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体をぶっ壊し続け、ポーションで治し、魔力で補強し、【闘技】を連発し、場合によっては『破技』も『邪技』も『連技』も使って、殴り合い蹴り合い、殺し合った。
「たの、しいなぁあああ!!!」
「も、もう近寄るなぁああああ!!!」
徐々に逃げ腰になるプロドラを殴り続ける。
魔力で覆った拳も吹き飛び、その度に魔力で更に覆ってはポーションでくっつける。
最早、正拳突きの様に、行儀良く肘を曲げるなんてしていない。
野球のスローイング。テニスのストローク。
肘関節をまるで無視したぶん殴り。
黄色い亀がやってそうな動きだ。
愉しいな、楽しい愉しい。
おどけるのもここまでにして、ちゃんと、真面目に殴ろう。
「俺はお前をぶっ殺す!そして、更なる高みへと!」
「儂は儂は、最上級のドラゴンなのに!こ、こんなガキに負けてたまるかぁ!!!」
だめだ、ダメダメダメダメ。
逃げ腰じゃダメなんだよ。
殺る気満々で、重心を俺に近付けて、もっと腰を落として、顎を引いて拳を握って歯を食いしばって眼力を強めて全身に力を入れて。
「OOOOOOOOO!!!!!」
「AAAAAAAAA!!!!!」
そうして混じり合った拳は、弾け合い、それでも、俺の拳は、プロミネンスドラゴンの心臓に届く。
「GYAAAAAA!!!!!」
全身を貫く様な断末魔が響き渡り、プロドラの体が光に包まれる。
その光は小さな、小さな蛍の様な、光の粒子へと散り、俺の体に集まる。
「これは......?」
『プロミネンスドラゴンを倒しました。【竜殺し】【ジャイアントキリング】を手に入れました。【太陽の竜の加護】を手に入れました。【太陽の竜の加護】によって、【竜化】という変身技を手に入れたよ。現時点での変身強化率は10%程度。最弱だけど、今後、竜を倒し続ければ、それだけ強くなるの。』
なぁるぅほぉどぉ。
夢が広がる。
ポーションを飲み込み、身体を万全に戻す。
ステータス画面を開いて見る。
◇ ◆ ◇
HP:4200/4200×1.82+3200
筋力:2500×138.24
魔力:7800×30.29+2000
敏捷:3400×22.84
忍耐:4500×24
知力:6200×10.01
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
HP:11000/11000×1.82+3200
筋力:10100×138.24
魔力:13400×30.29+2000
敏捷:10300×22.84
忍耐:15200×24
知力:10200×10.01
幸運:300
◇ ◆ ◇
軒並み桁が一つ増えている。
今まで、ピクリとも動かなかった幸運までもが、1.5倍となっている。
素ステータス自体の大幅な上昇が、覚醒の正体。
しかしながら、これによって、俺のステータスの合計値は、更なるインフレへと足を突っ込んだ。
それがこれ
◇ ◆ ◇
HP:23220
筋力:1396224
魔力:407886
敏捷:235252
忍耐:364800
知力:102102
◇ ◆ ◇
はは、ははははははは。
あれだけ伸び悩んでいたのに、こんな簡単に、7桁に到達してしまった。
死闘だったのは疑いようが無いが、それでも、ここまで高まってしまうなんて思ってもみなかった。
というか、これだけステータスが上昇していながら、ギリギリで勝てたプロドラはどれだけ強かったのだろう。
結局、アイツのステータスを見る事は無かった訳だが。
しっかし、これから、このステータスから、さらに10%強化?
ドラゴンを倒した数だけ、それが更に増える?
つまり、プロドラ10体で、俺はこれの2倍のステータスになるのか?
はっ、ははっ、はははっ。
愉しくて仕方ない。
脳汁が分泌され続けているのが実感できる。
気ン持ちぃぃいいいいいい!!!
「カム、連れて来てくれてありがとう。」
「こっちこそ、これくらいの下地を作り上げることができて良かったよ。あともう少し、あともう少しで私の理想の男になれる。」
「......別に、俺はお前と結婚する気は無いんだがなぁ。」
そう言って、カムに背を向け、プロドラのいた場所へと歩く。
スゥゥと大きく息を吸い、ニ、三拍。
「勝ったぞおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
俺はこれから、更に強くなることができるんだ。
その感動は、計り知れない程で、全身を余す事無く貫いた。
言葉に、できない。
「はっ、ははははははは。よっしゃ、帰ろう。」
「うん。」
俺達はまた、来た道を戻る。
今度は、オークもオーガもゴブリンも、同じくらいの強さに感じた。