表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/310

117

 湖から出てきた筋肉ゴブリン、仮称ゴブリン・キング。略称キングと俺は殴り合う。

太い腕からは想像もつかない様な光速ジャブを放つ上に、ステップの取り方が絶妙で、近付くっことができない。


 紙一重で避けるのがやっとな猛攻ではあるが、避けられないわけではない。


「当た、れや!」

「連技『旋風』」


 扇の舞の様に、拳を撫でつけ避ける。

触れた拳は、その距離感と手応えとの違和感によって、僅かながら肘にダメージを残す。


「連技『番崩』」


 更には、伸びきった肘を軽く押すことで、更なるダメージを与える。

キングはその違和感に気付かない。


 はぁ、俺にもっと力があれば、もっと豪快で派手な方法で倒せたんだろうけど。

『並行』での処理を行わないと、こんな無茶な状況で戦えやしない。


「連技『千脆万落』」


 蒸気が如き滑らかさ。

回転による推進力の受け流し。

 こいつの攻撃は、一切俺にダメージを与えない。


「ぐうううう!!!気持ち、悪い!」


 痺れを切らせて、キングは大きな歩幅で、上体を低くしてタックルを仕掛けてくる。

が、それは悪手だ。


「『魔力砲』!!」


 湖がバックにあるため、構わず『魔力砲』を撃てる。

普通の魔力と違い、貫通性が高い『魔力砲』は、光と同じ様な性質らしく、水に入ったら勝手に分散される。

 どういう原理なのかは知らない。


「がああああ!!死ねえええええ!!」

「んん!!?」


 なんと、全身に魔力を纏ったらしいキングは、そのままタックルを続行。

ほぼ無傷の状態で、俺は腰を掴まれる。


「まずっ―――」

「GGGGGAAAAARRRRUUUUAAA!!!!」


 間近の咆哮に耳がイカれ、分厚い筋肉が俺の動きを阻む。

体重の軽い俺は、そのまま簡単に持ち上げられ、ジャーマン・スープレックスの様に頭から一回転―――。


「『魔力砲』!」


 地面に絶妙な大きさの穴を開ける。

それによって、俺の体だけが衝撃を逃れて溝の中へ、キングは肩が溝にぶち当たり、その反動から手を離した。


「っぶねええ!!!」


 大きな声で、死にかけた恐怖を掻き消す。

ここで怯めば、待っているのは死のみ。


「パルエラ!【称号】を解放―――」

『それは認めない』


 【称号】による強化を求め、声を上げると、パルエラやマキ達とは違う、機械的な音声が聞こえ、俺の視界は暗転した。


「なっ―――」


◇◆◇


 そこは、見覚えのある黒い空間だった。

とはいえ、俺は恐らくそれを見てはいない。


『情けない。あれだけの啖呵を切っておきながら、ピンチになってはそうやってズルをするつもりかい?』

「......」

『そりゃ、【称号】を解放して、一気に倍率強化をすれば、そりゃゴブリン・キングなんて瞬殺できるだろうさ。でもね、そんなご都合主義が許されると思う?』

「......」

『覚醒して強敵をブッ倒す。カッコいいよね?隠れた力が目覚めて、敵を瞬殺する。痺れるよね?真の力?選ばれし者?ハハッ、憧れるゥ。』


 分かってる。

コイツは俺をからかって遊んでいるだけだ。

 俺を怒らせて、【称号】を解放せずにキングを倒すように促すつもりなのだろう。


それはそれでありきたりな展開だ。


 俺としても、そうできればそうしたい。

努力とか根性とか、そういう効率的じゃない言葉も、実は好きだし。


「チッ、癪だが、イライラするが、それでもやっぱり、俺には力が足りない。あのキングのステータスは、軽く俺の10倍はあった。」

『そんな事が正当な理由かねぇ。ほら、彼。君の記憶にあるレオン君。彼は君とのステータス差が1000倍あっても、一切怯まず、対等に戦ったじゃないか。』

「それは例外―――っ!!!くっそがぁああああああ!!!!!」

『っ!?さ、最近の子は情緒不安定みたいだね......』


 俺が、この俺が、今なんて言おうとした?

『それは例外だから仕方ない』?

 ふざけるなよ。


「カロル、今すぐ俺を現実に戻せ。あのクソキングをぶっ潰す。」

『え?う、うん。分かったよ。』


 あっさりとそれを了承したカロルは、指と思しき部分をパチンと鳴らす。

それと同時に、暗い筈の視界が徐々に狭まって行き。


 現実へ帰還する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ