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 ノアがゴブリンの軍勢と騎士を退けた翌日。

警戒態勢を解いた街の住民たちは、少数精鋭を率いて、村に向かって歩いていった。


 村からの避難者も確保、ギルドで預かっている状態ではあるが、人が避難する状態が嘘であるとは思えず、男の方は手当の跡があるも、重傷を負っていた。


 【治癒】魔法の使い手によって、手が腐り落ちる事はなかったものの、未だ意識不明で、起きるのには数日かかるという。


 そのため、彼らの息子という少年に道案内をしてもらい、ゴブリンの死体や、大量の人間の死体を確認し、ギルドに報告した。


 それを受け取ったギルマスは、直ぐに本部に連絡。

見つかるだけ集めて、それらを街外れに集める事にした。


「ノア君はこの量を倒したというのか?どんな魔法を使ったというのだ。」

「というよりは、これらがゴブリンで良かったといったところだ。これがオークやオーガなら、絶対に勝てなかった。」

「感謝を伝えたいところだが、彼はもうここに居ないのだろう?」

「アイツはアホだから、きっともっと強くなりたいとかで修行に行ったんだと思う。これからはポストルを経由しないと、連絡は取れないだろう。」


 ギルマスは、ノアの残した『分身』と対話し、現状の把握と、これからについての考えを巡らせていた。


本部から数人が派遣されるという話。

 『分身』から聞いた、Aランク達の話。

ゴブリンと侵攻のダブルブッキング。

 ここ数日だけで、様々な事が起きており、混乱が募る。


 非常に難しい状況を、一つ一つ解決しようと、ギルマスは思案した。


◇◆◇


 場所は変わって学園。


前任の学園長が急遽退職。

 原因は一部の者しか知らないが、それ以上に、旧学園長が行っていた不正の数々が明るみに出たせいで、数名の職員が国から直接クビにされた。


 現在は、生徒会長と副学園長、各教員でどうにか運営している状態だ。


「ハク君、ノア君の再編入についての準備はできたのだが、本当に病院にいるのだろうか?」

「もしかしたら、もういないのかも。」


 生徒会長に呼び出された『生徒会武力員』のハクは、ノアの行動についての参考人として、様々な可能性を出していた。


 最初は冒険者ギルド。

次に旅。

 最後にやっと病院。


 一つ目の冒険者ギルドは、年齢制限によって不可能。

二つ目が実質上一番可能性は高かったが、あまりに範囲が広すぎて、特定できなかった。


 故に、三つ目の病院。

ヴィルから、ノアが女医と何かの約束を取り付けていたという事を聞き、それを参考に、その女医の所属している病院を特定。


 皇帝に借り付けた第二近衛騎士団の団員を派遣したのだが。


見事なまでの成果ゼロ


 何者かに邪魔をされて、病院内に入れない。

そのため、ノアがその中にいる可能性が高いと思うのだが、如何せん確認が取れない。


「できれば、早めに帰って来て貰いたいんだが。」

「きっと見つかっても、そう簡単には帰って来ないと思う。」


 ハクの弱気、というよりも、確信めいた発言に、生徒会長が眉をひそめる。


「それはどういう?」

「きっとノアは、不当に退学にした学園に対して、少なからず怒ってる。私も、第二近衛騎士団とは会ったが、アレの態度じゃ納得はできない。慎重でひねくれてるノアは、そう簡単には釣れない。」


 ハクはノアに学園に戻って貰いたい。

しかし、ノアが恐らく戻って来ない事も理解している。


 そのため、ノアが帰ってきたその時の為に、いつまでも鍛錬を辞めない。

それ故に、生徒会に参加したのだ。




◇◆◇


 

 公国、某所にて。


「わ、我が赤翼騎士団が全滅!?ば、馬鹿な!そんな事があるわけなかろう!!」

「セドリック様、残念ながら真実の様です。事実、大量の血痕と共に、数か所が歪に凹んだ鎧と、大量の肉片が発見されました。都の南部の小さな町の、更に先にある森でのことです。」

「そ、そのような田舎に、300を越える盗賊を連日で倒し、5000もの騎士を蹴散らす者がいるとでも!?馬鹿を言うな!これでは、これでは儂は!儂の大望は!!」


 当主、セドリックの望みは、これから世界を征服し、数多の国を蹂躙する『魔王軍』に取り入る事。

その為には、できるだけ広く大きな土地を献上する必要があった。


 簡単に言えば、都を取れれば、王都に侵略するのも容易いと思っていた。

王都は都と違い、強い者が少ない。


 いないわけではないが、数えても3人。

現皇帝、宮仕えの魔女、SSS(・・・)ランクの化物。


 5000の軍勢をどうにかできるのも、アイツらだけだと思っていた。

しかし、まさかその最初。

 誰にも知られず、何かを奪う事もできず、片田舎すら崩せず、ただ損失だけを被った。


 これでは終われない、しかし、これ以上を出すことは出来ない。


 公国という貴族が頭の国。

侯爵という地位を捨てない限り、前回以上の成果は期待できない。

 しかし、権力が拮抗している七つの貴族家の中で、自分だけが力を失えば、そこからはただひたすら、蹂躙されてしまう。


 それだけは避けたい。

しかし、それはできない。

 他家への貸しも特には無い。


 ほぼ確定で詰んでいた。


「はは、は、は。」


 虚しい笑い声だけが、だだっ広い屋敷に木霊する。


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