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 学園に着いた俺は、ハク達と合流し、学園長室に案内された。

豪華なデカい扉。

 あの時、ジジイとガキをぶち殺した部屋だ。


「学園長、入ります。」

『はーい。良いよ~』


 間延びした声に許可され、俺達は学園長室に入る。

そこには数年前に見た時よりも、やや表情の柔らかい生徒会長がいた。


「久しぶりー。ここ最近疲労困憊とストレス過多で死にそうな私だよ~。」

「随分と変わりましたね。」

「あ゛あ゛ん゛!!?お前が2年間もどっかに行くからだろうが!!」

「うぉっ」


 白い顔を真っ赤にしながら怒鳴るアルテラントに少し驚く。

申し訳ないとは思っているが、こう情緒不安定な姿を見ると、混乱してしまう。


「ふぅ。君ね。せめて病院の職員くらいにはちゃんと行き先を教えていなさい。ハクが積極的に探し回ってたんだからね。」

「以後気をつけます。」

「あと、ハクから聞いた話じゃ、君はアド王国に行っていたわけだろ?何かお土産とか無いの?」

「一応ありますけど、お気に召すかどうか。」


 図々しさは他の追随を許さないアルテラント。

なんか、てっきり前学園長の横暴を謝罪するとか、そういうのがあると思ってたんだけど、意外だな。

 まあ期待していた訳じゃないから、不快という訳でもない。


「ん?これは......鍵穴のついた腕輪?にしても鍵穴が大量にあるな。」

「そちらの腕輪はこちらの鍵とセットになっており、魔力をストックできる仕様にしました。鍵はそのバッテリーです。一つにつき200万の魔力を補充できます。」

「私の最大魔力は150万なんだが。」


 一つの腕輪に、最大3本が挿せるようになっており、鍵自体は着脱可能な束に20個ついている。

俺の数少ないセンスの中で、【契約】という【固有】属性を扱えるアルテラントには、この形状があっていると感じた。


 ちなみに、実はこの腕輪、別の種類の鍵も装着可能なのだが、それは別の用途があり、アルテラントには合って無い。


「常時装着することで、最大魔力をアップできます。ただ、自動回復は微々たるものなので、直接こまめに魔力を蓄える必要があります。」

「随分とまあ高性能なことで。ありがたく貰っておくよ。」

「一応特注なんだけど、別に良いか......で、俺を呼び戻した理由は?」

「うむ、そうだな。単刀直入に言うと、【無能】排斥主義の暴走を止めてほしい。」

「予想の範疇だな。」


 いくら不当退学とはいえ、【無】属性で平民の俺を年単位で捜索する必要は無い。

ハクの独断だけならまだ分かるが、騎士団まで投入するということは、アルテラントにとって、貴族としての理由がある。

 となれば、まあそういう政治的な話になってくるんじゃないかなとも思っていた。


「【無能】排斥の歴史は、50年前に前皇帝が否定し、その実子である現皇帝もそれを続けている。つまり、【無】属性であっても不利になる様な法律はもう無く。例え相手が【無】属性であっても、不当な対応は出来ない。」

「んんん、しかしながら、学園長という帝国内でそれなりに権力を持った人間が、闘技大会優勝という好成績を残した【無】属性の俺を理由なしに退学にしたとなれば、【無能】排斥主義に拍車をかける結果となる。ってところか?」

「そこまで理解しているなら、もっと早く帰って来てほしかった。」


 それは申し訳ないと思っている。


「その事実自体は、ここに帰ってくる途中の病院で知った。【無】属性の子供が棄てられる件が増えているとな。」

「そう。君という存在は、知名度の低さから浸透してはいないが、少なくともあの闘技大会を見ていた人間の中にいた【無】属性からは希望の星だったし、逆に言えば【無能】排斥主義からは危機感を覚えさせるに足るものだった。」

「俺はてっきり、Sクラスのメンバーが【無】属性を広めてくれていると思っていたんだが。」

「ああ、魔技大会でも闘技大会でも、彼らは好成績を残してくれた。しかし、それも徐々に無くなってきた。アレクサンダー殿下率いるSクラスは、他クラスと比べても、『多少強い』程度の評価しか得られず、皇子や貴族が所属しているSクラスが【無】属性に固執するのに、懐疑的な目を向ける者が増えた。」

「ほーん。もしかして、大量の魔力を使う【無】属性よりも、それと同等の魔力で使う属性魔法の方が強いからか?」

「君は......知っていたのか?」

「予想の範疇だ。というか、【無】属性の排斥もそうやって始まったんだろう。莫大な魔力を必要とする【無】属性よりも、低コストで頻発できる属性魔法の方が便利だって。」

「じゃあ、じゃあ何故!徐々に弱くなる彼らを放置して行方を眩ませたんだ!」


 ダンッと机を叩くアルテラントは、貴族や学園長としてではない、どこか別の哀愁を内に秘めているように感じられた。

 これはそう、マリナ教師の様な。


「弱くなるとは思ってなかった。置いて行かれる様なヤツらだとは思ってなかった。それだけだ。ハクの様に、強く強くなれる人間ばかりだと思っていた。」

「無理だ。ハク君は例外的過ぎる。彼女が初等部2年に上がる頃には、高等部3年に圧勝する程の強さを手に入れていた。」


 流石ハクと、優秀な幼馴染を称える。

しかし、他の奴らはそうでもなかったそうだ。


「高等部からは私の推薦で、レオン君とティナ君。そしてハイドル君をSクラスに編入させた。しかし、効果は芳しくない。」

「分かった、俺が相手する。全員を『最強のSクラス』に叩き上げれば良いんだろ?」

「それだけではない。恐らく、他貴族からの妨害工作もある。気をつけてくれ。」

「黄色いタコ式、大量『分身』で全員を護衛する。何なら、対戦用にホムンクルスを作っても良い。」

「君は変な方向に大胆だね。」


 こうして、落ちこぼれてしまったSクラス共を叩き直す。

俺の学園生活が再開した。


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