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 そろそろ夕方になる頃、Aランク達で山ができる程に、キクスは大暴れした。

結局、誰もキクスには勝てず、そのまま負け続けて今に至るのだが、流石にやり過ぎだと思う。

 いや、促したのは俺だし、キクスが戦ったらこうなるのは分かっていたんだけど、まあ、ねえ?


「ほら、キクス。おやつだぞ。」

「おやつ!!」


 最近は食い物の魅力に堕ちてくれたお陰で、おやつを使って釣れば、ある程度の操作は出来るようになった。

が、それでもやはり精密さは持てない。


「ぐぅ、まさかここまで強いとは。というか、あの人間ですら無さそうな技はなんだ?魔法か?」

「いいや、キクスがキマイラのホムンクルスだからできることだ。真似はしないほうがいい。」

「そうか。しかし、ここまでのホムンクルス。まさか君が作ったのか?」

「そういうことになるな。あ、そういうことになりますね。」

「急に敬語になるじゃないか。」


 年上ですので。と返して、話を切り変えた。


「誇張や狂言ではなく、事実だけを単刀直入に言います。これは、過度な暴力に対する対価と思ってください。」

「あ、ああ。わかった。」

「仮に『異能』としましょう。魔王軍は『異能』を持つ別世界からの侵略者です。彼らはこの世界で赤子として生まれ、成長を遂げてから集結、この世界を征服しようとしています。」


 めちゃくちゃこの世界の感覚に合わせて説明しても、やはり違和感が拭えない。

というか、途端にSFチックになったな。

 

「と、突然、荒唐無稽な話になったな。だが、ここは信じよう。君が8歳ばかりという事よりは、まだ信じられる。」


 お?さり気無くディスられたか?


「魔王軍に与しない『異能』持ちは、現在確認できている者で、俺に接触した男。マグナイトの学園長。マグナイトの生徒グレイの三人です。」

「な、なんだと?マグナイトの二人はたしか、少し前に重傷で見つかっていたが、まさかそんな関係性があるのか?しかし、それならそんな情報を知っている君は一体何者だ?」

「俺は、魔王軍と同じ世界から来た一般ピーポーです。」

「一般、ぴーぽー?何かの役職か?」

「いえ、一般人と言いたかっただけです。とにかく、俺は彼らの様な『異能』は持ち合せていません。強いて言うなら、多少早熟なだけです。」


 個人的には『異能(チートシステム)』は邪道なので、手に入れて魔改造するしかない。


「それが本当なら、是非我々に協力してもらいたい。」

「お断りします。俺が出来る協力は、情報提供までです。」

「それは、何か理由があるのか?」

「俺が趣味を優先する人間だからというだけですね。」

「せ、世界の危機よりも?」

「ええ、世界の危機よりも。」


 流石に世界の危機を目の当たりにすれば、ちゃんと働くしちゃんと闘うが、今の所まだ動く気配の無い魔王軍に対して、何かアクションをするのはやぶへびになりそうだし、そんな事の為に協力を強いられるのはお断りだ。


 ということで、俺はコイツらに対して『別に世界が滅ぼうと俺は関係ありません』的な狂人アピをする。


「俺は強くなる事にしか興味はありません。ステータスを上げるためだけに、今でも魔力を垂れ流しにするほどです。」

「ああ、この魔力はその為か。てっきり魔物寄せなのかと思った。」

「そんな事はどうでも良いんですよ。とりあえず、俺は協力しません。仮に強制するつもりなら、魔王軍に変わる第三勢力に成り得るので、そのつもりで。ちなみに、俺にはキクス以外にも、二桁単位の仲間がいます。内半数以上がホムンクルスです。」


 勿論全員が全員キクス程強くは無い。

とはいえ、彼らの事を知らない者からすると、キクスが10人以上いると捉えるわけで、それはまあ相当な脅威なわけだ。


「分かった。君の情報は有り難く貰っておく。情報の出所は漏らさない。代わりに、我々とは接点を持ってもらいたい。」

「構いませんが、連絡手段は?」

「我々が直に赴く。君がどこに居ようと、見つけてみせる。」


 それはそれで怖いんだけど。

まあ、そっちが手間を請け負ってくれるなら、それで良い。

 それに、多分コイツらの上司的ポジションは皇帝だと思うし、アレクサンダー君の親なら、俺を引き摺りだそうとか言わないと思う。


 仮に別の人で、面倒だったら雲隠れすれば良い。


「じゃ、交渉成立ですね。ちなみに、学園長とグレイに関してはもう『異能』を持っていません。同じ世界の人間にのみ、相手を『倒した』と判定されると、『異能』が吸収される事になります。軽率に言いふらすのは憚られるのですが、二人の『異能』は俺が回収しました。」

「で、では、君は魔王軍に入れる資格を手に入れたと......?」

「そうではありません。二つとも改造して、魔法の強化パーツにしました。」

「それがなんなのかは分からないが、安心して良いのか?」

「ええ、俺にとって、魔王軍はたまに現れる経験値ボーナスみたいなモノです。先の男も、本体ではないため、特に手を出さなかっただけなので。」


 なんとなくドン引きしている様子の男と、その仲間たちに、適当にポーションをぶちまけ、そのままキクスを背負って歩き出す。


 ま、足に掛かる量を調節したため、歩けるようになるには時間が掛かるだろうし、問題無いだろう。

何より、意識があったのはあの男だけで、カエサルを含めた仲間達は、全員キクスに気絶させられていた。

 仲間を放っておく男じゃなければ、あの惨状を放置することはないだろう。

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