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『おらぁ!もっと踏み込め!腰が高い!大ぶり過ぎだ!』

『背後は分かり易いっつってんだろうが!器用さをお前から抜いたらあとはたんぱく質だけだぞ!』

『軽く小突いただけだ!鳩尾なんて打たれりゃ誰だって痛い!』

『魔力の無駄遣い!もっと編み込め!編み物からやり直したいかァ!?』

『素振りか!?素振りがやりたいか!?』


 阿鼻叫喚の闘技場生活3日目。

既に全員のステータスが平均10万を越えた。


 【称号】の獲得条件を意図的に満たし、ステータスを倍率強化した。

一応、見ているのは素ステータスではなく、総合ステータスなので、爆発的に強化された瞬間に【称号】を獲得していると思って進めている。


が、良く分からない皆からしたら、なんか良く分からない称号を手に入れるために、なんか良く分からない訓練を積ませられているように感じることだろう。


 だがそれで良い。


 その実感を与えるのも(分身)の仕事だ。


「でりゃあああ!!」

「アレクサンダー、奇襲したいなら最後まで黙れ。掛け声や『喰らえ!』なんて愚の骨頂だぞ。せめて『......ッ!』くらいにしろ。」

「くぅっ!?」


 両手剣での攻撃は地味に面倒だが、実力差がこれだけあれば問題無い。

アレクサンダーは剣術を重視するらしい。

 しかし、素直すぎる。

 突きは踏み込みが浅いし、振りの大きさと反応速度のバランスが悪過ぎて、振りかぶった瞬間に間を詰めたら、大き過ぎる隙が出来てしまう。


「はぁあああ!!」

「ラルフ、全身に圧力をかけるな。等間隔に圧する部分としない部分で分けた方が効果的だ。」


 魔法を重視することにしたラルフの『重力波』は、魔力で全身を覆っている俺には効果が無い。

そもそも、鉄板を押し付けられるのと槍を突き出されるのが同じ力だったのなら、槍の方が突き刺さるに決まっている。

 相手の急所に注目して、そこを攻めていくべきだ。


「ッ!!!!」

「ヴィル、お前は逆に気配を消し続けるな。黙り過ぎるな。相手が慣れたらそれだけでおしまいだぞ。」


 全力疾走はどれだけ持つか。そういう話。

ヴィルは魔法より戦闘術を優先するらしい。

ヴィルは気配を消し続けて、俺に一矢報いる瞬間を求めて待っていたが、注意されてしまえば意味が無い。


「ごふぁっ!?」

「レオナ。考えるな。考えろ。仲間の動きに合わせつつ、自分の動きを押し付けろ。」


 魔法と剣術を並行して使うには、レオナは不器用すぎる。

右と左でパズルを解くくらいの器用さと脳処理が必要になってしまう。

 が、実はこの中で一番成果が伴っているのはレオナだ。

 他のヤツらと違い、間違いは指摘すれば次からは直っているし、ある程度は応用もできていて、近いミスもしない。


 が、やはり器用貧乏に落ち着きそうだから、スパルタにさせてもらう。


「......ぅ」

「劣天使、お前は伸び代が多いが、躊躇が大きい。あからさますぎる隙を見たら動きが止まってしまうのは気を付けろ。」

「......ぃ」


 ハクは天使達と同時進行で訓練をつけている。

一番見所があるのは劣天使だ。

 コイツは様々な武器を背負って戦い、レオナ以上の横着さでかき乱してくる。

 タイマンよりも多数対一が強いタイプだ。


「きゃぁ!!」

「美天使、過剰に避けるな。多少傷付いても死なない。」

「私の体に傷が付くじゃない!」

「戦闘を行うなら、造形美ではなく機能美に重視しろ。傷付く姿も美しく魅せるんだよ!」


 美天使は文句が多い。

その度にそれらしい事を言っては黙らせるが、そろそろ語彙のレパートリーが無くなってきた。

......元から無いかっ


「剣天使ィ!!てめェは論外!マジで使えねェ!何度言ったら分かるンだァ!?飛びながら剣を振るんじゃねェ!威力も速度も半々減だろうがよォ!!」

「う、うるさい!」

「黙れボケェ!一丁前に文句言いたいなら、一丁前に訓練に従事しろやカス!!」


 剣天使はマジで弱い。

飛びながら剣を振り回しても、手数は少ないわ読みやすいわで弱い弱い。

 なんなら劣天使より弱い。


「時天使、スピードは十分だが、火力がイマイチだ。スピードに乗せた攻撃方法を検討しろ。スピードとはパワーだ。いいな。」

「......おーけー」


 時天使はスピード自体は速く、時折見逃すのだが、攻撃の瞬間に止まってしまうのが難点だ。

格下相手なら、圧倒的なスピードで翻弄して、小さな一撃を加えるだけでノせるが、格上相手には、根気強い戦法が大切だ。

 特に、相手が一回攻撃をしているあいだに、自分は何度か行動ができるというのは、素晴らしい有利点だろう。


「くっ、もはやステータスでも勝てないのか!」

「ステータスで負けてても俺はお前に勝てただろう!お前も同じ事をしろ!」


 2年前と変わり無いルルロラルは、地味に肉薄してきてはかすり傷をつけていく。

劣天使とルルロラルだけか。

 見どころが無い訳じゃないんだがな。


「すぅ......かぁ!!」

「レオン、緩急はバッチリだが、反動を考慮しろ。合わせて崩壊するのは俺くらいだぞ。」

「おぅ!!」


 レオンはマジでなんでここにいるんだ?

訓練は『分身』にさせているんだが、レオンだけは『分身』ぶっ殺してこっちに来やがった。

 レオンは一番可能性を持っていると思っていたから、治療班とは別の余りを全て差し向けたのに。


「休みは30秒で済ませろ!」


 休憩をはさみつつ、追加の『分身』を作る。

魔力回復はポーションで十分だし、水分補給にもなるからこういう時には便利だ。


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