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 学園のある都に到着し、第一病院に『魔力車』を止める。

と同時に、包帯男からある情報を貰い、俺はある悪戯を思い付く。


 多少回復した魔力で全身を覆い、俺の姿が見えないようにする。

『魔力車』も先に学園に行くよう、ポストルに引かせた。


「おうおう、今回はやけに雰囲気ある奴が来たじゃねぇか。いつもの雑魚とは違う様だなぁ。」


 出てきたのは身長が2メートルに差し迫るほどの巨漢。

しかもその前身は筋肉で引き締まっており、ボサボサだった髪は角刈りになっていた。

 良く見れば、体幹も強くなってる。

義足に負荷を掛けないようにしていたのが、今では背中に一本の棒を突っ込んでいる様にバランスが良い。


『今までの奴らは雑兵だが、私は違う。』

「ほう、自信満々だなぁ。だが、どんなに強いヤツだろうと、オレが負ける事はありえねぇ。」


 据わった目で俺を睨むウェンディゴに、正体を悟られた様子は無い。

くくくっ


『では、手合わせ願おうか。』

「礼儀正しいやつだな。名は?」


 名ぁ?

......どうしよ。


『ヌーフと呼べ。』

「オレはウェンディゴ。まあ、こっちのは知ってるだろうがな。」


 感付かれたのかと少し驚いたが、多分今までの襲撃の際に存在を知られているから、そう思ったんだろう。


『では、行くぞっ!』

「ぜりゃあああああ!!!」


 掛け声とともに、一歩間違えれば不意打ちとも取れる正拳突きを繰り出してきたウェンディゴは、バックステップで避けた俺に更にダメ押しで、大きな前蹴りを繰り出す。


「っ!?てめぇ鉄でできてんのか!?」

「鉄でできた脚で蹴っておいてよく言うよ!!」


 蹴りだされた義足を掴み、グルリと側転させる。

体の前面が地面に向く形になったウェンディゴは、倒れながらも素早く立ち上がろうとしたが、その上体を起こすためのカッコいい宙返りの勢いに合わせて回すことで、ウェンディゴを更に地面に叩きつける。


「はっはっは、強くはなったがまだまだだなぁ!これじゃ倒せるのは同格までだぞぉ!」

「ちょっ!?ぶべっ!?もし!?かしてっ!?ノアか!?」

「おうよ!鈍ってるなら手伝ってやるぜぇ!!」


 そう言って、今度は筋力に任せてウェンディゴを宙に放り投げる。


「衝撃は硬い物程ダメージになる。スライムに成れ!どこまでも柔らかく溶ければ、そんな程度の高さどうと言う事は無い!」

「無茶言うなぁ!!」

「お前に掛かる重力を全て地面に流しこめ!」


 地面に落下するウェンディゴは、地面に大きめのクレーターを作って気絶した。

しょうがないので、『ポーション』をかけて折れた骨を接合した。


「はっはっはー。こういうのが一番楽しいよな!」


 そんな迷惑極まりない事を言いながら、俺は病院に入った。


◇◆◇


「おー、ウェンディゴが突破されるなんて。まさかそんな人間が来たのかー。」

「棒読みな時点で丸分かりじゃねぇか。さては外の声が聞こえてたな?」

「まああれだけ騒いでいたらね。ドカンドカン鳴っていたよ。」

「はーっ、じゃあ集合かけてくれ。」


 ヘレナ女医の呼び掛けによって、仕事中の人間以外が集められた。

ベルや副院長、【無】属性の子供......達?


「なんで増えてるんだ?」

「またしても孤児だよ。今年はやたらと多い。【無】属性ってだけでなんで子供を棄てられるのか、理解できないよ。」


 この国ではよくある事らしい。

属性差別というやつだ。

【無】属性という存在は【無能】で出来損ないだから、自分達は育てたくない、育てるのは無意味だと、国営である病院に押し込むのだ。


「ちっ、こんなことならもっと余分に作ってくるんだったな。」

「ん?一体何を?」


 『ボックス』から指輪や義足を取り出す。

それを皆に配るが、当然その子達の分は無い。


 不安そうなその顔が、更に暗くなってしまう。


「んんんん」


 『鑑定』で見たその子らのステータスから、成長性の高い部分をピックアップする。

それを基に、試作品の中から適当なモノを選ぶ。


「はい、はい、はい、はい。」


 ダサい色合いの指輪だが、子供のうちはこんな感じの方が良いだろう。

能力増強も、『筋力+30』みたいなもんばっかだし。


 とはいえ、子供で筋力30オーバーはそれなりに怪力だ。

その為、大量に作ってしまった耐久値性のバリアを仕込んだ指輪も配る。

 一応自動回復だし、複数個を同時展開すれば強力な防御壁になる。


 これを失敗作扱いにしたのは、普通に俺の『魔力壁』の方が強いからだ。

自由に硬度が変わる『魔力壁』がある以上、指輪型の『装備品』の枠を埋めるには物足りなかった。


「いざという時はこれを使って自分を守れ。」

「......これを使っても、アイツらに復讐はできないのか。」


ん?

 子供たちの中ではまだ大きい方である少年が子供達と俺の間に入り、俺を睨んでそう言った。

復讐ね。

 物騒な話だが、一体何をどうするって言うんだ?


「誰に復讐をするんだ?」

「俺を棄てた親だ。アイツらは俺と妹を棄てやがった。だから、いつか絶対に殺してやる。」


 親がどんなヤツかは知らないが、コイツの怒りはなんか気持ち悪いな。

復讐が愚かだとは思わないが、愚か者が復讐するのは避けないといけない。


「お前の話、聞かせてみせろ。」

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