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 ギルマスと楽しい会話を続けていた俺は、ふとカウンターでドヤッていた少年について思い出す。


「あの小さな少年。どうやら冒険者になりたいらしいのですが、なぜここに来ているのです?」

「ああ、あの子か。我々も困っている。この街では、冒険者ギルドよりも商業ギルドの方が盛況で、買い取りの関係から冒険者もここに訪れる。そこを目撃したらしく、ここを冒険者ギルドだと勘違いしているらしい。」

「では、その誤解を解けば。」

「何度か言ってみたが、何故か我々に対して『大丈夫だから!オレ強いから!』とか『ふっ、実力も測れない弱者が、オレに指図するんじゃねぇ』とか言って、話を聞かない。何ならその生意気な口調から、最近では相手にする者もいない。」


 うわぁ。黒歴史製造機かよ。

俺もあんま関わらないようにしたいけど、どうせここ出る時鉢合わせるだろうしなぁ。


 勘違いの方向性的に、明らかに転生者っぽいけど、アレはゴミ(チーター)よりも、馬鹿(低民度)に近い感じ。

 顔にできたニキビの様に、触れたくないタイプだ。


「一回ボコったら諦めますかね?」

「それはやった事がある。ウチの警備に相手してもらって、顔が二倍になるくらいまでやったのに、次の日には懲りずに来ていた。」

「うわぁ。」


 評価し難い。

根性があると言えばいいのか、馬鹿と罵れば良いのか分からない。


「まあ、だから放置しているのは分かりました。ギルマス、お元気で。」

「あ、ああ。できればもっと遊びに来てくれていいんだぞ。」

「気が向いたら来ます。」


 多分、これから年単位で来ないかもだけど。

納品運搬用ホムンクルス作るか。


◇◆◇


「あっお前!オレと決闘しろ!」

「いいぞ」

「ふっ、オレの強さに恐れ―――へっ?」

「決闘だろ?ほら、キクス。」

「応!」


 キクスが全身の筋肉をバンプアップさせながら、拳をパキパキと鳴らす。


「お、オレは女を殴る趣味は」

「喧しい!」


 頭をブン殴って、そのまま顔から地面に落ちる。

多分ちょっとへこんでるな。


 こういう台詞が空回ってるのも恥ずかしいな。


ちょっと鳥肌立って来た。


「当て身」

「へぶっ」


 とりあえずトドメの一撃を入れたが、チート能力は入って来なかった。

となると、こいつは転生者ではない?

 マジで?マジの一桁でこのレベルの中二病を?


 レベルの高いガキだな。


 とりあえず、一回釘を刺して置いたので、これで収まらなかったら、もう時間に任せるしかない。


という事で、街の店を適当に見ながら、実家への帰路に着く事にしたのだ。


 いやあ、しかし、この一連の、ほんの些細な出来事が、十年近く後、あそこまで大きな事になるとは思って無かったわ。


◇◆◇


 出店を見て回っていると、いくつか目新しい物があって、適当に買ってみていた。

思えば、他の転生者について知ったのはこの街道で、変な男に声を掛けられてからだったな。

 

 あの男は、まだまだ弱かった当時の俺の魔力ですら、抵抗できなかったのだが、近接タイプだったのか、それとも戦闘に向いていないチートだったのか、今では分からない。


 それこそ、アイツがまだこの街で露店をやっていない限り......


「あ」

「あ」


 目が合った。

見覚えのある顔なのだが、え、えぇ


「まだここで転生者探ししてんの?」

「君がこの街に来なくなったと聞いたから、大丈夫かなって。」

「まあ、一回帰省しに来ただけだから。」

「もう襲わない?」

「襲わない襲わない。」


 まあ、場合によるけど。


「そういえば、ちょっと前に都の学園の学園長と、グレイっていう二人の転生者を倒して、チート奪い取ったけど、あそこ二人は魔王軍なのか?」

「え?うーん。いや、魔王軍じゃないよ。二人は魔王軍に属さないタイプの転生者だったみたい。君と同じだと思うけど。」

「見た感じ、アイツらはお前らと同じ雰囲気だったぞ。グレイなんて孫の丸パクリだったし。」

「えっ!?孫!?マジでやってるやついたんだ。え、スマホとかいなかった?僕も探してるけど、見ないんだよね。」

「いなかったけど、学園長はダンブ○ドアだったぞ。たぶんアレも意識してたな。」

「かー。見たい!」

「二人とももう死んでるから無理だがな。」

「そうか。そりゃ残念だ。」


 地味に話が通じているのがムカつくのだが、それ以上に、こういった話をするのは楽しい。

こいつも、岩盤小僧集団(ダイヤキッズ)の一員である事を除けば、まあ良いヤツなのだろう。


「僕は全国各地に分身を配置して勧誘を行ってるんだ。そういうチートで『コピーシステム』っていうんだ。自分をコピーしてるけど、自我の崩壊とか、アイデンティティの喪失とかは無いよ。」

「便利だな。ちなみに、俺も【無】属性魔法で『分身』って魔法が使える。チート能力に使われてたポイントで、少し複数の魔法行使が上手くなる様にしてみたら、『分身』に響いた。」


 雑談を繰り広げながら、魔王軍について、少し知りたくなった俺は、それとなく話を振った。


「魔王軍って、具体的に何をする所なんだ?」

「転生者と共に世界征服かな。」

「理由を聞こう。」

「この世界は、控えめに言って低レベル過ぎる。チート能力があれば、僕みたいな割と弱い能力でも簡単に倒せる魔物が、この世界にとっては脅威と言う。それなら、この世界を支配して、せめて万人が簡単に魔物を狩れる。延いてはもっと楽しい世界にしたい。」


 うーん。

言いたいことは良く分かったのだが、多分それを考えているのは少数だろう。

 仮に、世界を良くしたいと言うのなら、俺の様に知識を広めたり、強い者を作ったり育てたり、やり方はいくらでもある。

 それをポンと世界征服に飛んでしまうのは、怠慢としか言いようが無い。


「僕は分身という弱いチートで、本体が倒されない限り無限に生成可能で奪取不可な能力だから、こうやって勧誘に回ってるだけだけど、他の魔王軍はあり得ないくらい強いよ。多分、今の君じゃ闘う事もできない。」

「敵対するつもりは無いが、見つけたら片っ端から倒すつもりではある。チートを構成しているポイントは、使い方次第でかなり有用な様だからな。」

「君は無能力だと報告はあったけど、それでも強くなれると思っているの?」

「当り前だ。無能力とはつまり才能が無い。が、才能の有無程度で辞めるほど、俺の追求は安くないぞ。」

「チート能力無しに、チート能力に抗うなんて無理だと思うけど。まあ、陰ながら応援しておくよ。」

「ああ、お前は俺の為に、魔王軍(養分)メンバー(栄養素)を集めてくれれば良い。」


 悪い笑みを浮かべ、そのまま離れて行く。

良い話も聞けたし、気分は良い。


 後は、俺について来る連中をどうにかすれば、万事解決だ。

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