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「あのねーハク!私が大きくなったら近衛騎士に取り立ててあげる!」

「わーいありがとうございます。チェックメイトです」

「えっちょっと待って!?や、やり直し!」

「これで123回目の勝利ですね。続けますか?」

「つ、次こそは勝って見せるんだから!」


 和気藹藹と盤上遊戯(チェス)を楽しんでいる二人を見上げている。

何故、そんな状態かと言うと、俺は俺を中心に『魔力繭』を展開し寝ている。二人はそれを机代わりにしてチェスに勤しんでいるため、それを見上げる形になっているわけだ。


「この無能はなんでこんなにぐうたらなの?四人に寄生してるんでしょ?ならせめてやる気くらい見せないとダメなんじゃないの?」

「ノアさんは夜間の警護を全て担ってくれると仰いましたので、我々にとっても有り難いことです。」

「ノアさんには『分身』という特殊な魔法が使えますから、複数人分の役割ができるのですよ。」

「それに、我々も夜の間は眠りますので、彼を咎めることはできません。」


 良き良き、分かってるじゃねェか。

実を言うと、このお姫様と話したくない&早く護衛を終わらせたいというのが一番の理由なんだが、好意的に解釈されるのは良いぞ。もっとやれー。


『このお姫様には悪意が無ェ。無邪気なガキのソレだ。常識を疑うヤツがいない様に、このお姫様ァ家庭教師とやらの話を鵜呑みにしてるだけだ。』

(分かってる。こんなガキの罵倒程度でキレる程、俺もガキじゃねェ。)

『とか言う割にはハクにボコボコに勝たせたり、顔を合わせなかったりと嫌がってるじゃねェか。』

(理性と感情は別モノだ。不快であることには変わりねェんだから、聞かないのに越したことは無い。)


 ストレスってのは感じない様にすることができない。

精神がぶっ壊れた狂人ならそれもできるかもしれないが、俺はそうじゃない。

 ストレス、ストレスねェ。

懐かしい感覚だが、快くは無い。


「やはり静かだな。行商人一人見かけない。」

「偶然なら良い。だが、今の時期は頻繁に行き来する筈の馬車が一台も無いのはおかしい。」

「ノアさんの予想が当たってしまうには早いと思いますが。」

「ノァは運が悪い。基本的に確率の中から良いモノを引く事ができない。例え9割アタリが入っているくじを引いても、確実にハズレを引ける。」

「じゃ、じゃあ、もし私が襲われたら、この無能のせいってこと!?」

「それは違う。運なんていうのはステータスの数値のみの無意味な数字だ。現実にそれが反映されるという例は今までに無い。」


 ロドリゲス先輩がそう言うが、事実として俺は現実に影響を及ぼす程に運が悪い。

幸運は500と一般的に見たらかなり高いのだが、それが俺には適用されてない。

 これは前世からの引き継ぎなので、なんとも言えないのだが。


「不安だわ!ハク守ってね!」

「はいはい、京に一つでもノァが死んだら私が守っても死ぬけど、できるだけ頑張るよー。」

「皇女殿下に対する反応がおざなり過ぎるのは本当に心配ですわ。」

「ハク君ならではの対応だろうね。他の人間ならどれだけの実力者でも不可能だ。」

「流石はハクさんだ。」


 なんか、ザ・ラノベ系主人公に対する好意的解釈を一身にハクが受けている様な気がする。

いや、嫌われ系主人公枠を俺が取っていると解釈しよう。

 こう、ほら、最近はやってんじゃん。追放とか無能とかハズレとか。

そういうのなんだよきっと。


「!?魔物!」

「きゃっ、怖いよハク!」

「ちょっ、皇女殿下。邪魔なんですけど。」


 抱きついた皇女殿下を落さないように周囲を警戒するハクと、馬車を取り囲んだ複数の魔物。

見た目は狼。体色は白と黒の2種類で、黒の方が多く、白は3体しかいない。 

 感覚での強さ判定であれば、多分ステータス平均が4千。

筋力よりも魔力の方が高く、忍耐より敏捷の方が高いみたいだ。


 連携力にもよるが、ロドリゲス先輩とハイドル先輩では、少し不利だろう。


「『ボルケニ・ボム』」


 とそこまでの状況を判断したうえで、ベルナリンド先輩が広範囲に火を放つ魔法を展開した。

塊の溶岩の様な見た目をしたその魔法は、馬車から一定距離を離れると爆発し、周囲とその狼達を巻き込んで大炎上。


「すごいすごーい!!これがベルナリンドの魔法なの!?」

「はい、私の属性は【爆発】と【溶岩】、そして【火】【土】【風】ですわ。」

「すごーい!アレクサンダーなんて3つしか使えないのに!」


 あれく、さんだー?

この皇女殿下、まさか肉親とは言え、兄に対して呼び捨てで、しかも小馬鹿にした様な事を言ったのか?

 普通なら絶対にありえない。

 いや、なんだこの違和感は。

俺の考え過ぎか?

 学園長は家庭教師の影響と言った。つまり、この呼び捨ても家庭教師の影響。

 皇族の家庭教師となれるのなら、随分優秀な人材なんだろう。

しかし、だからといって、兄を呼び捨てにしても良いなんて教育をするだろうか。

 ラスティーナ第二皇女は皇族として、皇帝になれる継承権を持っていない。

帝国は女系皇族ではない。それは家系図を見ずとも、歴史を辿ればいくつでも根拠を得る事ができる。


 となれば、未来で兄を見下せる立場になれる事を考慮した教育をしている?

それは、最悪の想定だが、『謀反』


 家庭教師は反皇帝派の人間で、内部から反逆の旗本に成り得る人間を育て上げようとしている。


......

......

寝るか。

 

 今のうちにそれらが重要となることはないだろうし、もっと最悪な想定をしている訳だが、それも阻止するつもりだ。

 最も、この護衛が完了すれば、それも自然に果たされる。


俺は、『この時の選択を後の俺は後悔するのだった』と言うのが嫌いだからな。

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