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 アド王国に到着した。

道中襲ってきた刺客は3組。

 日中にも襲撃があったため、他のメンバーも暗殺の危険を理解して警戒を強めていた。

本格的な目的地である王都を目指して、街々の中を移動すること半日。徐々に暗殺者の間隔が狭まって来ている様に感じる。


「なんで私が暗殺者に狙われてるのに、こんな呑気に寝てんのよ!帰ったらお父様に言い付けるわ!」

「ノアさんが眠ってしまう理由が分かった気がします。」


 ユーリが耳を塞ぎながら、甲高い第二皇女の金切り声に苦言を呈する。

現在のユーリも、広義的には【無】属性使い。出会ったその日から罵詈雑言を浴びせられている。

というか、ユーリも俺も属性の話なんてしてないんだけどな。不思議なもんだ。

 察するに、第二皇女は【固有】属性持ちだ。【鑑定】とか【開示】とかか?


とはいえ、ハクに次ぐ懐き対象を確保できたのは僥倖だ。

 ユーリの心労が心配だが、禿げなければ胃に穴が空いても爪が割れても頭痛や腹痛に見舞われても有る程度は抑えられる。

 治療すれば何をしても良い訳じゃないが、ユーリも自由意思の元来た筈だ、我慢してもらう。


「第一お父様も酷いわ!私はもっとカッコいいイケメンの【固有】属性に囲まれたかったのに!無能が二人と、【固有】属性持ちが三人だけじゃない!むきー!」


 悪かったなイケメンじゃなくて。

なんや、ヴィルとかラルフとかが良かったんか。

 まあ良い、俺の顔については何も言うまい。ハクと隣歩きになったら余裕で見劣りするが、悪くは無い筈だ。


「もう!起きなさいよ!」


 ガンッと俺の寝ている『魔力繭』を蹴る第二皇女だが、その足にすらダメージを与えない程に『魔力繭』は厚く柔らかい。しかし、どうやらハクの堪忍袋はパイ生地の様に薄く、プレパラートよりも脆いらしい。


「皇女殿下。あまり我儘を仰られると、ありのままこの事をあなたの父上に話す必要があります。」

「うぐっ」


 流石に、無茶苦茶な事を言っている自覚はあったのか、第二皇女は口をつぐみ、それ以上は何も言わなかった。

 どうやら、父親に言い付けるというのはただの脅し文句だったらしい。

 それに、ハクはその正規の近衛騎士にも勝てるという実力から、皇族の覚えが良い。実際、叙勲の話もあるらしいし、第一近衛騎士団団長とも戦った事があるとかなんとか。

 あの転生者の旧学園長も第一近衛騎士団団長と戦って勝った逸話があるとか聞くけど、そうは思えないし普通に年齢差がありすぎる。


「そういえばカムに改めて聞きたかったんだけど、ノァとはどんな関係なんだ?」

「結婚を誓い合った仲。」

「ノァ......?」

『ちげェなァ。ノアも断ってンだ。だが、コイツが聞きやしねェ。恋人が居てもいい、結婚出来ればそれで良いってなァ。』


 『精霊戦士』を通して、マキがハクにそう説明する。

自分より強い者を求めて弟子を取っていたこと、自分の試練を俺が見事乗り越えた事、それらの経緯を掻い摘んで教えた。


「ふーん。でもさ、カムってつまりノァより弱いんだ。ってことは、ノァと互角の私よりも弱いってことにならない?釣り合わないんじゃないの?」

「へぇ、じゃあやってみる?」

「ルールは?」

「魔法有り、武器有り、殺傷無し。これくらいで良いんじゃない。」

「乗った。皇女殿下。見学をなさっていてください。先輩達はそれを守ってください。」

「流石に私用すぎないか?」

「まあ良いじゃありませんか。皇女殿下も乗り気の様です。」

「少し頭痛がしてきた。マキ君、ノア君を起こす準備をしておいてほしい。」


 二人が街中にある冒険者ギルドで闘技場を借りる用意をし、今日中にやるべき準備を全て終わらせてしまった。

 俺達はその間第二皇女の護衛を続行、適当に買い食いや皇女殿下のショッピングを楽しみつつ、当の冒険者ギルドへと向かった。


◇◆◇


 対峙する両雄......いや、両雄ではないな、両者か。

両者が見合い、互いの得物を持つ。

 ハクは既に出している『双剣イフォテント』をシャンシャンとすり合わせている。

対してカムはそう好戦的な様子を見せず、鞭と盾を脇に挟んで髪の毛を弄っていた。


『賭けようぜ、どっちが勝つかよォ』

「僕は反対だな。金銭での賭博は学園の校則として禁止されている。」

「私は賛成です。この場で他者の実力を推し量る技量を身につける事ができるかもしれません。」

「私は反対だ。ちなみにベルナリンド嬢、そのような技量は一朝一夕で身に着く物ではない。」

「私、ハクが勝つのに金貨10枚を賭けるわ!」

『あ~あ。』


 完全に賭けのバランスを崩す、最悪の一言だった。

とは言え、賭けた以上それは無視できず、全員が大金を賭ける羽目になってしまった。

 結果、ハクが勝てばマキと第二皇女、ハイドル先輩にそれぞれ14枚、カムが勝てばロドリゲス先輩とベルナリンド先輩がそれぞれ25枚の金貨を手に入れられる。

 が、カムに賭けた二人はそこまで明るい表情をできなかった。

それもそうだ。二人だけじゃない、ハクを含めた五人はカムの実力を知らない。

 二人はあくまでも賭けを成立させ、その倍率が拮抗しているかのように見せるためにカムに賭けただけ、本音で言えばハクに賭けたいし、これがただの決闘賭博だったなら全員がハクに賭け、良い感じに儲けられていたと、二人はそう思って暗い表情をしている。

 なんせ、金貨十枚は貴族家の人間でもそれなりの大金。

それもあくまでただの子供である四人にとってはかなりの大金。


 二人はあまりのショックに溜め息が止まらない。


「早期決着になりそうだ。」

「あれ?ノアさん......?」

「ぐー」

「寝たフリ、ですか?」

「......大丈夫さ。」


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