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 一瞬だけ意識が飛ぶ。

衝撃に、魂が外へ飛び出した気分だ。


 しかし、飛んだと言っても、力は抜けておらず、ちゃんと腰が入っている。


『魔獣鎧』?『魔力嵐』?


ははっ。


 今はそれらなどどうでも良い。


「がああああ!!!」

「ぐおおおお!!!」


 魔力でのコーティングは怠らない。

拳には、超強化型の『魔力拳』を纏わせている。


 密度は過去最高。

一般人でも見る事のできる現状最高の拳。


 一対一、正々堂々の殴り合い。


「だと思ったか?」


 そう言って、俺はプロドラの後頭部をぶん殴る。


じゃあ、殴っているのは?


 10(雑魚)分身の俺だよ。


 ただ、拳自体は本当に、4000くらいの魔力を注いでいる。


じゃあ、なんで本体に気付かなかったかって?


 さあ?『魔力嵐』で探知能力死んでたんじゃね?


「くうう!!儂を愚弄するかぁあああ!!!」


 げっ、最終形態プロドラ状態で怒鳴られたら、流石に俺もビビる。


後頭部を殴られ、若干怯んだプロドラは、怒りのままに拳を振り上げる。


が―――


「ふごっ、ぶぐっ」


 肋、膝、コメカミに顎。


様々な箇所に次々と当たる謎の物体。


「プロミネンスドラゴンから、プロミネンスバカゴンに改名しろよ!そしたらプロバカって呼んでやるからよぉ!!」


【熱の精霊の加護】

バンディッド大砂海で契約した、熱の精霊イムの加護による、魔力への温度付与。


 これにより、『魔力嵐』という大量の砂塵の中に、『熱魔力』という、更にまぎれた石礫を仕込むことに成功。

 大きめの『魔力拳』をぶっぱする。


 プロミネンスドラゴンとかいう未知の化物相手に、効きそうな手は全て打つ。


 火っぽい名前だし、サーモグラフィ的な温度での探知もできるだろ。

絶対、全身から出てる炎とかソレだろ。


 魔力だけでも探知できるかもしれないじゃん?

なんなら気配とかも、分かるかもだし。


ってことで、俺も殆ど把握してないレベルで色々な対策を張らせてもらった・


だが、俺の狡猾さよりもズルいと思うのは


「ぐううおおおおおおお!!!!」


 どれだけ殴っても外してもくらいついて来るプロドラの異常な体力。


足を引っ掛けても、脳震盪を起こしても、全然ダウンしない。


「おおおおおおお!!!!『AAAAAAAA』!!!!」


 技名を言えない。

発声も、思考も間に合わない。

 これが、上の上の戦い。


 俺じゃ、まだ、足りないのか?


くそっ


 体がむず痒い。

体の芯も、骨も筋肉も何もかも。

 ただ袖を通した様な魔力にさえ、むず痒さを感じる。


『MW』


 嗚呼、楽しいし、気持ちいい。

殴り合う肉と肉。

 ぶつけ合う力と力。

  削り合う心と心。


『MWMW』


 何も考えない。

ただ無邪気に、それでいて狡猾に。

 あああああああ。

楽しくて愉しくて


『MWMWMW』


 骨の軋みはヒビの入る音に代わり。

肉のむず痒さは激痛と快感に変わり。

 魔力は、多大な砂の塊だったものが、洗練された繊維へと替わる。


 芯が、解放される。


『MWMWMWMW』


「これが、俺だ。」


『MWMWMWMWMWMWMWMWMWMW』


 全身が爆発する。

絶頂の様な快感。

 身から溢れ出る様な力が、俺の背中を掻き毟る。


「ぬうっ!?これは、突然......なんだこれは!?まさか、覚醒でもしたのか!?」

「そのまさかさぁ。俺は今、すごく満たされている。それもただの一時の物だろうけど、今はそれで良い。」

「た、たった1回の覚醒ごときで、人間が儂を越える気なのか!儂は、儂はただのドラゴンから、ここに至るまでに、4回も覚醒が必要だったのに!き、貴様ぁあああああ!!!!!」


 嫉妬が描く暴力は、非常に優雅な絵画に見えた。

そう、たかが絵画。

 絵画に俺は傷付けられない。


「闘技『華乱枯乱(からんころん)』」


 理論上でしか伝承されて来なかった技。

破技の破壊力と、邪技の手数と、連技の瞬発力と、動技の躍動感と、小技の器用さを併せ持った技。


 実際にやったら、体が滅びる。

腕が千切れるどころの騒ぎじゃない。


 だけど、今の俺なら、魔力で覆った腕で、最下級くらいは撃てる。


「ぬ、ぬううううう!!!」


 プロドラに突き刺さる五指は、弾け飛びそうになりそうな勢いを噛み殺し、全身から溢れ出た血液は辺りを彩る華と成り、全身が枯れ果てた死体と成る。


 今となっては、ガサガサの感触も、全身の虚脱感も気持ちがいい。


「はあああああああ!!!!」

「うううううGYAAAAAAA!!!!!!!」


 指は更に押し迫り、絞り切った体液が更に弾ける。


嗚呼嗚呼嗚呼、気持ちいいぃぃいい。

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― 新着の感想 ―
おまえみたいなのを天才って言うんちゃうんか?
2025/09/29 18:01 あうぐれしあ
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