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戦闘開始から三十分、未だに両者無傷。
しかし、三人の魔力は底を突いていた。
顔は無いのにニチャリと笑うオーガゴッドは、ゆったりと手を前方に向ける。
収縮する魔力は10万。
空間が歪んで見える程の高密度だが、疲労が募り集中力が切れている三人はそれに気付けない。
「『NNNNN』」
一極集中すれば一撃で細胞の一片も残さず消し飛ばせる威力の『魔力砲』である筈なのに、それを態々拡散させる。
急所に当たらず、手足等の末端部や、内臓を傷付けない様な細かい箇所を貫通させる。
「ぐあっ!」
「ああ!!」
「ぐぅううう!」
更に動けなくなった三人を嘲るオーガゴッド。
......
......
......
「チッ、ダメだな。根性足り手ねェんじゃねェか?」
「さ、流石に無茶ッス。」
「ノアくん、アレは無理だ。」
「マジで神なんじゃねえか?」
ピクッ
カチンと来た。
「神だァ?んなわけねェだろ。目ェかっぽじって良く見てろ。」
『精霊戦士』を発動し、マキで分身を出現させる。
「ってことで、精霊の力を見せたまえマキ。」
「人使いが荒いってェレベルじゃねェぞオイ。」
『装備品無し』『所持アイテム無し』『称号無し』
【ステータス平均】50万
『精霊戦士』マキ
◇◆◇
「ぐあ!オラァ!!」
「PIIGGYYYAAAAA!!!」
殴り合うマキとオーガゴッド。
魔力を込めた拳は体の底に響くが、両者倒れない。
戦闘開始から約30分。
オーガゴッドの出現から早一時間。
外は恐らくもう夜だろう。
「『魔力砲』『螺旋魔力脚』」
魔力砲をターボ代わりにし、渦巻く魔力を蹴り出す。
あっ、それ新技なのに。
俺が使う前に使うなよォイ。
「GYYYIIIII!!!!!!」
「霊技『致呂』」
豪快な前蹴りにより、オーガゴッドの首は胴体とバイバイした。
そうでなくとも、既に片腕を失って、全身くまなく穴が空いていたオーガゴッドにとっては、ただのトドメの一発であり、完全に劣勢だったわけなのだが。
「と、いうことで、お前らには根性が足りない。」
「いやおかしいだろ!」
「普通にノア君の分身があのオーガゴッドよりも強かっただけにしか見えない!」
「そもそも自分達より強い時点で参考にならないッスよ!」
全く、文句タラタラの連中だ。
確かにマキとコイツらには、合計しても届かない程のステータスの差がある。
だが、こいつらは3人で、マキは1人。
その差は非常に大きいし、コンビネーション次第ではステータス差100倍でも十分に戦えるはずなのだ。
なんせそれくらいのメリットが無いと、他人とのパーティなんて組めたものじゃないからな。
「Sクラスの訓練に使ってる分身はステータス平均5万程度だぞ?基本的に変動はしていないから、根性だけで戦っている。」
「クソ根性論が聞きたいんじゃない!」
「もう無理だ!帰って来てからの君は横暴すぎる!」
「いっそ出て行った時のまま、思い出のままで良かったッス!」
ズキッ
ノアは精神的ダメージを5受けた。
ノアの精神的体力残量は99万9995。
ノアはわらっている。
「なるほど良いだろう。そこまで言うなら、お前らに対する仲間意識、責任感全て放棄しよう。お前らはここで死ぬ。俺が殺す。良いな?」
「「「は?」」」
「良い返事だ。【竜化:プロミネンスドラゴン】『魔竜鎧』『螺旋魔力拳』『10』」
頭に生えた特徴的な角と、肌を覆う燃える鱗。
炎ではなく、白炎が生みだす蜃気楼と大量の熱気は密室に充満し、その変身に合わせた様に全身を覆う、『魔獣鎧』よりもシャープになった見た目の鎧と、俺の背後に現れる十本の腕。
前腕部から拳までしかなく、半透明なその拳は普通の腕には無い渦の様な模様が浮かんでおり、衛星の様に俺の周りを旋廻している。
「ちょっ、嘘だろ......!」
「マジの目ッス。ヤバいッス。」
「に、逃げる事は......いや、逃がしてくれるのか......?」
逃がすわけはねェがな。
「『結界』『二重結界』『三重結界』」
「と、扉がっ!!」
「バッカてめぇ!」
「仲間割れはダメッス!今はどうやってノアさんを倒すかっ!」
「『螺旋魔力弾』『分身』自動魔力弾特化」
自分で操作する螺旋魔力弾。分身10体が操作するその他大量の魔力弾。
見分けるのは見た目のみ。
螺旋魔力弾は表面に渦がある以外の特徴が無く、よく見なければ他と同じただの卵形の球体だ。
他は撹乱、本命の『螺旋魔力弾』をまぎれさせるための物だ。
『で、オーガゴッドとか精霊戦士とか色々あったが、ここからが本番だ。』
「うっ、この威圧感っ!」
「気分悪いッス」
「ぅ、ぅぉおおおお!!」
この空間全体に充満させた魔力で、三人の『忍耐』に対してのみ『強化』を施す。
それにより、頑丈なサンドバッグにする。
30階層『ノア・オドトン』
バトルスタート♪
誰か……私に感想を……!