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感想で「この主人公のどこが効率厨なんだ?」って話をよく言われる(2回)んですけど、ふと考えたらゲーム1周目で最高効率プレイを叩き出せる人っているんですかね。

攻略本とかウィキとか駆使すればできるとは思いますけど、この主人公はそんなの持ってないですし。

まぁ自分でもなんとなく疑問に思って、だけど二百十数話まで書いてる内容を変更とかできないし、だからサブタイトルだけ変えました。

あと、主人公の色々な「ああすればよかった。こうしたかった」という話は結構実体験ゲームなので、例えばもしこの世界の2周目をプレイするなら、きっと今まで以上の効率プレイを見せてくれますよ。

そういう点では死に戻りとかリスタート系の能力の方が案外適性あったんじゃないかなって……w


以上、何も報告せずにサブタイを変えた言い訳でした。

 ハクとカムの戦いは静かに始まった。

双剣での攻撃は鞭によって弾き倒され、一定距離以上を近付けなくなっている。


「しゃあ!!」

「きゃっ」


 埒が明かないと双剣を投擲し、両手に『黄金剣』と『綴剣』を取り出す。

『魔力拳』を取り出して『没剣』を大量に、一本だけ違うのが『生命剣ハートフル』とかいう新剣か。


「手数だけが戦法じゃない。けど、これは面倒。」

「隙あぁぁりぃぃぃいい!!」


 投げられた『黄金剣』が鞭の隙間を縫ってカムに迫る。

しかし、ギリギリで張られた『魔力障壁』にブッ刺さる。

うわぁ、俺のバリアだと斬られて消えるのに。


「トドメェェ!!」


 気合の入った一太刀によって、カムの『魔力障壁』は真っ二つに割れた。


◇◆◇


 勝負は大きく動いた。

一方的となったハクの魔剣による攻撃に翻弄されるカムは、少しずつその体に傷を増やしていき、徐々に疲労が溜まっているのか動きが鈍くなっていた。

 そして、ハクの一太刀がカムの鞭を切り裂き、ぶつ切りにしてしまった。

カムの手にもう武器は無い。

 魔力によるバリアも、最初の『魔力障壁』程の厚さを創り出すことはできないらしい。

 攻勢に転ずることができないカムは、ハクの『魔力拳』が顔面にヒットし、闘技場の内壁に衝突する。


パンッ


「うっ、ぎゃあああ!!?」


 突如、ハクの悲鳴が聞こえる。

目を凝らすと、ハクの腕が反対方向に向いている。

 つまり、肘関節を逆に折られたということ。


パンッ


 今度は、折れた腕と反対の腕が折れた。


「なんっ、でぇぇええ!!」


パンッ


 ハクの体が地面に落ちる。

脚の骨、大腿骨の部分がへし折れている。

 それも両脚だ。


 いったい、これはどういうことなのか。


「『クリア』」

「ああんっ。ノアの野暮。」


 魔力による膜で強制的に属性部分を濾過し、カムの魔法を消し飛ばす。

それによって、現在の状況がハッキリと伝わる状態が出来あがった。


『これは......?』

「戦いの跡が無くなった!?」

「内壁も無事だと!?」

「どういう事ですの!?」


「カムの【固有】属性は【睡眠】と【幻覚】。それらをかけ合わせる事によって強力な催眠を実現した。ってところか?」

「凡そ正解だけど、私はそれに三つ目の属性【悦楽】と、水の派生【安息】を合わせてハクに病みつきに成りそうな一方的な戦いを演出させた。」

「その余波に当てられた俺達はその景色を見ていたわけだが、カム本人は現実で好き勝手できたから、無防備な状態のハクの手足を寝技や関節技で折っていったって所だ。」


 ちなみに、俺は『魔力繭』に包まっていたから多少の違和感を感じられたが、この厚さの魔力を通過できる程の魔法とは感服した。


「やろうと思えば、二人が結婚して幸せな家庭を作ったのに、ノアが浮気三昧の酒浸りになって家庭内暴力と子供達への犯罪教唆でハクに斬り殺されるって夢も見せられたよ。」

「絶対にやめてくれよ!?」


 そんな最悪な事、俺ら第三者を含めて見られたくないし、仮に対象がハクだけだったとしても御免だ。

というか、本当にそんな内容じゃないよな?俺達が見ていたのと別の夢をハクが見ていたなんて事は無いよな?


「しかし、ハクもそれなりの魔法用防御は行っていた筈だ。魔剣の『生命剣』なんて、ガッツリサポート魔剣だっただろうし、それもすり抜けて幻覚を通せたのはなんでだ?」

「最初の『魔力障壁』をぶった切られた時、渾身の【睡眠】を当てたから。『魔力障壁』の中に魔力を充満させてたから、かなりの濃度だったよ。それに、罠を警戒させないよう、鞭で魔力を少しずつ送って、興奮状態にさせていたからね。」


 カムは淡々と語るが、そう簡単なことではない。

ハクは剣の達人だ。機微な空気の反応を見抜く。魔力が漂っているのならきっとすぐ気付く。

 まして、剣を振り回しているんだ。それだけ空気に触れる回数は増え、薄くなった魔力は更に希薄になり、空気の流れから逸らしたら違和感は拭えない。

 いったいどんな技術を使ったのか。あとで聞いてみるか。


「す、すっごい。あのハクがこんなにあっさりやられるなんて。」

『口を慎め第二皇女。僅差だった。相性と経験による勝敗だったが、ハクが勝つルートも無数にあった。『あっさり』なんて言い方をするんじゃねェ。』

「うっ、何よ!私に向かってそんな事を言って良いと思っているの!」

『ああ良いぜ、オレは精霊だ。人間の序列には関わりなく、オレに指図できるのは神だけだからなァ!!』

「うぅ!!」


 マキと第二皇女がにらみ合う。

『魔力繭』で寝ている俺では、第二皇女の失言を責めることができないので、有り難い援護射撃といったところだ。


「ノァ......」

「ハク、今ノアは寝ている。慰めてほしいなら後にするべき。」

「うぅぅう!!ああああああ!!!」


 ハクにとって、他人に負けるというのは悔しいだけじゃない。

今のハクはきっと、全身に裁縫針がブッ刺さり、腹に氷を詰められながら全身を火であぶられている様な感情の大渋滞に苛まれているだろう。

 その感情を表した様に、全身から様々な魔剣の剣先がはみ出ている。

全身を覆う魔力は乱れに乱れ、手に持った魔剣の柄がビキビキとヒビを広げていった。


「仕方ない、今回だけだぞ。」


 『魔力繭』に触れているハクの手を中に沈め、そのまま全身を『魔力繭』の中に引き摺り込む。

外に声は届かない。泣きじゃくるハクの頭を掴み、俺の胸板に押し付ける。

 ハクはその位置的に腰に手を回し、俺を半身不随にでもするかの如き強さの抱き付きでホールドアップしてきた。


「俺に負けるのは良いのに、カムに負けるのは嫌なのか?」

「ノァの強さが好き。だから私が負けてもノァが勝つなら良い。でも、他人に負けるのはヤダ。」

「ああ、その気持ちは俺も同じだ。」


 血反吐吐きそうになるくらい悔しいという感情を、俺はハクに持てない。

それはひとえに......


「御命頂戴!」

「空気読めやボケェ!!破技『千戸欠き』ィィィ!!」


 爆発するような衝撃波を起こし、空気を読まずに第二皇女に襲い掛かってきた刺客をぶん殴る。

死にはしないが当分は二日酔いよりもキツい気分の悪さを味わってもらう。

 幻覚でカムが突き刺さった内壁に叩き付けた。


「やはりこのガキは手練れか。貴様、このオレ様と対決しろ!」


 ぶん殴った刺客とは別の、俺に話しかけるアホを見る。

筋骨隆々の大男だが、全身から滲みでる悪意と敵意。

 荒々しい金髪を逆立てたその男は吊りあがった目で闘技場の縁の上から俺を見降ろした。

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