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 帝国に到着し、元俺達の村を通過する。

その際、ハクには色々な話をして、できれば街に移った俺の家族や、アスタに目をかけてほしいと頼んだ。


 しかし、時間的な余裕がなさそうなので、街自体はスルー。

まあ、ギルマスなんかはポストル経由で連絡を取っているし、基本的には滞り無く取引できているため、わざわざ会わなくてもいいだろう。


「ノァってここでは冒険者登録しなかったんだね?」

「一応、10歳になったのはアド王国だったから、できるだけ早めがいいと思ったから。」


 テンプレ俺TUEEEをやろうとしたのに、絡んで来る新人潰し役が、ただの強いおっさんだったのだ。

しかも割とボコボコにされた。

 

 自分の戦闘スタイルを見直すいい機会だったとは思っているが、今戦っても圧勝できそうな気がする。

憧れは憧れのまま、いつか勝つ時までとっておくべきだろう。


「ノア達の街っていうのも興味があるけど、それ以上に学園ね。獣人に寛容だったら良いのだけれど。」

「それは大丈夫だ。【無】属性への迫害に夢中で、獣人には目を向けていない。」

「それはそれで安心できないのですが......」


 カムの疑問に答えた俺に、ユーリが苦笑する。

ま、この中で【無】属性なんて俺だけ......


「いや、ユーリも今は【無】属性なのか。」

「はい。未だに魔法の一つも教えて貰えず、筋トレばかりの毎日ですが。」

「よし、今度から魔力を垂れ流しつつ筋トレさせるか。」


 更に顔を引き攣らせるユーリに見せつけるように、俺は濁流の様な魔力を四方八方に放出する。


「ぐぇ。」

「分かるか?属性が無くても、400万も魔力があったらこれくらいできる。」

「よ、よんひゃっ」


 潰れたカエルの様な声で驚くユーリだが、俺はあくまでも得意分野を見せつけているだけだ。

カムも今の俺にはもう届かないらしいが、魔力量だけでも300万あるらしい。

 【称号】を認知していないはずなのに、何故ここまで強くなれるのか。

理不尽で仕方ないぜ。


「大丈夫だ。俺もチートは持ってない。チートを持ってないけど、転生者ってだけで効率的に鍛えればこれくらいになれた。5歳で目覚めて5年かけてここまで辿りついた。きっと、俺より才能溢れる俺以外のお前ならもっと早くここまで辿りつく。」


 とはいえ、俺の強さは決して頂きではない。

ドラゴンにはもっと強い個体がいるらしいし、冒険者にはAより上が5個くらいあるらしい。

 カムも、サポート特化らしいから、戦闘能力で考えたら他のソロAより弱い。


まだまだ俺は強くなる。

楽しみだ。


「学園だったら十分に訓練できる施設があるはずだ。同じクラスになれたら、【無能】差別からも守ることができる。ちょっとだけ苦しいだろうが、移動中は全部トレーニングだ。」


 放出した魔力の半分は『ストック』に入れた。

もう半分の魔力は、ユーリの全身を包むように配置した。


「全身がゴムでできている様にイメージするんだ。自分の魔力と俺の魔力は同じ【無】属性だ。お前はいくらでも膨らむ。膨らんだ分が総量になる。」


 ユーリの手を握り、直接魔力を流し込む。

200万もの魔力は、小さな小さな風船を過ごしずつ膨らませる。


「くっ、あっ、かはっ」


 漏れる吐息は苦しそうで、だが、それでも止めない。

限界値は身を持って知っている。


「よし。完成だ。」


200万を注ぎ終え、蓋を閉じる。

 吐き気と目眩に押し潰されるユーリは、真っ青な顔で口を抑えている。


そこを抑えても漏れるものは漏れるぞ?

あとついでに言うなら、漏れる余地は与えないぞ?


 ということで、それに慣れるまで、ゆっくり待つとするか。


「ユーリの魔力は200万に届くはずだ。」

『それは認められないね。』


 突然声が響く。


「包帯男か?」

『そうだよ。君がどんな事をしても、ある程度は干渉しない様にと気を遣っていたんだが、君のそのステータスの強制上限解放は看過できなかった。だからね。』

「上限解放?」

『覚醒と言われる現象さ。本来なら5000や9999など、色んなタイミングで成長がピタリと止まる。そこから死にそうな経験を積むことで、その上限を解放する。それが自然の摂理。』


 なるほど。

たしかにそれは上限解放だ。

 ソシャゲなんかじゃ、特別なアイテムを用いるか、同キャラと合成することで最大レベルを上げられる。

 まあそんなのはどうでも良い、今は包帯男の話だ。


「ユーリへの魔力譲渡はそれに抵触したと?しかし、今までこれを試した人間がいないとは......!」

『そう、いないんだよ。この世界には発想力というものが存在しない。少なくとも、今あるモノ以上の発展を自主的に遂げる能力が無い。だから他の世界から人を持ってきて、知恵を分けて貰う。そう君に言ったよね?』

「なるほどな。」

『あれだけ質問責めにしたくせによく忘れられるものだよ。そのユーリちゃんの魔力の上限値は30000、60万つまり、200万もの魔力を入れる為には、君と同様2回の覚醒が必要だ。そして、言いたくはなかったんだけど、君以外の転生者には【称号】が付かない。知らなかっただろう?言ってないし、それに気付かないように少しだけ意識を誘導したからね。』


 言われてみれば、『鑑定』で転生者のステータスを見る時には【称号】まで見えてなかった。

それは転生者でなくても違いは無く、ハクやカムでも見えなかったから、『鑑定』では見えないものだと思っていた。


 しかし、俺は今まで自主的にステータスを開示して見せて貰った事が無い。

グレイや学園長やカナメ、そしてユーリやレータがいたパーティ。


 それなりに多くの転生者に会っているのに、それに気付かなかったのは、包帯男の仕業だと。


『とにかく、君の贈った魔力は、一旦僕を介して別のモノ、つまり『チート能力』に変換させてもらう。君の嫌いなタイプじゃない。大器晩成型さ。そして、それは今までみたいに改造できなくする。気絶しても、ユーリの『チート能力』だけは剥がれない。』

「それで思い出したんだが、学園長の情報と実際の出来事に差があるのは何故だ?学園長は死亡させたら引き継がれると言ったが、俺は気絶させるだけでもチート能力を手に入れたぞ?」

『それは単純にそのガクエンチョウとやらが間違った情報を持っていただけだろうね。元から気絶で剥離する設定だよ。』

「そうか。ならいい。じゃ、さよなら。」

『えー......』


 やや強引に解散を迫ったわけだが、ちゃんと包帯男は引き下がってくれた。

気配も声も無くなって、あるのは目の前で光っているユーリだけ。


「うううう、ちょっ、これってどうなってるんですか?」


『チート能力『ミラーシステム』を獲得。ステータスに大幅な変動、肉体を最適化します。』


 バキバキという折れるような音がして、ユーリの体が怪しい電流に包まれる。


「コピーシステム......ね。」


 恐らく俺とユーリにだけ聞こえたであろうその声について考えながら、俺はユーリの経過を見守った。

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