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 つけてくる連中に心当たりは無い。

強いて言うなら、ギルドで殴ったガキくらいだ。


が、コイツらは明らかに複数人。それも、10人以上の大所帯だ。

 あのガキに友達がいるとは思えないので、それ以外の可能性を考える。


学園からの追手か?

 しかし、住所の確認なんて行ってないし、家の事が話題になった記憶は無い。

 希粧水や自作布を配った際に、出所からある程度の場所が漏れた可能性はあるが、Sクラスの連中が俺を売ると思えないのは、俺の甘い考えか?


「君。」


 ちょうど街を出て、目視ではよく見えなくなった辺りで、声を掛けられる。

しかし、キクスが臨戦態勢に入ろうとしたのを見て、そいつを無視して宥めることにした。


「落ち着け~。ほら、段々落ち着いて来ただろ~?」

「お、んぬ。ふぁぁ」


 間延びした声に眠気を誘われたキクスは、そのまま体をぐてっと、気だるそうにして、俺にもたれかかってきた。


「えっと、ノアくんだよね?」

「どちら様ですか?」


 その人物。

というよりも、恐らく冒険者らしき男は、俺の名前を確認する様に尋ねると、返事に対して表情を正した。


「オレはAランク冒険者のカエサル。君が魔王軍の男と話しているのを目撃したから、少し話を聞きたくて声を掛けたんだ。」


 その顔には見覚えが無い。

有名な冒険者の情報は、俺が強くなる上でたいして必要が無かったため、収集はしていないのだ。

【冒険者博士】なんて称号があれば別なのだが、聞くところによると別に無いらしいし。


「君は、カナメという男と話していただろう?アイツは魔王軍という組織の一員で、各地で目撃されている。まだ一般には知らされていない情報を言うのなら、彼らは世界征服を目論む悪の組織なんだ。既に複数の場所で人が襲われている。」


 ペラペラ喋る口だが、随分と軽いな。

風船を唇に付けでもしないと、そこまで簡単に喋れないぞ。


「それで、そんな彼と話していた君は、もしかしたら勧誘されたのではないかと考えた。だから、君に直接聞いて、どんな理由や、どんな共通点があって仲間を集めているのかを聞こうと思ったんだ。」


 情報伝達の不足か?

それとも、そんなことすら調査できないのか?

 

 ヤツが俺に勧誘してきたのは、既に3年前の出来事。

その際にコイツが話しかけなかったということは、その時にはまだ存在が確認されていなかったのだろう。

 それは分かる。

 だが、アイツらのメンバーを特定できるくらいの情報がありながら、勧誘の条件を把握してないって、あり得るのか?


「あまり不審がられるのも困るなぁ。そうだ。サインをあげようか?皆Sランクの方が好きだけど、Aランクだって凄いんだぜ。」


 いや、なんだろ。

今の一言で、全ての警戒心が霧散した。

 これがコイツの魔法か?


「おい、流石に情報を漏らし過ぎだろう。ただ単に人見知りなのかもしれないし、あまり矢継ぎ早に話すのは止めろ。」


 まさかの援護射撃。

仲間と思しき男が、ペラペラ男(カエサル)に忠告した。


 んん、コイツの方がまだマトモそうだな。


「アイツの情報を開示したら、魔王軍と戦うのか?」

「おっ......そうだな。まず話し合いをして、どうしても駄目なら戦うことになる。」

「なら無理だな。アイツらを一介の冒険者が倒せるとは思えない。」


 俺の言葉に、ムッとしたペラペラ男(カエサル)は、拗ねた子供の様に反論しようとして、もう一人の男に止められた。


「それはどういう意味だろうか?魔王軍はたしかに脅威だが、我々もAランク。ドラゴンも討伐した事のある、それなりに強いと自負している。」

「それじゃ駄目だ。魔王軍との戦いは、多分ただの物量では意味が無い。例え、ドラゴン1000体を相手に戦える相手でも、場合によっては呆気無く倒される。」

「言うじゃないか。その根拠を教えてほしい。」

「なら俺と闘え!!」


 ビクッと驚いた俺と男達を無視して、キクスが全身に魔力を纏う。

まさか、砂漠で身に付けたステータスを試すつもりか?

 

「じゃあ、そういう事にしよう。誰か一人でも、キクスに勝てたときには、俺の知る情報を全て明かす。どうだ?」

「ふむ、君が相手なら加減を余儀なくされたが、彼女なら問題無さそうだ。」


 まだまだ子供の俺は、相応にナメられるが、確かにキクスと俺の力量は、それくらいの差がある。

今はあの手この手であやしているキクスだが、コイツが暴れたら、俺も瞬殺される。


 実は、先程から『鑑定』で一人ずつステータスを覗いてはいるのだが、コイツら、俺のステータスよりも相当強い。

 何より、持っている武器がかなり強力だ。


 欲しい。


「じゃあ誰からだ!!」

「オレから行こう!!」


 ペラペラ男(カエサル)が前に出る。

大声のキャッチボールは、最早スポーツ選手同士のドッジボールへと様変わり、明らかに会話とは呼べない代物だ。


「シャァアアアア!!」

「セリャアアアア!!」


 キクスの足刀と、ペラ男(カエサル)の持つ大剣が交差し、空気の圧迫と爆発を繰り返す。

しかしまあ、大雑把な攻撃と、長い溜めを必要とする大剣で、ああも細々とした流れるような攻撃が出来る。

 闘い方と性格は似ないらしいな。


「随分と素晴らしい体術だが、師は誰だね!」

「知らん!強いて言うならノアだ!」


 おう、そこで俺を指名するな?

年下(ノア)年上(キクス)(見た目)に師事してるとか、滅茶苦茶も良い所だからな?


もうカエサルをペラ男と言えないくらいに、キクスのポンコツが証明されてしまった。

 そう言えば、コイツ知力のステータスだけ異様に低かったな。


「貰い!」

「あげない!」


 突き出した足に大剣を振り下ろそうとするも、その前にキクスの全身が、まるでスライムの様に柔軟に捻じれた。


「分裂幼体!」


 大剣によって斬られるまえに、足先を分離させたキクスは、そのままバックステップで回避、残された足は、自分の意思を持つ様に、カエサルの脇腹にブッ刺さる。


「ごふっ!」

「まずは一人目!次はどいつだ!!」

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