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 4日目・夜。

予定よりも何倍も早くアド王国へと近付いた。

 国境までならあと半日で到着する。

が、敵さん方はせっかちらしい。


 現在、ハク、第二皇女殿下、ベルナリンド先輩、ロドリゲス先輩、ハイドル先輩はぐっすり眠っている。

『魔力繭』の中で、日中馬車に揺られて疲れた五人は、夜中、振動も無ければ息苦しさも肌寒さも無い最適空間での睡眠に一発でやられ、多分何をしようと10時間睡眠を取らない限りは起きないだろう。


「覚悟!」

「覚悟って本当に言う奴いるんだな『庚』」


 攻撃を受け流し地面に刺客の頭を突き立てる。

多分背骨がへし折れたからもう立てない。

 魔力を周囲に張り巡らせる事がクセになっているから、ちゃんと気配とかを察知できるか不安だったが、問題無いみたいだな。

 

「喰らえ!『火炎弾』!」

「連技『髑髏蛇腹』」


 刺客達は全部で10人程度。

少数精鋭というやつで間違いなく、流石に大軍を仕向けるわけにはいかないか。


「『氷結砲』」

「『火炎竜巻』」

「『土竜波』」


「ええい面倒くさい。『千戸破り』」


 多数の刺客を一気に破るため、周囲に衝撃波を飛ばす技を放つ。

パァンと風船が破裂するような音と共に、五本の真空波が空を切る。

 ステータスによる身体強化で技そのものが進化した気がするな。


 真空波は刺客の体を叩き内臓を揺らす。

それによって尋常ではない脳震盪と胃液の逆流を招き、卒倒させた。


「最弱技が意外な進化をしたもんだ。」

「隙有......!」

「隙があるなら黙って叩けやゴルァ!!」

「ぐげ!?」


 技でも無い裏拳で力任せにブン殴る。

これで5人か。

 ん?反応が一人分増えた。

 それに気付いた瞬間、目の前に5人の人間が落ちてきた。

全員、外傷が無いものの深く意識を飛ばしているのか、色々垂れ流しになっているが。


「心配だからついて来たけど、気付いてたの?」

「走る馬車に徒歩で追い付くなよ。ユーリはどうした?」

「背中で寝てる。気絶かな?」


 ついて来たと言い切った女。

猫の様な耳と尻尾。気だるそうな瞳と放つ異様なオーラ。


 その背には、俺が感じ取った気配の正体。

数日に及ぶ追跡の結果、睡眠ではなく気絶という形で休息を取る事にした可哀想なヤツ。


 カムとユーリ。

学園に居候させている二人が、この護衛について来た。


「皇女の護衛に5人の学生じゃ色々足りないし、多分ノアは一人で無茶苦茶な方法を取る。だから手助けに来たんだけど。」

「そりゃ助かる。」

「あと、ユーリに眠らせてあげてほしい。ここ数日間でかなり消耗している。」

「『魔力繭』くらいカムでも使えるだろ。」

「【固有】属性の染み込んだ私の魔力はユーリに合わない。ゲロ吐かれた。」


 うわぁ、聞きたくなかった。

属性が合わないとそんな事になるの?【無】属性で良かったぁ。

 というか、女の子がゲロなんて言うんじゃありません。


「まあ夜なら良い感じに寝られるだろ『魔力繭』」


 ユーリは寝かせ、カムと二人で御者席に座る。

ススッと体を近付けられて肩が触れる。


「ここ最近は子供達の相手で構ってくれなかったから暇だった。」

「そうか。それはすまなかった。」


 カムは強者を求めて弟子をとっては無茶苦茶な試練を与えていた。

その間に死んだ者もいるだろう。

 だが、そんなヤバい女のお陰で俺が更に進化できたというのも事実。

 感謝はしているが、どうしても恋愛対象としては見られない。

相手は俺と結婚する気満々らしいが、俺まだ10歳ぞ?


「雑談でもするか。そうだな、アド王国には両親がいるのか?」

「いや、両親はいない。」


 はっ!これはまさか、両親は既に亡くなっているとか、そういうコトか?

デリカシーの無い質問をしてしまったのか?


「私の母は私と同じで強い者を求めた。ただ、私と違って節操が無かった。強い者との子を大量に作った。」

「え......?」

「私には数えているだけでも20人以上の兄弟がいる。」

「にじゅっ!?」

「父も生きてはいるけど、基本的には旅に出ていて家にいない。」


 わーお。

ワイルドな家系だな。


「母も父もノアに会わせたくない。」

「反抗期なのか?」

「母にノアが会ったら襲われる。性的に」

「せいっ......!」

「父にノアが会ったら襲われる。物理的に」

「そっちは会ってみたいな。全力でぶつかりたいが、猫系の獣人なのか?」

「父が夢獅子族。母は人間。」


 性豪の母、人間なのかよ。

カムと義父義娘の関係にはなりたくないので会わないよう気をつけよう。


「カムの兄弟達には会ってみたいな。きっとカムより強いんだろ?」

「何故、そう思う?」

「カムは凄く強い。けど、自分の事をサポート特化と言って憚らない。その基準が分からなかったけど、多分兄弟達が強いからだ。」

「女の子で、私よりも強い子がいるけど、その子と会っても私を見捨てないでいてくれる?」


 初めて聞いた気がするカムの弱音。

そんなギャップに胸が締め付けられる。

 カムは基本的に表情を崩さない。寝惚け眼なのか常に半開きの目に、ピクリともしない耳と尻尾。

結婚結婚と言っている割には、なんのアプローチもして来ない。

 そんなカムが今、目を潤ませて寂しげに憂いている。


「カム、今はこれで我慢してほしい。」

「あっ......」


 俺はカムに顔を近づけて......


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アウト!不純異性交遊!
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