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 腕に痛みを感じ、本体の方に意識を戻すと、どうやら面白い展開になっているらしい。


「貴様、やや見た目が変だが、ダークエルフだな。」

「え、いや、自分はホムンクルスッス。100%ゴブリン製なんで多分ダークエルフの要素は無い筈ッス。」


 金髪に碧眼、やたらと整った容姿は半分が布に隠れており、その髪から覗く耳は、先が尖っており長い。

その存在が何なのかを理解してしまった俺は、興奮が隠せないでいた。


 エルフだ。


 ファンタジーの定番、普通なら転生した瞬間に師匠として師事してもらったり、ギルドに来た時にチラホラ見かけたり、冒険者をしていたら色々なことがあって出会ったり、とにかく、ファンタジックな物語には欠かせない人員だ。


 が、そんな彼ら彼女らが、揃いも揃って、この馬車に向けて弓を構えている。

盗賊行為をするエルフ?先入観から、かなり珍しいと思った。


「この珍妙な馬車を引くという尋常ではない状況。貴様は虐待奴隷ではないと言うのか?」

「アド王国と帝国では奴隷制度って廃止されてて、今じゃ所有も厳禁ッスよ。公国と北の王国ならまだあると思うッスけど。」

「では、貴様は自分の意思でそれを引いていると言うのか?」

「え?まあ、そうッスね。基本物運びが自分の役目ッスから。」


 エルフ達の顔が険しくなる。

あ、あー。これは大変だ。

 多分ポストルがダークエルフだと思って突撃、文字通り馬車馬の如く働かされている状況を見て激怒。

ここまでは読めた。


 しかし、作品によっては険悪な仲のエルフとダークエルフだが、この世界ではそんな事が無いのだろうか。


「おい貴様ら。これは本当か?そこの猫!貴様に聞いている!」


 まあ、10歳二人と18歳(童顔)一人と大人一人では、大人一人が一番話し易い。

むしろ、この面子で俺やハクに話を仕掛けてきたら正気を疑う。


「えっと、ポストル君はノアのホムンクルスだから、なんとも言えないけど、嫌々やっているようには見えないよ?」

「そうッスね。自分は気にしてないッスね。疲れるわけでもないッスから。」


 エルフからの同情的な視線がポストルに集中する。

少し面白いな。この状況。


「よし、では貴様はこちらへ来い、我らの里に案内して手厚く歓迎してやろう。」

「あ、今仕事中なんでまた今度で」


 なにやら面白い提案を、ポストルはなんらかの勧誘を断る程度の感覚で断った。

いや、勧誘は勧誘なんだが、もうちょっとこう、風情とか大切にしてほしい。


「えっと、エルフさん達はなんでこんな所に?」

「む、いや、我らはここの近くの森に住んでいる。最近、ダークエルフの男が高速で帝国と王国を行き来しているという情報を得て、張り込んでいた」


 なんともまぁ。

ご苦労さんでございます。


「エルフなのにダークエルフを助けるんですか?」

「なに?ダークエルフと対立していたのは、もうかれこれ四千年前の話だ。今はあちらとこちらで手を取り合い、できるだけ幅広く交流を深めていっているぞ?」


 なんともまぁ(二回目)

しかし、そんな所で型破りな設定を持ちこまれても、反応に困ってしまう。

 いや、とりあえず情報として覚えておくに越したことは無いか。

そのうち、エルフ達の歴史や文化についても少し知りたい。


「ポストルはダークエルフじゃありません。ポストル、アレ見せてやれ。」

「えー、いいッスけど、腰抜かさないでくださいね?」

「む?何をするつもりだ?」


 戸惑うエルフを横目で流し、ポストルの背中の隆起に目をやる。

まるで、肋骨が後ろ側へとひっくりかえったかの様なその異様さと、背中から生える無数の手。

 最近になって少しずつ増えてきたその手に、エルフ達はギョッとする。


「ひぃ!なんだこれは!」

「ですから、ホムンクルスですって。俺が運搬用に足が早くて物をいっぱい持てるホムンクルスをイメージして作ったらこうなったんです。」

「ぅ、うう。た、確かにこれはダークエルフではない。こんなに手の多い種族も聞いた事は無いし、ホムンクルスなら納得も行く。道を塞いで悪かった。」


 そう言うとエルフ達は道を開け、『魔力車』が通れるようにしてくれた。


「今度、エルフさんの森に行かせて貰ってもいいですか?数年先の話になるかもしれませんが、その時にはお話とかも聞かせてください。」

「うむ。こんな所であらぬ疑いをかけた詫びに、いくらでも好きなだけ話してやろう。なに、エルフにとって数年は数日と変わらん、いくらでも待ってやるさ。」

「ありがとうございます。」


 話が円滑に進み、俺達は帝国への道を順調に進めるようになった。

今更、もう一度ドラコーンの元へ戻るのも面倒だし、今日はこのままこっちで色々やるとしよう。

 生憎、まだまだ愉しい娯楽は尽きてない、『装備品』の作成が最近のブームだったってだけで、俺にはまだまだ強化パーツ作りがある。


 ステータスが二回も覚醒したと言っても、世界にはまだまだ強い人間や魔物がいる。

いつまた、カムやプロミネンスドラゴンのような、俺からみたら雲の上のような存在と相見えるかも分からない以上、一分一秒も早く強くなる必要があるのだ。


「ってことで、俺はちょっと奥で色々やってくる。」


カムとハク、そしてユーリも色々話す事があるだろうし、俺は女子会の邪魔をしないよう、『魔力車』の上に新しい部屋を設置、そちらへと移動して、寝た。


 横になっている時が一番集中力を高められる気がするからな。


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