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「『魔力脚』」
天使共を叩くには、ちと脚は不便だ。
なんせ、飛んでる天使にゃ、脚で飛んで拳で殴る方が良いってのが普通だからな。
仮に、背中に羽を生やして、飛んで戦っても、やっぱり脚は使えない。
で?オレはやっぱり脚が良い。
じゃあどうしようか。
地に落とせェ。
「霊技ィ『天片地囲』ィィ!!」
かかと落としを時天使の脳天にぶち込む。
その衝撃に眼球が付いて来なかったらしい、時天使は白目を剥いて地面に落下した。
「お前、誰だ?」
「精霊戦士のマキだぜェ。覚えて死んでいけェ?」
剣天使に狙いを定めると、その後ろに回って首筋を蹴り込む。
「霊技ィ『千脚観音』ン!!」
蹴る蹴る蹴る蹴る。
翼をもぎ、骨を折る。
地面と足裏で何度も板挟みにするが、中々どうして、HPは半分も切っていないらしい。
「おらおらおらおらおらおらァ!!」
「がががががががが!!!?」
振動を続けて、呼吸もさせない程に隙を作らない。
これがアレか?反撃のタイミングも何も無いィってやつか?
その慣例なら、オレが負けちまうんだが、そうはさせねェ。
天使の原理は魔力由来の疑似生命。
であれば、魔力を枯渇させるか、生命を止めれば良い。
正直、ルルロラルとかいう変な界天使が、どうしてハクに還らず生きながらえているのかは知らないが、こいつらはそうじゃないだろう。
とはいえ、消してもハクに戻るだけで、どんな戻り方をしても、死んだわけじゃないただの偶像。
まあ、分身みたいなもの......か?
いや、ベクトルがちょっと違うか?
「てことで、オラよォ!!!」
剣天使と時天使にトドメを差し、二人は光の粒へと変化する。
それは、少しの間周囲を旋廻すると、ハクの方へと戻って行く。
「仕事は完了ゥ......?天使ってのはこんなに弱いのかァ?」
◇◆◇
「アンタ誰よ。ガキンチョが私達天使に敵うとでも?」
妾も戦うということだが、かなり難しいんじゃなかろうか。
なんせ、妾は熱の精霊。
火の精霊でも無ければ太陽の精霊でもない。
マジで温度を操るだけの精霊でしかない。
しかも、魔力にちょっと熱を持たせるだけの、地味な加護じゃ。
そりゃ、プロミネンスドラゴンとの戦いでは、ちょっとだけ役に立ったかもしれんが、それでも地味なのには変わりない。
まして、妾はマキと違い、ノアの記憶を引き継いだタイプじゃない。
そのため、この戦いには、妾の力だけで戦わなければいけないのじゃ。
「妾は、時神を迫害する偽神の使徒。熱の精霊......イムだ。」
名前は構わないのじゃが、もうちっとマシな名前にはならんかったのか。
もうステータスにも反映されている以上、妾の名前はイムなのだが、まあ仕方ない。
「『吸熱』」
美天使の弱点は知っておる。
妾の大得意を、そのままぶつければよいのだ。
「『射熱』」
熱を出したり引いたり、要は加熱と冷却を繰り返せば、肌が乾燥し、髪がバサつく。
それだけだが、それで十分じゃ。
「ひぃいいいいい!!!」
アホみたいな攻略法なのに、何故かこれが効く。
髪なんていくらでも高速移動で振り回しているし、戦闘中は肌が煤に塗れる。
んー、深くは考えないでおこう。
「で、お主はどうするのじゃ?」
「......ぉ」
「ほう、なるほどのぅ。じゃ、一緒に観戦するか?」
「......ぃ」
「むぅ、つれないのぅ。」
本領発揮には程遠い。
すごい微妙な結果だったが、まあ、楽なので良いとしよう。
劣天使と共に、妾は戦うノアとハクを見つめた。