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「で、暴れてどっか行って、変なの連れて来て、今はホムンクルスを作ってるんですか?」
完全に忘れられていたユーリに、変な風に睨まれる。
まあ、学園に行く以上、ユーリをどうするかは考えないといけないしな。
「ってことで、ユーリにも学園に来てもらう。」
「話についていけないんですけど、納得はしました。」
そういえば、ユーリの口調は敬語に収まった。
一応師匠ということなので、それで良いかなってことだ。
「ホムンクルスに使った材料は小指の爪や小さい羽の破片。あとは小さな鱗なんかの、まあ有り体に言えば『カス素材』だ。使ったのも風竜の核というカス竜の素材。けど、一番の目玉商品をぶち込んだ。」
「目玉商品って......」
「じゃじゃーん。」
『ボックス』に手を突っ込んで取り出す。
勿論、部屋が汚れないように血抜きも下処理もしている。
「ドラゴンの生首~!」
出したのは地竜の生首。
角も牙も完備されており、眼球も両方揃っている。
コイツは、トドメの一撃が首の両断だったので、首が残ったわけだが、コイツのせいでイマイチ素材の切り取り条件が分からなくなった。
というわけで、地竜の素材はこれだけ。
爪も鱗も全然取れなかった、硬い。
「コイツ硬すぎて加工できんねん。」
「突然関西弁になるのはなんでです?」
エセだがな。
というわけで、ホムンクルスの材料を1ヶ所に集めて、魔力を込める。
卵が形作られ、そこに魔力を注いでいく。
キクスの卵の時以上に容量があるらしい。
しかし、10倍になって2回の覚醒を経た俺の魔力は最早、海。
ストックを使わずにでも満タンにできるため、『並行』でステータスを調整する。
魔力とかぶっちゃけ要らん。
筋力と敏捷だけに極振りで良いと思う。
忍耐は筋力の半分程度で良いか。
魔力は0の、知性500くらいか?
幸運は変動不可っぽいし、称号も取捨選択ができないしな。
遠隔型の『分身』には、ちゃんと自動魔力回復『装備品』を渡すつもりなので、魔力タンクに使うつもりはないし、純粋にボディガードだ。
あ、でも、もしもアホな子が生まれてしまって、『装備品』の作成に支障が出たら嫌だしな。
ちょっと増やして、切りよく5000くらいにしよう。
敏捷を減らしたが、経験則から、敏捷はそこまで要らない。
「お?この感覚は。」
「えっ、なにが起こるんですか!?」
懐かしいこの感覚。
『MWMWMWMWMWMWMWMWMWMW』
卵が光り、中から小柄の少女が出てくる。
多分、ポストルの3分の1程度。
頭からはえっぐい風格のある角が二対、つまり四本生えていた。
全裸であるのはいつもの通りなんだが、小さい体躯に対するこう、何がどうとは言わないが、アレがデカい。キクスより若干デカい。
なんなら身長が相対性を生んで、更にデカいように見える。
いや、これ以上の言及はやめよう。
とりあえず『自作布』で服を作らせ、局部だけでも隠させる。
そして、命名してから、ステータスを見るか。
「四本角だから、○○コーンにしたいが、馬要素無いしな。ドラゴン要素を探そうにも、羽も生えて無いらしい。尻尾も無し。鬼みたいな結果になってしまったが、どうしたものか。」
「コーンは角でユニとかバイとかが本数なんじゃないですか?なら、もうドラゴンの角とかでドラコーンとか。」
「こいつセンスの塊か?」
ということで、コイツの名前はドラコーン。
身辺警護型ホムンクルス。
◇ ◆ ◇
ドラコーン ♀
HP:50000
筋力:120000
魔力:0
敏捷:70000
忍耐:130000
知力:5000
幸運:1000
称号:【キメラドラゴン】【人型のドラゴン】【ロリ巨乳】【SP】
◇ ◆ ◇
くぉっ!?こいつ、俺が言いたくない事を【称号】に出しやがった。
まあまあ、良いだろう。
時神試練後のキクスみたいなステータスになったが、このままならアイツの下位互換と成り果てる。
稽古をつける余裕はないが、遠隔操作している時にでも訓練に付き合ってやろうか。
「おはよう。言葉は分かるかな?」
「はい、ボクの名前はドラコーン。目的は誰かの護衛。把握しているよ。」
ロリ巨乳ボクッ娘属性は盛り過ぎでは?
そう思いつつ会話を続ける。
「そうか、では、これからお前は俺の『分身』の護衛を行うと共に、通常時はこの家の掃除や管理を行って貰うことになる。」
「了解したよ。」
即座に了承してくる様子は、人間味が無さ過ぎる。
いや、ホムンクルスの時点で人間味なんて無い訳なんだが。
俺が頼むと同時に、ドラコーンはその長い長い茶色の髪を揺らし、周囲を見渡した。
「周辺情報を獲得。マスターの隣の女性は?」
「こちらはユーリ。一応今は居候で、これから一緒に学園へ行く。多分、帰ってくるのは二年後だし、それまで孤独かもしれないけど、近隣住民と仲良くして、山の方のブラックホールドラゴン達とも交流を図っておいてほしい。」
「了解。ボクは大丈夫だよ。」
そう言うと、無表情だったその顔に、若干の変化が見られる。
別に無表情キャラだったわけではなく、感情が顔に出やすいタイプらしい。
さっきまでは完全な虚無だったのか。
「ってことで、『分身』を置いて行く。コイツは普段自動操縦だが、俺が遠隔操作する時だけ色々と話そう。自動操縦時には魔法が使えないし、技も使えないが、ある程度の肉体労働はできる。緊急事態にはこの『分身』の骨を折れ。『分身』の受けたダメージが届くようにしておく。」
微妙にデメリットっぽいが、基本は家にいる以上、怪我をする以外には問題無いだろう。
「さぁて、荷造りと『魔力車』の為の魔力を煉るのと、やる事がいっぱいだからな。暇なユーリとかカムと話して、少しでも見聞を拡げてくれ。」
「はーい。」
さて、まずは持って行く『装備品』の選択だな。