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 えー、アスタの訓練開始から二日が経った。

結局、あれからというもの毎日の様にゴブリンと盗賊のダブルブッキング戦線が繰り広げられているため、ここ数日の俺の平均睡眠時間は、2時間以下になってしまった。


 更には、この二日でほぼ全ての【特殊】属性をマスターしたアスタは、【固有】属性について自力で研究している。

 かなり集中している様なので、ついさっき見たステータスに、【特殊】属性が増えていた事は言わないでおこう。


 しかしながら、アスタの習得速度にはかなり驚かされた。

1日目には肺を凍らされ、細胞を肥大化させられて。

2日目には空高く打ち上げられて、全身の皮膚がグズグズに溶かされ、数時間暗闇をさまよった。


 結構疲労と、後はまだ背中辺りが痒いのだが、後遺症には至っていない。

多少苦しくても、ポーションで無理矢理回復した。


 ということなので、3日目の今日は、座学の時間にしている。

基本は、化学や医学について。

 氷結と錬金は、化学反応を理解すればある程度効率は増すだろうし、治癒は人体について知れば良くなるだろう。


 それ以前の、物が燃える原理やら、物質の構成についても、元高卒、現初等部中退の俺が教えてやろう。


◇◆◇


 ということで、全カットォォッ!!

つまらねぇ座学の三日間は全部省略ゥ!!


最終二日になったところで、増えた属性の練習に移る。

新しく増えたのは、前回と同じく【特殊】枠。


【獄炎】【電雷】【炭泥】【植物】【呪】【聖】


の六つ。


 やはり、【神】みたいな意味の分からない属性は入っていない。


ということで、それらを習得させるため、魔力を全身に張り巡らせて、準備を万端にする。


「二日前に見せた火を、今度はアスタの手で出してみろ!」

「はい!」


 らせん状に旋廻しながら、アスタの手に集束する魔力。

その量は、最早俺の魔力を優に越えて―――


地獄炎爆(バーニング)


あ、やばっ死―――


BBBAAAAAAAAARRRNNNNNNNN


 鼓膜が破裂したかと思った。

【氷結】の時よりも、圧倒的に出力に差がある。

 あー、魔力の煉り方とか、変換効率とか、あとは火の出し方とか教えたからか。


 全魔力を使いバリアを張っているのに、異常なまでの熱量で、目が開けられない。


 少なくとも、息を吸うだけで喉が痛いし、突き出した手は骨が見えている。


口に直接ポーションを入れていなければ、今頃二の腕から先くらいは消し飛んでいた。


 それに、バリアは全身を覆う形ではなく、大きく上に逸らす形にしたため、直撃は避けられており――――


 それよりも、この熱量を放出しているアスタは、無事なのか?

魔法が発動者に影響しないと分かっていても、もし熱がアスタを襲っていたら。


「げぶっ、ぐ『グイァ』」


 『クリア』と発音はできなくても、魔力はちゃんと形状を創り出す。

薄い膜を周囲に広げ、酸素なんかを除き、魔力だけを包み隠す。


「ひゅー、ひゅー。」

「お、おにいちゃん!」


嗚呼、良かった。

 無傷のアスタの姿が視界に移り、安堵からか、俺の視界は暗転する。


「......『分身』」


 自律思考型を二つ作って、俺は地面に倒れ込んだ。


◇◆◇


 やっべぇ。

全身を回復させ、意識が戻ったのはほぼ夕方。

日は赤くないが、思いっきり傾いており、俺が運ばれたベッドの横でアスタが寝ていた。


 体の感覚的には、ポーションの効果と、アスタの【治癒】の併用で治してもらったらしい。


 快調ではあるものの、アスタに心配をかけてしまった罪悪感から目を逸らしたくて、二度寝してしまいそうだ。


 とりあえず、このままでは腰に悪いので、アスタを俺と交代でベッドに寝かせて、外に出る。

どうやらまだ両親は家に帰ってきていないらしい。

 俺が生活費としては十分な金額を稼いでいるのに、二人は今まで通りに仕事をしている。


 すごい両親だと思うよ。


「おっ、起きたかノア?」


 家から少し離れた所に、キクスがゴブリンの山を作って待っていた。

どうやら、食べずに倒し尽くしたらしく、ほとんどが首をへし折られるか、頭蓋を割られるかで死んでいた。


「コイツらが襲って来てよ。食っても腹の足しにならねぇから、ノアの見舞いにと思って集めたんだ。ホムンクルスを作りゃ、多少は楽になるんだろ?」


 別に、過労で倒れた訳じゃない。

とはいえ、疲労が無かった訳でもない。

 寝起きのスッキリ感は、疲労解消の結果だったのかもしれない。


「ありがとな。助かるよ。」

「おう!」


 思わぬキクスの気遣いに、俺は少し嬉しくて。


ゴブリンの死体の山の先。

 本丸が姿を表しているのに、気付けなかった。


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