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 目的地であるアド王国の王都に到着。

広く特殊な形状をしているその都は、根本的に帝都と違う。


 まず、螺旋状に中心が盛り上がった都は、真ん中の城を中心に綺麗な円を描いてできている。

これはハッキリとした正円に大きな城壁があり、その外には更に街が広がっている。


 そんな状態に離しているのは何故かというのは、単に貴族街と平民街を分けているため。

また、高い場所に城があるのは権威の主張と戦争時に優位性を得るため。

 防衛線の場合、進行している相手を良く見えるようにするためらしい。


「と、ここまではテンプレだな。」


 アド王国はいわゆる、先進国にあたる。

『装備品』による恩恵は多いが、もっと大きな要素はその社会性。

 貧富の差が激しい公国、無能差別の帝国、人間至上主義の北国と違い、この国は圧倒的実力主義。

それも、各ステータスにそれぞれ部門があり、それらを統括する七人の将軍がいるという。

 つまり、長所を自由に伸ばし、それを妨げられないということである上、努力が実を結ぶという体制をとっているわけだ。


 一部の人間からは嫌われ、一部の人間がよろこび、それ以外は普通に暮らせる。

また、他者を嫉妬し、貶めようとする事は絶対的な重罪。

 他者を殺す、物を盗む、その他どんな犯罪よりも、濡れ衣を着せる事や、足を引っ張る事が最も重い罪となる。

 この体制を築いたのは、現国王で在りながら、初代から一切代わり無きただ一人の王とのこと。

種族:エルフ、性別:女、名前:クリム・ストック・アド・ゾーン、通称:大賢者

 年齢、驚愕の629歳。ステータス平均は20兆。冒険者ランクEX


 これまでの中でぶっちぎりの一位。

逆立ちしても勝てねェし、これならどんな人数に謀反を起こされても敵う。

 さて、そんな彼女と謁見するのは第二皇女。


 今回は帝国と王国の友好のための会談らしいが、ちょっと不安になってきたな。


「もう!なんでこんなにグルグルしてるのよ!無駄に長いじゃない!」


 この第二皇女(アホ)が何かやらかすんじゃないかと思ってしまってしかたない。


あと、友好つってんのに、なんで学生ばっかなんだよ。アホか。

 普通は貴族の重役とか、もっと大事な奴だろ。

 第二皇女って言っても、ガキンチョも良い所なんだぞ。。


 仮に相手の女王がキレたら、ハクとカム、ユーリだけでも帝国に転移させて逃がすか。


「止まれ!通行許可を見させてもらう。」

「何よ!私は第二皇女よ!見たら分かるでしょ!」


 こんな具合をかれこれ三回もしている。

最初の方はまだまだ末端の兵士だったため、それこそペコペコと対応していたが、王城に近付けば、そこそこ位の高い騎士が門番をしているため、第二皇女の『ワタシハダイニコウジョヨ!』も通じなくなってきている。


 とはいえ、関所はここで最後らしいので、手続きをして中に入る。


が、一歩入って硬直した。


「?どうしたの、ノァ。」

「もう疲れたの?情けないわね!」

「おんぶ、しようか?」


 第二皇女や先輩方だけじゃない、ハクもカムも気付いていない。

七の殺気が俺に向かって一身に降り注いでいる。


 ここは王城周辺、常に140の精鋭騎士とそれを統括する七人の将軍が滞在しているエリアらしいが、まさかまさか、ここまで愉快なお出迎えをしてくれるとは。


 とはいえ、反射的に殺気返しなんてしてはいけない。

ここは平然とした態度で待つ待つ待つ。


「大丈夫だ。行こう。」


 姿だけでも確認しておくべきか迷ったが、ここは『未熟過ぎて気付かなかった』体で行こう。


◇◆◇


「余は、帝国との同盟を解消しようと思っている。」


 豪華絢爛な装飾とは無縁の、質素でありながら気品溢れる謁見の間。

天幕を隔てた先に見える薄らとした人影の女王を、俺達は片膝をつきながら最大限の礼で女王への敬意を表し、言葉を待っていた。


 しかし、女王から出てきたのは思ってもみなかった言葉。


「余は思う、如何なる実力者であろうと【無】属性というだけで排し貶める者の国と同盟を組む理由があるのかと。であれば、他の二カ国諸共攻め滅ぼし、我が国の一部とすることこそが、真なる和平となるのではないのか。」

「ま、待ってください!何故そのような!」

「小娘、余は寛大だが、話を遮られるのは好まぬ。対等に話したくば、現皇帝でも連れて来い。」

「うっ......!」


 第二皇女はモノ言いだけでなく、その眼光に怯んだ。

それもそのはず、この空間は、先程の騎士街が霞む程の圧力で充満しているからだ。

 いつもなら余裕の表情で佇んでいるカムも、元気ににへらと笑っているハクも、苦しそうな顔で下を向いていた。


「決定打は貴様なのだぞ、小娘。其方一行の旅を余の兵を通じて見てきたが、おぬしは大きく旅に貢献していたそこな男子(おのこ)に、口を開けば無能無能と、罵詈雑言の限りを尽くしていたな。」


 天幕越しではあるが、その声色から、女王が第二皇女を責めている事が察せられた。


「属性や種族などというのは所詮、ただの強さの方向性に過ぎぬ。そんな事も理解できないお主らにはほとほと愛想が尽きた。故に、貴様は一人で帰れ、小娘。なに、護衛はつける。が、そこな子供らはこの王国で預かるとしよう。」


 あまりに唐突な事で、俺達は動けなくなる。


つまり、俺達はこの王国に囚われることになったということか。

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