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 楽しい砂漠での旅を終え、俺達は帝国に戻って来ていた。

理由としては、久々の里帰りと、ギルドに顔を出す為だ。


「おっノアちゃん久しぶり!隣の姉ちゃんは彼女さんかい!」

「違うよおっちゃん。俺の仲間さ!」


「まあノアちゃん!少し見ない間に大きくなったね!」

「半年も会って無かったら大きくなってるって!」


 街行く知り合いと挨拶をかわしながら、順調にギルドへの道を歩く。

その道中。

 というよりも、ギルドの入口から中を見た時の光景なんだが、


「なんで駄目なんだよ!ギルドに入りたいんだ!オレ強いから、頼むよ!」


 俺と同年代くらいの子供が、カウンターに向かって、ギルドへの加入を頼みこんでいた。

見たところ、同年代の平均よりは高いし、属性も三種に固有が一つ。

 が、【幼児】を持っている所を見ると10歳以下だし、特に強力な【称号】や【加護】を持っているわけじゃない。


 少年の顔に悲壮感が浮かんでいるのなら、手を貸しても良かったが、なんとなく、子供が駄々を捏ねているようにしか見えなかった。

 何故だろうか。

 うーん。

その意味があるのか分からないマントがあるからだろうか?

 それとも、子供がチャンバラで使う様な、玩具の剣を持っているからだろうか。

はたまた、懇願している少年が、めちゃくちゃ痛い決めポーズを取っているからだろうか。


 更には、ここが商業ギルドなのを知らずに、冒険者のコスプレをしているからだろうか!!


「あっ、ギルマス呼んでもらえます?」

「ノアちゃん!はいっ、すぐ呼んできますね!」

「なっ!?」


 恐らく、自分がどれだけ頼みこんでも靡かなかった受付嬢が、一言で奥に行ってしまった事に驚いているのだろう。


 少年は、少しの間ポカンとしていて、俺とカウンターの奥を交互に見る。


「なっ、えっ、ず、ズルい!ズルいぞ!お前!さては貴族だな!」

「どういうことよ......」


 笑いを含みながら困惑していると、奥からギルマスが出てくる。

久々に見たその姿は、相も変わらず艶やかで、八歳には刺激が強い。

 最近は体も成長し続けているため、身体のいろんな所がむずむずする。


「久しぶりだな!会いたかったぞ!」

「久しぶり。在庫はまだありますか?補充に来ました。」

「まだ二年分は残ってるぞ?それに、学校の方はどうなった?もう休みか?」


 ああ、そういえば、ギルマスや両親は俺が退学になったことを知らないのか。

ハクが帰省するのもまだまだ先だろうし、確かに知らなくてもおかしくは無い。

 むしろ知っていたら驚くところだ。


「学校は退学になったので。とりあえずその後、少し旅をして、最近一段落着いたから帰省する事にしましたよ。」

「へー、退が――退学!?えっ!?まだ入学して半年くらいだぞ?初等部で退学者なんて出る訳無いのに!」

「それは初耳、ですが確かに退学になりました。コレ証明書。それから病院でバイトしたり、西の砂漠で遊んだりして、楽しんできました。」

「うっ、頭が痛くなってきた。それで、帰省ついでにこちらに寄ったということだな?ま、まあ、嬉しいが、それなら最初にこちらに帰って来て欲しかった。」


 ギルマスに手招きされ、奥の部屋に入る。

思えば、数年前までは奥の部屋に入るのを拒む者ばかりだったらしいが、先の受付嬢は何の躊躇も無く入っていったな。

 良い変化だ。


「少し約束事があって、そちらを優先しましたが。ポーションですが、希粧水を3年分。癒善草系を5年分、自作布を1年分。翼油が2年分。これがリストです。」

「ああ、預かろう。」

「はい。」


 何度か物をやりとりし、話を進めていると、キクスが暇そうに貧乏揺すりをし始めた。


「思ったんだが、そちらの女性は誰だ?」

「こちらホムンクルスのキクス。キマイラです。」

「よろしく。キクスだ。」

「ふむ。ホムンクルスか。なら、まあ、問題無いだろう。」


 何かを呟いたのだが、俺の耳には届かなかった。

いや、別に俺が難聴ということではない。モゴモゴと喋るから聞きとれないだけだ。


「ところで、商業ギルドに入らないか?本当は入学前に提案しようと思ったが、色々あってな。今ならわりと簡単に入れると思うぞ。」

「ん?」

「ちなみに、直接の商売になるから、仲介費用が掛からなくて済む。今の収入が1.2倍になると考えたら丁度いいかもしれないな。」

「......そうですか。」


 思えば、ただ両親に知られるのを避ける為に、ギルマスに仲介をしてもらっていただけで、今ではこの商売も親の公認なので、特に意味は無い。

 何なら、利益が多くなる分、自分で売買したほうが得だとは思う。


「まあ、その内ということで、今の所お金に困ってませんし、楽しめる事に熱中してるので、問題ありません。」

「......そうか。まあ、無理強いはしない。気が向いたら言ってくれ。」


 こうして、久々に会った俺達は、他愛無い話に花を咲かせた。

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