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なんとなくタイトル変えました。
やっぱり4行くらい長いタイトルの方が良いのかな?
プロミネンスドラゴン、略してプロドラの見た目は、真っ赤な竜。
個人的に龍と竜の違いは西洋か東洋かで、強さは関係無いと思ってるからな。
デカいトカゲに、蝙蝠の様な羽。
全身から絶え間なく炎が湧き立ち、目は獰猛に光っている。
「GYAAAAAAAA!!!!!!」
炎の熱と、全身の躍動による大気の振動で、軽く吹っ飛ばされそうになる。
「『分身』!」
もう一人の俺を創り出し、特攻させる。
その間に、このプロドラの攻略法を考える。
んー、尻尾の一振りで右腕が取れ?
んー、爪での引っ掻きで胴体が切り裂かれ?
んー、首を鋭い牙で噛まれ?
んー、空中に放り投げられて火で炭に?
無理じゃね?
「体が熱いと相対的に気分は冷えるよね。グロッキーになるっていうかさ。」
「何言ってんの?」
「やる気が出るまで時間が掛かるって事だよ!『魔力砲』!」
500程での『魔力砲』で牽制しつつ、大量の『分身』を創り出す。
全長十数メートルの巨体に、正直俺の技は絶対に通じない。
そりゃ、衝撃を伝えたり、骨を折る様な技なら、多少は効果があるだろうが、少なくとも『破技』と『連技』は通じない。
正確な前知識と、十分な前提を整えていない、つまり人間か、それに準ずる生物でない限り内臓破裂も碌にできない。
それと同様、人間らしからぬ動きと、人間に備わっていない武器のある生物には、受け流し技は完全には通らない。
完璧なタイミングと、完璧な回転を以てしても、余裕で切り刻まれる。
だからこそ、完全自律型の俺も、普通に瞬殺されたのだろう。
「ということで、魔力ごり押しぃぃいいい!!!」
追加で1500の『螺旋魔力砲』を右手に、4000の『混沌螺旋砲』を左手に。
ついでに、口から全力の5000『魔力砲』をぶっ放す。
その間、手足を止めたプロドラに、分身の俺が次々と技を仕掛ける。
通ってそうな技は全て把握し、第二波に活かす。
「がああああ!!!AAAAAAAAAAA!!!!」
大量の魔力を得た俺は、ここ最近で幾つもの魔法を習得した。
練度で言えばまだまだで、実用化には少し不安な要素の多い魔法ばかりで、あまりカムとかオッサンとの戦いでは使えなかったが、『混沌螺旋砲』が最大出力ではない。
「『魔獣鎧』!!」
対非人型戦用『魔力鎧』。
鋭い円錐状の爪を創り出し、口元には大きなアギトと言うべき牙が並び、最小限に効率化された全身鎧を纏った、10000の魔力で作った『分身』が3体出現する。
一体に対して30000もの魔力を使った贅沢仕様。
硬さに重点を置いた結果、柔軟性を欠いた装甲になってしまったが、プロドラの鱗をぶち剥がすならこれが良い。
「AAAAAAA!!!」
『魔力砲』の射出を止め、俺も『魔獣鎧』を纏う。
体が若干軋むが、魔力を動かす操作と、身体操作の相乗効果で驚異的なスピードを出せる。
「GAAARRRAAAAA!!!」
「GYYYYAAAAAAA!!!」
身体的な回転ではなく、魔力を回転させることによる掘削効果を上乗せ、思い付く限りで俺の全力をぶつける。
こんなでかくて頑丈な的があるんだから、いくらでもぶつけられる。
ああ、脳汁溢れる。
たの、しい。
―――――
「WMWMWMWMWMWMW」
魔力が爆発し、聞き覚えのある音が俺の耳をつんざく。
これは、たしか。
というか、プロドラは、どこに?
「最近の若者は怖いのう。戦うのは良いんじゃが、戦法が前代未聞過ぎでビビるわ。」
「GYAAA!......イムみてぇな喋り方だなぁ。」
『わ、妾と一緒にするんじゃない!』
空耳は無視して、『魔獣鎧』の爪先を開く。
「儂は最強のドラゴンで、火が得意というのも周知の事実じゃからなぁ。水や風や土。あとは複数人での挑戦は経験が多いが、単体で挑まれたのは久しぶりじゃし、お主動きがキモいんじゃが。見た事無い動きするし。」
「じゃあ有効っぽいなぁ、AAAAA!!!」
プロドラが人型に変わったことで、的は絞られたものの、技が多少通る様になったらしく、今までの悠然とした態度が嘘のように、軽やかに宙を舞う羽の様な回避重視の戦い方にシフトチェンジした。
つぅまぁりぃ?
「当たったらヤバいんだなぁああああ!!!?」
「ぬおおおお!?」
直線的にしか射出できない『魔力砲』から、辺りを旋廻し、不規則な動きで奇襲をかける『魔力嵐』にチェンジ。
周囲に散らばった魔力を掻き集め、リユースする。
「ぐっ、おおおおお!!!OOOOOO!!!」
「ひょおおおお!?」
ラッシュラッシュラッシュ。
叩きこみに隙を作らず、相手に余裕を与えない。
純粋なステータスでは圧倒的に負けている以上、こういった所で詰め寄らなければ、逃げ回られるだけだ。
その為に、動きづらいよう『魔力嵐』を張ったんだから。
「とか、思っとるんじゃろ?んははは!!甘い甘い。お主は少し不器用じゃのう。お主に当たらぬ弾が、何故近間の儂に当たると思うんじゃ?」
「!!?......UUUUUUOOOOOOOOOO!!!!」
プロドラに指摘されても、俺は戦法を変えなかった。
その指摘内容と、指摘したという事実が、俺の作戦を理解していない何よりの証拠だった。
「ほう?年寄りの話には耳を傾けんか!」
「ぐううおおおお!!!」
徐々に反撃を始めるプロドラに、装甲が剥がれ落ちる。
「んはは、愚策も愚策。ドラゴンという魔物には、魔法も剣も効かぬ。挑むも愚かだが、まさか効かぬを重ねてくるとは。それではもっと効かぬだけぞ。」
「んぶっ!!」
顔面に右ストレート。
虚を突かれた綺麗な一撃に、俺は何度も回転して後頭部から地面に激突する。
そう、何度も回転した。
「ほれほれ。どうした?その脆弱な体では、今の一撃は効いただろう。これが彼我の差。どうだ?まだあと十年ほど研鑽を重ねれば、もっといい勝負が出来る。出直す気は?」
「くくくっ、良いじゃねェか。これならノアも、ちゃんと覚醒できるんじゃねェか?」
「ん?精......霊......?」
「若干ちげェ。オレには『マキ』って名前があるし、今の状態は『オートモード』の強化版『精霊戦士』ィ。ノアが何をしようとしてるか、てめェにゃわかんねェよ。バァカ」
爆発した様な勢いで立ち上がり、魔力の一切を遮断する。
マキが扱えるのはマキの魔力だけ、つまり、最大で2000程度の魔力しか使えないのだが。
「てめェみたいな老害野郎は、2000の魔力で十分だァ。」
指の骨をバキッと鳴らして、そう言った。