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「う~ん、ダッセェな!」
『仕方ねェだろ。色合いはどうしてもポストルに合わせられなかったんだよ。』
まあ、白黒禁止縛りだったら、全身真っ黒なポストルには絶対に合わない。
むしろ、色を統一したのは英断だっただろう。
装着された『装備品』は、完結に三つ。
一つは、ひたすら足の速くなる靴。『ヘルメスシューズ』
これには、特殊機能として『環境適応歩行』と『すり減り防止』が付いている。
もう一つは、障害物を無視できる透過の兜を召喚する指輪。『ハデスメットリング』
これは特殊機能がメインの『装備品』のため、ステータスの上昇値は微々たるものだが、『透過』だけでなく『自動回復』や『向かい風無効』なども付いている。
そして最後は、物が大量に入るだけの『ディメンションポケット』
決して半円形で、腹にくっつく形で、スペアがある訳じゃない。
焦っても中身を間違えてしまわないように調整している。
と、あとは細々とした、バッジや指輪なんかが多く、全てに僅かだが『敏捷上昇』が付いている。
「わージャラジャラッス。良いッスねェ。」
『そうだろそうだろ。似合ってるぞ。』
自分の作品を褒めて貰えたマキはご満悦らしい。
ダッセェと言った俺の言葉は完全に忘れている様子。
「じゃ、ポストルにはキクスとゴブリンズに、この『装備品』を送ってもらう。」
「了解ッス。」
「あと、オマケ程度で良いんだが、これをハクに。」
そう言って俺は―――
◇◆◇
ポストルが出て行ったのを見送り、俺はカムに『失敗作』達を見せる。
まあ良く分からない見た目の物が殆どで、良く分からない効果の物も多かった。
『神なる骨』
####が####UP
####を###した時##が#####UP
特#機能『G』『=』『type』
『*$”の包帯』
包んだ##が###の#を得る。
また###の#%を覆うと###に乗っ取られる。
『器』
口 口
大
口 口
訳が分からん。
最後に関しては説明欄手抜きだろ。
「はぁ、『ボックス』の肥やしになるだけか。」
「ノアさん?」
どうやらタイミングを見計らっていたらしく、ユーリが部屋に入ってくる。
その顔はちょっと嬉しそうで
「アイツら3人は公国に帰るそうです。」
「そうか、こっちは手間が減って嬉しい限りだ。」
ぶっちゃけ、ユーリ一人でもめんどくさい。
指導系の称号は、大抵がHP上昇だ。
それを踏まえて考えても、ユーリが俺に返してくれる恩恵はHP+1000くらい。
微妙なんだよなぁ。
「ってことで、スクワット150回。」
「筋トレ......」
そう、筋トレだ。
が、それは絶対重要項。
魔法をメインに扱うにしても、攻撃を避ける敏捷、長時間歩き続けるスタミナ。
それらを手に入れる為には足の筋肉を育てる必要がある。
「じゃ、スクワットが終わったら教えろ。俺はマキと『装備品』を作ってくる。」
そう言って、『分身』を監督役に置いて部屋から出て行く。
「......大丈夫かな。」
「大丈夫だ。まだまだこれでも優しい。」
「......誰?」
「ノアの『分身』だ。今日1日はありきたりな筋トレを行うだけだが、明日からは筋トレに平行して、魔力を全身から垂れ流す訓練を行って貰う。」
「それは、どんな意味が?」
「魔法をメインに戦うヤツは、魔法を使っている時に動き続ける必要がある。固定砲台は使えない。」
「でも私の光線を使うときは止まらないと。」
「俺の『魔力砲』は動きながら撃てる。狙いにくさは練度でいくらか補える。」
正確に狙うのでなければ、横に大きく振るだけでも十分な効果を得られる。
しかし、パーティを組む場合はその例に当てはまらず、仲間を傷付けないための正確な攻撃が必要と成ってくる。
「いろんな事をやってもらう。その中で一番多いのはやっぱり筋トレだから、覚悟しておけ、終わった頃にはムッキムキになってるだろうよ。」
「......うわぁ。」
ドン引きするユーリ。
俺の『分身』は、できるだけ気力を持たせるために、極力会話を続けていた。