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「じゃあ、いってらっしゃいませ。マスターと愉快な仲間達。」

「なんだか嫌な言い回しだね。」


 ドラコーンの言葉に、カムが苦言を呈する。

苦言を呈するとか初めて使ったな。

 とはいえ、俺、カム、ハク、ユーリの四人は、ポストルの引く『魔力車』に乗ってくつろいでいた。


 傍目から見れば、男一人と女三人、そして化物が一人の組み合わせなのだが、やはりポストルの見た目は異形すぎて、盗賊なんかは現れない。

 『魔力車』は完成したパズルの様にガチガチにバランスが取れて噛み合っているため、俺の操作が無くとも崩れない。

 そのため、ポストルに引かせているわけなのだが、罪悪感とかもちょっとある。


「到着に2日か、距離的に言えばこれ以上無いスピードだろう。」


 直線距離を走っても、王国から帝国までは死ぬほど長い。

それこそ、俺は三ヶ月かかった。


「じゃ、ドラコーンに会ってくる。」


 俺は手を丸めて座禅を組む。


◇◆◇


「ってことで、俺が来たぜ。」

「はい、マスター。先程振りです。」


 食事を必要とせず、睡眠も不要のこの『分身』を、何故か椅子に座らせてドラコーンが笑っていた。


「そういえば先に言い忘れたが、俺は本体と『ボックス』を共有しているから、問題無く金なんかも出せる。ドラコーンは外に出稼ぎとかしなくていいからな?」

「はい♪」


 やけにるんるんと嬉しそうなドラコーンを横目に見て、机の上に様々な素材と『装鉱』を出す。

定期的な供給が山の方の『分身』とポストルによって行われるため、『装鉱』が底をつくことは無いのだが、他の素材は数が有限。そのため、ある程度は素材を使わずに、素のままの『装鉱』で作って行く。


 一番はやはり『指輪シリーズ』だろう。。

 普通のリングだけの指輪であれば、『装鉱』単一でも問題無い。

ただその場合、地味な性能になってしまうわけなんだが、どうにかならないか。


「そういえばマスター。言い忘れてたんだけど、ボクの角には幾つか特殊能力があるんだ。」

「へー。ドラゴン達がそういうのを使ってたって記憶は無いけど、どんな?」


 俺の【竜化:プロミネンスドラゴン】で生える角も、ぶっちゃけ飾りだし。


「まず前の角が『対戦用刀剣型頭蓋角』で、最強硬度の剣。」

「いかつい名前だな。それで物を切ることもできるのか?」

「切れるし突ける。折れても三日で治る。」

「相手したくないな。」

「両サイドは『突進用双槍型頭蓋角』っていって、突進するときにぶっ刺します。」

「用途は違うが、クワガタみたいな感じか?」

「で、後ろは『魔力用放出型頭蓋骨』で、魔力を溜めたらビームが撃てるよ。」

「魔力の無いお前には致命的な欠陥なのでは?」


 いかつい名前には変わりないが、そんな名前をつける必要はあったのかと考える。

しかし、ドラコーンのこの表情、名前には余程の自信があったのだろう。


「だから、ボクはマスターと一緒にいるだけで強くなれるんだよ。」

「あー、他から魔力を補って貰っても撃てるのか。」


 外付けバッテリーみたいなものか。


「ということで、食材を買ってくるついでに、噂のブラックホールドラゴンさんの所へ行ってみようかと思ってるから。このまま待っていてね。」

「ああ、了解。」


 なんか子供みたいに扱われたが、ドラコーンがそうしたいなら、それで良いか。


◇◆◇


「完成ィィ!!!」


 出来あがったのは、まるでスナック菓子かの様なリングの山。

一つ一つが性能としては微妙だが、皆が大好きな『セットボーナス』を設けることに成功した。

 二個以上のリングを嵌める事で、ステータスに倍率強化ができるというものができた。


 筋力リングは二個なら二倍、三個なら三倍。というわけにはいかず、一個目が1.5倍、二個目だと1.75倍と、徐々に増加する倍率が下がってしまう。


 非常に効率が悪いが、十個全部を嵌めた時が強い。

今までの弱小倍率を無視した様なインフレの、10倍を叩きだせる。

 他の指輪を使えないというデメリットがある以上、実際に使う時には本当に追い詰められた時だけになる。

 ということで、これらをちゃんと『ボックス』に突っ込む。


「こっちはステータス用じゃない。プレゼント用だ。」


 リングの山に埋もれていたのは、大きめの足。

かなり大きい、肌色の足。

 しかし、それは本物ではない。


「ウェンディゴの足、サイズ変わってないと良いけど。」


 まあ、勿論サイズが変わっていたとしても問題の無いように、サイズ変更の機能も付けた。

神経接続はできなかったが、変色と皮膚っぽい装甲で、義足だということが分からないようにした。

 そして、ベルの為の『吸魔リング』も作った。

魔力を永続的に吸収し、それをストックしてくれる。


で、ヘレナ女医の為に、錆びないメスや針、ハサミなんかをセットで作った。

色はちゃんと銀で統一した。


 あとは、そうだな。

副院長にもちゃんとプレゼントを作った。

 首飾り型の物で、緑の宝石っぽい『装甲』が露出したペンダントに『植毛』の能力を付与した。

眼鏡型の『演算』機能のついた『装備品』も作った。


 副院長にだけ二つもプレゼントするのは、彼が苦労しているだろうから。


 そんな中、ふと右手に痛みが走る。

怪我をしているわけじゃない。

 恐らくは本体が受けたダメージだ。


 つまり、『魔力車』になにかあったらしい。

戻るか。


 俺はドラコーンが帰る前に、作った『装備品』を『ボックス』につっこんで、椅子に座って意識を本体に戻した。



『ドラコーンへ、これからよろしく。これは俺からのプレゼントだ。』


 そう書いた置き手紙に、一つの指輪を添えた。



『魔力リング:大気中から魔力を吸収する。最大容量20000』


 唯一宝石を使った指輪には、隠し機能を大量に取り付け、ドラコーンがどんな能力を使えようとも便利になるモノばかりを集めた。

 

 その宝石には素材の良さを引き出す効果があったらしく、思った以上の機能が付与できたが、嬉しい誤算の範疇だ。



 

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