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 目を覚まして、眠ってを繰り返して、50回以降数えてない。


 目を覚ます度に、昼と夜が交互に訪れる。


思考も碌にできない。


 時折感じる痛みと、謎の倦怠感。


「ん、良い感じに調節できたかな?久しぶりー。どうだった?私の『まどろみの造形師』。」


 終わりは突然やってきた。

カムは楽しそうに微笑んで、俺に近寄ってきた。


 頭痛と、変な関節痛と、筋肉痛っぽい何か。


もう眠気が来ないから、ソッと立ち上がると、ふと違和感に気付く。


「んんん?視線が」

「君、重度の睡眠不足と栄養失調だったんだよ。視力の低下と骨髄の成長不足。筋肉の増加による骨の成長阻害。関節部への負担による末端部へのストレス。」


 心当たりはある。

俺は8歳時から10歳になるまでの10年で、そこまで身長が伸びなかった。

 成長期が遅いのかと思ったのだが、そうでもない。


 ステータスに固執した結果、身体の成長を無視していたらしい。


「よし、ついて来て、私が君を冒険者にしてあげる。なんとなくだけど、君ならきっと、私の理想に近付けるから。」

「参考までに、聞かせてほしい。理想とは?」

「私より強い男と結婚する事。」


 ......は?


◇◆◇


「ようこそ、こちらアド王国北部都市ギルド。冒険者志望ですね?詳しい説明は、カムさんが行ってくれるということですので、こちらの紙に要記入事項を書いてください。」


 とりあえず、街中で一番大きな建物に入ると、ホールの受付嬢にそう言われた。


 どうやら、ここの建物は複数のギルドがテナントの様に入っている仕様らしく、冒険者、商業、鍛冶等のギルドがあり、基本的なやり取りなんかはこのホールで行うらしい。

 

 一定のランクに届けば、そこから上階の方で依頼を受けられるらしいし、まあ理に適った構造(つくり)ではある。


「んん、一応書いた。」

「はい。......属性が空欄ですよ。要記入ではありませんが、依頼の斡旋には重要な参考材料になりますので、ご一考を」

「あ、【無】属性なんで大丈夫です。」

「へ?......い、いえ、大丈夫ですか。なら、構いませんが、カムさん?」

「ん?大丈夫だよ?ステータス的にも一人前だって!」

「そのガキが一人前だって?」


 カムの言葉に、快活な声が反応する。

受付嬢ではない、別の人間。

 後ろから声をかけられ、振り返ると


「このガキが次の育成相手かぁ?前のヤツの方が素質ありそうだったが?」

「んーまあ、直観だから何とも言えないんだけど、きっと強くなるよ。」


 声をかけてきたのは、身長が2メートル以上ありそうなオッサン。

『鑑定』をかけるまでもない。


 コイツも......強い。


「ガハハハ!いっちょ、俺がテストしてやろうか!」

「よろしくお願いします。」

「流石に新人相手に......へ?」


 テンプレート的な展開だったら速攻で蹴ったが、実力者なら構わない。俺が彼と闘わない理由は無い。

先程から受付嬢の驚く声しか聞いていないが、説明はカムから聞く事にする。


「ほう、流石カムが認めた弟子。プライドとの折り合いはバッチリか。」

「俺はカムの弟子じゃない。それに、事実とプライドは一切すり合わない。俺がガキで弱いのは事実。そこで怒るつもりは無い。」

「へえ。」


 オッサンはどこからか大きな斧を取り出すと、顎で『来い』と言ってきた。


「あのオッサンは、カムとどれくらい差がある?」

「んー?フツーに私の方が強いよ?あの人Bランクのソロだし。」

「......」


 もう何も驚かない。


◇◆◇


「情報をハンデとして開示しよう。勿論、俺の持っている斧は『装備品』。『轟斧マグニング』っつう名前だ。属性は【土】と【火】の【固有】無し!」


 流石に称号までは教えてくれないか。

俺とオッサンはギルドの地下にある闘技場で向かい合う。

 内装は、殆ど学園のアレと同じで、少し懐かしさを感じる。


「じゃあ、俺も。『装備品』無し、【無】属性。新人冒険者だ。」

「ハンデの意味ねェって言うか、お前本当に【無】属性なのかよ!?」

「んん?どういうことだ?」

「いや、自分の属性を他人に知られたくないヤツが【無】属性って言う事はあるけど、お前は違うんだろ?」


 うん、まあ。

隠す属性なんて無いからな。


「先手必勝!『魔力砲』!」


 一割という大量の魔力を注いだ『魔力砲』は、二年前の俺の肩幅程度しか無かった太さから、身長の半分程度の太さにまで進化していた。


「うおっ!?」

「『魔力弾』!『分身』」


 魔力弾を通常サイズで50個。

勝手に周囲を旋廻するよう設定する。


 『魔力砲』は目眩まし。『魔力弾』は撹乱。

『分身』で囮を作る。


 ここまでは二年間で作り上げた俺の戦法の初手。

そこからどうするかは相手の出方次第。


「ただの魔力をここまでの技術に昇華する。その根性は勇ましいが、まだまだ練度が足りないぞ!」

「ッB『魔力砲』と『魔力弾』」


 『分身』に状態維持を任せ、俺は近接戦に持ち込む。

相手の使う武器は斧。であれば、振りは大きく、一撃が重くなる。

 つまり、速さで圧倒すれば、こちらの―――


「とかだろうな。だが甘い!『轟斧』!」

「ぐっ、おおおおお!?」


 地面に突き立てた斧を中心に、異常な震度の揺れが起こる。

う、動けない。


「そういう時は飛べ!瞬間的な判断は5点だな!基礎の固まり方は8点だ!」

「ぐおお『サイコ――』『強化』!」


 『サイコキネシス』で飛ぼうとして、瞬間『強化』に切り替える。

先程まで地面に突き立てていた斧が、オッサンの後ろに下げられていた。

 これは、浮き上がった所を殴りつけるつもりの構えだ。


「ほう、相手が自分の能力を知っていないという高の括り方をしない。悪くなぁい!!」

「『ボックス』!」


『他者の『装備品』は入れられません。ドロボーは駄目よ?』


 なんっ!?

そんなポケ○ンシステムが適用されてるのか!?


 チッ、敵の『装備品』を盗めないなら、次の手を


「なんか今失敗したな?そういう時に即座の対応は必須!『炎爆』!」


 大量の土玉が周囲に転がり、揺れから転がりが加速し、会場内をビリヤードの様に弾きまわる。

『魔力弾』は空中を旋回している為、転がる土玉を破壊する事はできない。


 しかも、オッサンは更に大量に土玉を投入してくる。

......『炎爆』?

 転倒目的じゃないのか!


「判断遅ぉい!!」


BBBBAAAARRRRNNNN!!!!


 爆風は俺の体を包み、土玉だった塊は、一気に欠片を爆散させた。


「ぐぅうううう!!」

「忍耐が高いが、やっぱり微妙だな!」


 微妙、微妙だと?

『分身』が微妙なら、(本体)はどうだ?


「『魔力砲』!」

「ぬっ!?」


 今度は5割。だが、太さは求めない。

速く、硬さに力を入れ、威力倍増。


「ぜあああああ!!!!」

「ぬおおおおお!!!?」


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