生徒でしょう?」

「......」


 突然話しかけられたが、まさか起きている事がバレている?


「バレているわよ。私程の魔法の達人になれば、体内の魔力の機微による思考の解析くらいは簡単なの。」

「あ、俺もそれやったことあるわ。」


 そうか、神の神(仮)と戦ったときにやったアレを、常時展開しているということか。


「私はエヴァ・マグナイト。貴方のいたマグナイト学園の元学園長の孫よ。よろしくね。」

「あ、ああ、よろしく。エヴァさんは帝国民じゃないのか?」

「ええ、今はこのアド王国で魔力将軍をやっているわ。」


 そういえば、あの学園長(ジジイ)も持っているチートは『マジックシステム』だったな。

今思えばショボいチートだったが、まさか、孫に遺伝なんてしてないだろうな。


「おじい様はお歳の割に子供っぽい所の多い人だったわ。孫の私を魔法で負かそうとして、返り討ちにあって勘当するくらいね。」

「うわぁ。」

「特別、親類としての情なんてなかったのだけれど、あの人の突然死には驚かされたわ。」

「......」

「死因なんて知らないでしょうけど、あの人もあれで、全部の基礎属性や特殊属性を使う事はとても上手で、魔力なんて数百万もあったのよ。」


 ......あいつのチートはそこまでの性能じゃなかった。

見栄を張った?いや、それならすぐにバレる筈だ。

 なら、なんで俺とアイツでチートの内容が変わった?


「まあ、そんな祖父からの遺伝で、私も基礎属性に特殊属性、強化属性に、【固有】属性まで、幅広い魔法の才能があったの。」

「【無能】の俺に、そんな事を話してどうするつもりです?」

「そう、それよ。君にすごく興味が湧いたわ。今はまだまだ稚拙な魔力操作だけれど、訓練をすればきっと今よりも強くなれるわ。貴方の【無】属性魔法を知りたいの。」


 帝国出身の人間とは思えない発言だ。

あの国では【無】属性と【無能】はイコール。

 魔法属性が無いヤツは生きる価値が無い。

現皇帝がそう定めても止まらないその差別に、あらがえる人間とは思えない。


「貴方の想像力がまるっと反映した【無】属性魔法は、とても素晴らしいモノだったわ!他の属性であそこまでの自由度はあり得ないの!私は【無】属性を使えないから、アナタに私の技術の全てを教えて、あなたの【無】属性魔法を昇華させたい!だから明日の試合は、試合の形をした訓練みたいになるけど、お互い本気でやりましょう!」


 魔法オタクって具合に早口でまくしたてるエヴァは、本気で魔法が好きなようだ。

【無】属性魔法が使えないっていうのが気になるが、恐らくは極度の多様性を得た属性達のせいで、【無】属性への難易度を高めてしまっているのだろう。


 Sクラスの面々よりも、病院の孤児の方が【無】属性への適性が高かったのと同じだろう。


「俺の持つ全部の手札をみせてやる。」

「楽しみにしているわ。その為にも、今は全力で回復に専念してね。」

「......」


 魔力だけなら、一時的にMAXまで戻っている。

厳密には、MAXと同等の魔力を回収できただけなのだが、それでもこれからは不自由しない。

 俺も俺で、あのエヴァという女に魔法をみせつけたい。


 部屋を出て行くエヴァを見ながら、俺は眠りについた。


◇◆◇


 来る翌朝、ついに三回戦、今の所負け無しの俺だが、油断は禁物。

というか普通に負ける気がする。


 対峙するのはエヴァという女性。

豊満な体型と薄紫色の髪と同じく薄紫色の瞳が特徴的な美女だ。

 昨日はそこまで気にしなかったが、こう見るとかなりの魔力量。


『鑑定』で見た結果、ステータス平均は1000万と、他に比べてかなり低い。


が、それを補って余りある、3兆という魔力。

 属性や称号が見えないのが悔しいが、相当な火力の技を使う筈だ。


「まずはお手本を見せましょうか。貴方の魔力効率化系統は三つ『螺旋』『編み』『混沌』。10歳とは思えない緻密な技術だわ。」

「そりゃどうも。」

「というわけで、あと二つくらい新しい技術を手に入れてもらいます。いっぱい攻撃するから、死なない様に。」


 そう言って、エヴァは自身の掌に小さな魔力を溜める。

よく見えないが、【風】の球体の中に【火】を出している。

 それを【土】で更に覆い、一時期やたらと人気が出たあのツルツルの泥団子の様になった玉を手にとって、俺の方へと全力投球した。


 なんとなくやりたいことは分かった。

防ぐ、避けるの行動をとった瞬間、この土の塊が割れ、中の火が酸素を取り込み爆発するのだ。

 予め【風】で窒素やその他気体を抜いて、酸素と二酸化炭素だけにし、燃焼の時間を短くしたのだろう。


「これが『層』。貴方もできる?」

「結界のみならした事はありますが、クロワッサン生地の様に魔法を重ねる事はした事がありませんね。『魔力拳』」


 言われた通りに重ねるも、これでは強度が下がる一方で、メリットが少ない。


「『層』の利点はその脆さにあります。どういう利点なのかは貴方の工夫次第よ。」


 魔力を全身に貼る。

薄く伸ばした表面部分を、全身の感覚とリンクさせる。


 完成した瞬間には、闘技場内に二人目のエヴァが現れていた。


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