138 閑話
ここは帝国一の学園マグナイト。
文武両道と剣魔一挙を校訓に掲げている、それなりに由緒正しい学園なのだが、現在は新米の学園長が必死になって指揮をとっているものの、生徒の素行不良や成績不振が募って、徐々に評判を落としている。
そんな中、一人の超絶美少女が剣を振り回して、生徒達の曲がった性根を更にへし折っていく。
「お前ら!寄って集って一人の生徒をいじめるんじゃない!」
「あぁん!!?初等部のガキがうるせぇぞ!!!」
高等部3年(12~13歳)とは思えない様な角ばった顔の男を中心に、4人の生徒が1人の男子を苛めていた。
「生徒指導部送りにしてやるぞ!」
「うぜぇんだよ『火球』!」
「『エアスラッシュ』!」
「『マッドポンプ』!」
「『ウォーターボール』!」
四大属性全てを丸っと相手する事はできない。
全てが全て、相性という面では拮抗しているからだ。
が、それはあくまで同等の実力を相手した場合のみ。
「っすぃ!!」
超絶美少女は薄く息を吐くと、持っていた木刀を十字に薙ぐ。
それだけで、それぞれの魔法は掻き消される。
さらに、
「ぎゃっ」
「ぺっ」
「ぼっ」
「ぎぃっ」
柄の部分を首筋に叩きつける事によって、意識を刈り取る。
それだけで、四人の不良生徒を無力化してしまった。
「終わりました。次は?」
『ああ、第三校舎で謎の魔力反応、調査してくれ。』
「それって旧校舎よね?立ち入りは?」
『基本禁止になっている筈だ。』
「了解」
簡単に最低限の情報共有だけをした超絶美少女は、不良達を片手で引き摺り、その場を離れようとする。
「あっ、あの!」
「ん?何?」
「お、お名前を教えてください!」
「ハクビよ。ハクビ・デイジー。」
「えっと、ぼく。」
その男子の言いたい事を察した超絶美少女ハクは、続きを待たずに歩きはじめる。
この展開は見飽きた。
断っても、5回に1回くらいはストーカー化するから、もう聞かない事にしている。
「私には恋人がいるから。」
そう言って踵を返すと、そのまま第三校舎へと歩いて行った。
◇◆◇
ハクはこれまで、努力を怠らなかった。
才能が無く、成長力が異常なまでに遅いノアに抑えつけられていた8年弱。
それが解き放たれ、90%の弱体化が解除された今のハクのステータスが
◇ ◆ ◇
ハクビ・デイジー 十歳
HP:73000/73000
筋力:999999×9
魔力:89000
敏捷:820000×12
忍耐:870000×4
知力:15900
幸運:50
適性魔法属性:【無】【風】【水】【闇】【光】
固有属性【天国】【魔剣】【模倣】
加護:【剣神の加護】【##の加護】【美神の加護】
【剣神の加護】剣の熟練度が高まる。
【##の加護】###############
【美神の加護】この加護を得た者のみが超絶美少女を名乗れる。
称号:【剣士見習い】【剣士】【上級剣士】【学園のアイドル】【高速剣士】【神速剣士】【近衛見習い】
【剣士見習い】筋力が1.5倍
【剣士】筋力が2倍
【上級剣士】筋力が2倍、敏捷が2倍、忍耐が2倍
【学園のアイドル】###が###%UP
【高速剣士】筋力が1.5倍、敏捷が2倍
【神速剣士】敏捷が3倍
【近衛見習い】忍耐が2倍
◇ ◆ ◇
所々訳の分からない物もあるが、その性能は概ね『異常』の域。
実は、高等部3年の生徒の平均は、これから二つほど0を抜いた数字、つまりは千の単位といったところ。
ハクを除いた過去最高は、現学園長のアルテラントが、生徒会長だった頃、敏捷が21000。魔力が13000。
それを大幅に上回るハクのステータスは、超高度の訓練と、異常なまでの戦闘回数の結果である。
そこでふと、周囲を見渡したハクは、予定の変更を決める。
「ルルロラル、いる?」
「ここに」
音も無く現れた親友に対して、慈愛の笑みを浮かべるハク。
「なんとなくこれから用事ができそうなの。だから代わりに、第三校舎での怪しい集団について調査してきて。」
「御意に。」
翼を羽ばたかせたはずのルルロラルは、無音のままどこかへと消えた。
それと同時に、黒い縦長の影が目の前に現れる。
以前に比べて、微妙に変な装飾の増えたソレは、異形の口を開く。
「久しぶりッス。」
「ええ、久しぶり、ポストル。今回は何?」
「ノアさんがハクさんにこれを」
そう言って手渡されたのは、掌サイズの箱と、小さな紙。
『ハクへ、そろそろ俺の居場所を突き止めた頃でしょう。
以前と比べて、どれくらい強くなったのか、楽しみでしかたありません。
ところで、俺は今とある国で『装備品』というステータス上昇効果のある物を作っています。
そこで、これをハクにあげます。
有効活用してください
ノア・オドトン。』
それを読んで箱を開けると、そこには6個の指輪が入っていた。
金属の様で宝石の様でもある、質素な指輪。
つける指によってサイズが違う細かい設計は、ハクの指の太さにちょうど当てはまっていた。
「えっと、この指輪の説明を」
「要らないわ。私も、『鑑定』くらいは使えるもの」
そう言って、目に魔力を込める。
この数年で、苦手だった魔法も、教師陣以上の熟練度へと進化していた。
『召喚の指輪』あらゆる物を『異空間』から取り出せる。
『収納の指輪』あらゆる物を『異空間』へ仕舞い込める。
『魔力の指輪』余剰分の魔力を蓄える事が出来る。
『調和の指輪』体調管理を全て自動で行ってくれる。
『婚約の指輪』愛する者がいると、愛の大きさによってステータスが上がる。
※隠し機能つき
『##の指輪』隠し機能満載の万能指輪。
「ふふっ、おっも。」
見る人が見れば、ゾクゾクしてしまいそうな妖艶な笑みを浮かべて、ハクは悦に入る。
「重いよ。他の女の子が見たら絶対ドン引きしてるよ。でも、そこが可愛いなぁ。」
少し下品に笑って、全身にヒビが入る様な快感が走る。
クネクネと腰を振り、それに合わせて木刀が地面に擦れる。
「いつか、ボコボコのボッコボコにして、立ち直れなくしたいな。そしたら、養ってずっと守ってあげるのに。」
それを見ていたポストルは戦慄する。
「ノアさん、幼馴染さんが変な性癖に目覚めてますよ。」




